3日目 苦渋なる選択

馬車に揺られながら移動している最中・・・メルトは何やらニヤニヤしており、指で何かを数えながら計算をしていた。

その計算はきっとろくでもない事を考えていると感じ、俺はメルトに声をかけずに馬車の窓からだんだん近づいていくアップダウン王国を見つめていた―――――


「さぁ、2人ともこちらへ―――――」

「今さらいいわよ~私たち、王の間には行き慣れてるから。」

「俺はともかくお前一体・・・・どれだけ迷惑をかけてんだよ―――――」

隊長の案内を無視して俺たちは王の間の前にやって来ると・・・ノックをせずに入ろうとするメルトにグリグリをかまし、俺はやさしくノックをすると奥から王の声が聞こえ、メルトを引きずりながら入ると・・・・


「ハルトと黒い髪のオカルト女よ・・・よぅ参った・・・

此度の魔王軍の撃滅は見事であった、隊長からの伝令スズメで内容は知っておる・・・

その、ハルトとやらが兵を蹴散らし・・・最後の戦いの際には空気を読まずにオカルト女が敵将を燃やしたとか・・・・」

「そうなんですよ・・・このバカが敵将を倒すもんだから交渉もイベントもフラグも何も立たなかったんですよね・・・・ホントマジ、勘弁してほしいです。」

「だ、だってあの場面はそういうシチュだったでしょ!!!

私が最後にを搔っ攫うっていう・・・で、オウサマ!!報酬は?――――――――――イダダ!!イダイカラヤメテ!!」

俺はやはりと思い、メルトの頭をグリグリして再びメルトを再起不能にすると・・・王はコホンと咳をして家来を呼びつけて何かを伝え、紙を手渡してきた。


「そなたらに報酬を与えよう・・・・さぁ、中を開けてみるがよい。」

「ま、まさか・・・紙って事は・・・小切手よね!?

私に寄越しなさいよハルト~~アイダダダダ!!!!」

「お前は地面に頭を付けて黙ってろ!!!話がややこしくなる!!

えっと・・・それでは中を拝見・・・・え?

――――――ナニコレ???古民家の権利書??」

俺は異世界文字が読めないと思っていたが・・・全てひらがなに見え、読めていた。

そして、その内容は・・・王が昔使っていた用の今では誰も使っていない古民家の権利を俺に委ねると言うモノだった。


「噂ではお主たちは居住地がないと聞いての・・・ワシが昔使っていた古民家をハルトにやろうと考えたのじゃ・・・・

何故ならそこのオカルト女は夜な夜な不気味に歩き回るわ・・・酒癖が悪い等でワシの方にも苦情が来ておってのぉ・・・その面倒を見るものが現れたのじゃ・・・家の1つや2つの提供はしてやろうと思ってのぉ・・・そして、これがワシからの生活資金じゃが・・・くれぐれもそこのオカルト女には見せんようにな?

は知っておると思うが――――――」

「王様・・・粋な計らい誠に感謝と言いたいのですが何点か修正を・・・・

1つ目、俺はここに来たばかりでこのオカルト女と一緒にしないでください。

2つ目、癖が悪いのは全てにおいてです。

3つ目、俺はこのオカルト女の面倒は見ません。

4つ目、俺とオカルト女が1つ屋根の下で暮らすくらいなら死んだ方がマシだァァ!!!」

お金を受け取りながら俺の心からの叫びを聞いて心に響いたのか・・・メルトは涙を流しながら俺の足元にすがるようにぶら下がり・・・・


「ごめんなさい!!ごめんなさい!!!何でも言う事を聞くからお金と暖かい寝床を独り占めしないでぇ~~~せめてお金くらいちょうだいよ!!!!

私お腹が空いて死んじゃいそうなの!!!」

「あ~~もう、邪魔だ邪魔だ!!!放しやがれ!!!

お前と一緒に行動してやっとわかったんだよ!!!お前と一緒だと!!!野垂れ死ぬか不名誉な死で終わりだって言う事をな!!!!」

「ハルト・・・その頭の腐ったオカルト女の面倒を見ないと言うのであればその資金も暖かな暮らしも無かったことになるが・・・それでも良いのかのぉ???」

王がそう言うと・・・メルトも王側にすたすたと歩いて抗議に加わり―――――


「そうよそうよ!!!私をのけ者にして1人だけいい思いをするなんて絶対にさせてやらないんだから!!!私と一緒にダメな所までダメになるか・・・一緒に楽しい共同生活か2つに1つよ!!!」

「途中から意味が分からぬが・・・・ハルトよ、賢いお主なら・・・どちらが良い結果なのかわかるはずじゃ・・・・さぁどちらを選ぶのじゃ??」

「あぁもう・・・わかった、そこの頭のゆるゆるなオカルト女を連れてけばいいんだろ??コレで文句なしか?」

俺は仕方なく王に答えると・・・王から古民家のカギをもらい、お金をもって古民家に移動した。


「へぇ~王だけあって小さいけどいい家じゃない。

私は二階も~らったぁ!!」

「ハイハイ、好きな所に行ってくれ・・・でも、これでにやるべき事が何個か終わったな・・・・居住の確保と、ある程度の食費・・・で、これからどうしたもんか・・・・メルト~お~い・・・メルト~~・・・・おい!!!バカメルト!!!」

俺は2階にいるメルトと名札をかけた部屋に突入すると・・・メルトはスヤスヤとホコリを被ったベッドで熟睡していた・・・・

大きな鼻風船を作りながらだらしなく寝ているメルトを起こそうと思ったが・・・今日くらいはいいかと部屋から出ようとした時・・・


「ヴェヘヘ・・・ハルトってば案外、フニャフニャなのね・・・・」

「おい起きろ!!!オカルトクソ女!!!」

俺は転がっていた大きな本をメルトの腹に叩きつけると・・・メルトは息苦しそうに悶えてから怒鳴り始めた。


「ちょっと何すんのよ!?バカハルト!!!こんな乱暴な使い魔は聞いたことないわよ!!!私の命令を一切聞かないし!!!ほんとどうなってるのよ!!!」

「知らんわ!!!お前が勝手に呼び出しといて何をピーピー小鳥のように言ってやがる!!!命令の1つでもしたいのならまずは色気でも出してみろよ!!!この色気ナシが!!!!イダダダ・・・こんの!!!」

俺は涙目になりながらのメルトに耳を引っ張られ・・・お返しにメルトの口を全開に引っ張ると・・・メルトはすぐに降参して謝り始め、すっかり外は暗くなっており・・・飯はどうするのかメルトに聞くと、メルトはフフンと言いながらおススメの場所を教えると言いながら酒場にやってきた。


「おい、バカメルト・・・ここって酒場じゃねぇか!!!

こんなところにメシ何て・・・何だ?このいい匂いは?」

「ふっふっふ・・・ハルトの世界ではこう言わないの??

美味いモノは、酒場にアリッて!!!さぁ、ここは最高に美味しい酒とゴハンでいっぱいよ!!!

みんなぁ~こんばんわ~~~まずはシュゴビーから行ってみよ!!!

ハルトは何にすんの???」

メルトに手を引っ張られて中に入ると・・・そこは魔法で明るく照らされた室内で、そこらにいる人は今日一緒に魔王の軍勢に対峙していた人たちで・・・メルトはこの酒場では少し有名らしく・・・名前が通っていた。

そして、俺はメルトと同じものとメルトに頼むと・・・ぴちぴちの女の子が樽ジョッキに並々と注がれた謎の飲料をドンとメルトと2つ分置き・・・メルトが勢いよく「カンパーーイ!!!」と叫ぶと周りにいる人も大きく乾杯と叫び返してお祭り騒ぎになっていた。


「ンクンクンクン~~~~ぷはぁ!!!!あぁ~~~久々のシュゴビーは最高ね!!

ハルトは飲まないの??

そこの子、あとね・・・グランツバードのから揚げとバクレツビーンズの塩ゆで2盛りちょうだいな。」

「はい、ただいまぁ~~~」

「お前・・・ここで飲み食いして金を飛ばしたんだろ・・・・どんだけバカなんだよ・・・少しは考えて飲み食いしろ―――――――ウンま!!!!

ンゴンゴンゴンンンン・・・・ぷはぁ!!!そこの君、コレもう一杯!!!」

「ハァーーーイ、ちょっと待ってね!!!あぁ~いそがしいそがし。」

「へへ~あんちゃん、良い飲みっぷりだなぁ!!!ガッハッハッハ!!!」

「ようあんた名前は?変な格好してるが、異国から来たのか?

だが、そんな格好は今まで見たこともねぇがな!!!」

勢いよく俺たちが飲んでいると・・・メルトの飲み仲間が席まで挨拶をしにやって来ると・・・俺は酔いが回ったのか色々と説明と話をしている間にそいつたちと仲良くなり、話が盛り上がったところで・・・メルトの顔が膨らみ、ヤバいと思い俺はメルトを連れて席を外して橋にメルトをぶら下げると・・・間一髪でメルトの口からの大爆発を酒場で披露せずに済み、俺は羽目を外しすぎないよう・・・支払いを済ませて、メルトを引きずりながら家に帰ってきた。


「うぅ~~ヒック・・・まらのみたんないわよぉ~~~ヒック・・・」

「お前、飲み過ぎなんだよ・・・ってか、さっさと自分の部屋に戻って寝ろよ!!!明日は明日でやることあんだからな!!!」

メルトにそう言うと・・・メルトはフラフラと壁や柱にぶつかりながら部屋に戻り・・・俺も、部屋で眠りについた―――――――――――――――


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