8.「さて、《《害のなさそうな人たち》》は移動してもらったし、《《害のありそうな人》》のところに行きましょうか。」
翌朝、朝食をとっていると、警邏隊隊長のモンドが現れた。
「ここがジン殿の家で相違ないかな?」
「はい、ジン様の家で間違いありませんが、どちら様でしょうか?」
カレンが違和感なく、誰も止めることなく、普通に応対に出てしまった。
「おぉ、ツカサ殿ではないか。おはよう。ん? ジン殿の家から出てきたということは、もしや奥方であったのか。これ気づかず失礼をした。」
「奥方だなんて・・・。」
両頬に手を当て腰をくねくねと動かし嬉し恥ずかしを表現するカレン。
ツカサがフォローに出る。
「何やってるのよ、もう。応対に出たんなら、ちゃんとしてよ。あらモンドさん、おはよう。今日は何か?」
「あ、あ? ツカサ殿・・・が二人?」
「これは・・・妹よ、うん、妹。で、何か?」
「あ、あぁ、妹殿か・・・。はっ、そうだった。殿が、街を守るのに協力してくれたのと、未だ何者かはわかっておらぬが、その拠点をつぶしてくれたことについて、お礼を言いたいとおっしゃっておってな。ツカサ殿、ジン殿、セリカ殿を食事に招待したいとのことなのだ。ちと急なのだが、今夜、と言われておってな。どうだろうか?」
「ふーん・・・。ちょっと待ってて、皆いるから聞いてくるわ。」
まだくねくねしているカレンを連れて中に戻ると、招待の話について相談する。
「丁度調べようと思っていたところだし、悪い話じゃないと思うわ。幸い時間もあるし、カレンたちに先に少し調べてもらえるし。」
「私もいいと思いますー。」
「俺も特にないな。」
『では私たちは調査を始めます。』
「お願いね。ただ・・・。」
「ただ? 何か気になることがあるんですかー?」
「うーん、モンスターになり得る三人分の被験者を持ち出しているわ。あれが領主の館にあるとなるとそれに襲われる可能性があるのと、研究施設を領主の館に作るとは思えないけどないとは言い切れないから、三体以上のモンスターに襲われる可能性がある、のかと思って。」
「すいませんツカサさん、あの逃げていくヤツらを追っていれば・・・。」
「たら、れば、は言ってもしかたないから、それはいいわ。私もあの時それをよしとしたわけだし。」
「ま、行った先で攻撃されるようなことがあれば、斬って捨てるということでいいじゃねぇか。」
「それもそうね。じゃ、今夜行くということで良いわね? モンドさんにそう伝えるわ。」
ツカサはモンドのところに戻り、了解の旨を伝えた。
「それは良かった。肩の荷がおりました。夕刻にまた迎えに来ようと思う。ではまた。」
モンドはそういうと去っていった。
しばらく時間をおいてカレンが出て行った。他の四人と合流し領主の館の調査に向かったのだ。
昼頃になって調査に行ったカレンから連絡があった。
(『ツカサ様、昨日見た物と思われる荷車を、領主の館の敷地内で発見しました。』)
(当たりの様ね。ありがとう。継続して調査を。終わったら夜まで控えていて。)
(『畏まりました。』)
カレンからの連絡をセリカとジンに伝える。
「やっぱりですかー。」
「わかりやすくていいじゃねぇか。」
「でも分かり易すぎると思わない? そう思わせるための罠かも・・・。」
「誰が誰を罠にかけるんだ? セリカやカレンが見張っていたのがバレていたのならともかく・・・、バレてないよな?」
「と、思いますがー、わかりません!」
「カカカ、そうか。じゃぁしょうがねぇな。なる様にしかならねぇわな。」
夕方まで悠々と過ごしモンドが警邏隊隊員を一名連れて迎えにやってきた。
「お殿様もご招待なんだけど、傭兵なんてやっているから良い服なんて持ってなくて。まずいかしら?」
「殿はそのようなことを気になさる方ではない。いつもの恰好で問題はなかろうよ。では参ろう。」
ツカサ、セリカ、ジンがそろい出発と言うところでモンドが隊員に領主の館に先行し伝えるようにと指示を出し、一人で走らせた。この後食事になるため、その前触れと考えられた。
道々ツカサらはモンドとたわいない話をしていたがそろそろ領主の館が見える頃になり、ツカサとセリカは見えてきたものについて心の中で会話を始めることとなった。
(セリカ、貴女ねぇ・・・。一体この世界をどうしたかったのよ。はぁ・・・。)
(いやー、すごいですねー。歴史書でしか観たことないですー。投入したデータのなかに建築系の資料もあったんでしょうねー。このエリアの亜人の設定に組み込んだだけなのに、実際にそれを作るなんてやりますねー。)
それほど高くはないため、街のどこからでも見えるというほどではなかったが、近くまで来たことで”ソレ”がよく見えるようになってきた。
十メートルほどの深さ・幅の濠があり水が張られている。その壁面は石垣で構成されていて、すぐ内は厚そうな土壁でできた塀が敷地をぐるりと囲んでいる。ところどころ櫓が建てられており、衛兵が常駐しているようで顔をのぞかせている。塀の内側は土塁が設けられており、正面の門からまっすぐに進めず遠回りをさせられるように通路が構成されている。それを通り過ぎると儀式や迎賓のための三層の天守と、領主とその家族や使用人などが生活する
外からは濠・塀・天守が見えているだけだが、他にはない存在感を放っていた。
「えーと、領主・・・お殿様だっけ? 街には外塀と内塀があるわよね? この厳重な領主の館の守りは誰から守っているのかしら?」
ツカサは少し引き気味にモンドに質問した。
「決まっているだろう、謀反人などが出た場合に、殿をお守りするのがこの城だ!」
「あ、やっぱり城なんだ。」
「街の壁はモンスターなどの外敵から守るため、この城は街の内に現れた敵から守るためのものだ。」
「謀反されちゃうんだ。」
「馬鹿を言ってはいかん。殿は善政を行われており、住民に慕われておる。謀反などあり得ん!」
「じゃぁいらないじゃない・・・。」
「む、昔は外壁・内壁がなかったから、城自体で守る必要があったのだ! ・・・と聞いている。」
モンドは最後はほんのり自信がない感じで答えた。
領主の館の濠にそって少し進むと、内側とをつなぐ唯一の道があった。そこには小さな詰め所と衛兵が三名立っており、館に進もうとするものをチェックしていた。モンドは彼らに声をかけると、先に話が通っていたのか
「いつもならここで面倒なやり取りが行われるのだがな、殿のご招待であることと先に走らせた前触れのお陰で楽に通れるというわけだ。」
「必要なことなんでしょ? 面倒なんて言ってて良いの?」
「私の顔は間違いなく知っているはずなのだが、毎回城に行く理由を話し許可を待たなくてはならん。これを面倒と言わずして何と言う。」
正面入り口となる門のところにもいた衛兵に、モンドは軽く手を上げると門をくぐりツカサたちを先導し進んでいく。通路に沿って何回か曲がり歩くうちに、漸く天守がある場所にまで到着した。天守の脇には
(この敷地内に荷車があったということは、此処の造りから衛兵たちは間違いなくそれを見ているわね。それを通したということはやはり領主が・・・?)
「えー脱がないといけないんですかー?」
入り口でセリカがごねていた。ツカサ、セリカにとって自室以外で靴を脱ぐという習慣はあまりなかった。最近は拠点としているジンの家では玄関で脱いでこそいたるが、それも自室の延長線上の感覚であった。
「この街の流儀なんだから合わせなきゃダメよ。」
「ブーツって脱いだり履いたりがめんどくさいんですー。トホホ・・・。」
「それは私もよ。あきらめましょう。」
中に入り、モンドと隊員の案内で板張りの通路を進み、畳の部屋に通されるとセリカが喜びだした。
「おー時代劇で偉い人と会う部屋だー。」
一段高くなったところに領主が座ると思われる座布団が用意されており、下段にツカサたちが座ることになるとモンドが教え、モンドと隊員はツカサたちの横に座ることになった。しかしセリカは部屋を見てテンションが上がったのか、領主が来ていないことをいいことに領主の席に座って殿様ごっこをし始めた。
「こらセリカ、止めなさい。領主が来たら無礼打ちだーって斬られるわよ。」
「おぉ、詳しいじゃないですか!? でもお城では刃傷沙汰は禁止なんですー。」
ツカサとセリカがお互いに微妙な知識を披露しているが、本来ならそもそもジンが大太刀を帯刀したままこの部屋まで来ることなどあり得ず、雰囲気程度のモノと考えられた。
暫くすると、領主が座る一段高い側のふすまがあき、領主が現れた。
「おっ?」
「あっ?」
丁度領主の席から立ち上がろうとしていたセリカが領主と目が合い、お互いに固まってしまった。
「貴様、何故父上の座におるのか!? 無礼であろう!!!」
領主の後ろに着いてきた男性が声を上げる。
「わあぁ、ごめんなさいですー。」
慌ててツカサのところに戻るセリカ。
「良い良い。
領主が男をなだめる。
自席に座った領主は初老あたりの年齢の割とがっしりした身体つきの男性であり、軽く微笑みながらツカサたちを見ている。領主の斜め後ろ辺りに座ったセリカをしかりつけた壮年の男性は、ツカサたちをにらみつけていた。領主を父と呼んだことから、息子と思われた。
セリカは小さな声でツカサに問いかけた。
(ワラベってなんでしたっけ?)
(たしか成人前の子供ってことよ。)
「ひどっ!? これでも二十歳過ぎてるのに!!!」
セリカは外見が実年齢よりも幼いこともありよく若く見られることはあったが、子供呼ばわりされたためについ声を上げてしまった。
「静かにせんか!」
領主の息子にまた叱られるセリカ。
「ほう、そなた成人であったか。これは失礼した。・・・ふむ、詫びも込めて、わしの
「!? 父上!!!」
「ソバメ?」
「(クスッ)愛人にならないかって言ってるのよ。良かったわね、玉の輿よ?」
「えー・・・、私はそんなに安くはありませーん!」
セリカは白けた顔でそんなことを言うが、調子に乗って口を滑らす。
「愛人なんてお断りですー。妻ならともかく・・・。」
「ほうほう、わかった。では正式に妻ということで話をすすめようか。」
「良かったわねー。」
「良かったじゃねぇか。」
「これはめでたい!」
「めでたいですな!」
それを領主が受け、ツカサ、ジン、モンド、隊員が乗る。セリカは場の流れを読み取ると即座に
「すいません、調子に乗りました。妻にも愛人にもなる気はありません。ごめんなさい。」
手をついて謝った。
「「「「「わっはっはっ・・・。」」」」」
「アハハ・・・。」
「・・・フン!」
領主の息子以外は笑いに包まれ、場の空気が柔らかいものとなった。
「さて、私は
「殿、左様でございます。順にマテリアライザーのツカサ殿、剣士のセリカ殿、同じく剣士のジン殿です。」
「只今ご紹介にあずかりましたツカサと申します。」「セリカでーす。」「ジンだ。」
「今日はよく来てくれた。心から礼を言わせてくれ。街を守ってくれてありがとう。」
「いえ、私たちは手伝っただけですし、一番ジンが活躍したんです。それは彼に。」
「俺は腕を振るえる場所があったから参戦したまでさ。それにコイツがいたからな。」
とジンはツカサを見ながら言うと、
「ジン・・・。」
場所を忘れて二人で見つめあう。
「ツカサさんもジンさんも、そう言うことは家でやってください!」
「ほう、二人はそう言う仲か。となるとセリカ殿は浮くではないか。やはりセリカ殿は我が奥方に・・・。」
「それまだ続くの!?」
という冗談も交えながら和やかに会見も進んだ。
黙っていたチカラがモンドに問う。
「学区のはずれの無人の館に不審者の拠点があり、そこで街で暴れたモンスターが製造されていたと聞いた。我が領軍が関わっていたというのは真なのか?」
「若様、残念ですが、部隊長のなれの果てのモンスターの亡骸を保持しております。部隊長だけだったのか、領軍として絡んでいるのかは現在調査中です。」
「そうか・・・。無人の館で父上の預かりとなっていても直接見ているわけではない。部隊長なら自由にはできるのかもしれんが・・・。そこから逃げ出した者らの足取りはつかめてないのか?」
「ツカサ殿らの話で荷車が出て行ったらしいのですが、調査は進めているのですが、運悪く見た者がほとんど見つかっておりません。」
「馬鹿な、街中で荷車などそうあるものでもあるまい。見た者がおらぬなど・・・。」
(本当に知らないのか、しらばっくれてるのか・・・。お殿様か若様か、両方か・・・。)
ツカサは荷車が見つかったこともあり領主を疑っていたが、ここにきて息子と言う存在が出てきたこともあり、どちらかか、もしくは両方を疑っていた。
「今日は街を救ってくれたことへのお礼の場として用意したものだ。今は良い、一旦忘れよ。」
静まり返った空気のなか、部屋の外から救いの声がかかった。
「お食事の準備が整いました。」
と言う女中の声がかかり、移動することなった。
「やっぱり正座してお膳で食べるんですかね?」
「それは・・・やっぱりそうじゃないの?」
「正座かー。途中で足がしびれちゃって、苦手なんですよねー。」
「ほうほう、やはり和の形式の食事は苦手か。外の客を迎えるとそう言われることが多くてな、安心したまえ。西洋の食卓と言うやつで用意しておる。」
「やったー!」
セリカは喜色満面で足取りまで軽くなり、食事会場へ向かった。
「この生の魚が乗ってるのおいしーですー。」
「刺身がご飯の上に乗ってるのね。初めて食べるわ。」
「それは握り寿司と言うものだ。外では生の魚はあまり食べない聞く。こうして食べて旨いというか二口目を食べないの両極端なのだが、お主らの嗜好にはあったようだな。」
と、和やかな雰囲気のなか食事をとっていたのだが、突然何かが崩れるような大きな音が響き渡った。
「何事だ!」
「確認してきます!」
クランドが女中に問いかけるが女中はおろおろするばかり。一緒に食事に参加していたチカラは立ち上がると確認のために廊下の衛兵のところに向かう。
しばらくすると食事に参加していなかったモンドがチカラと共に現れ
「天守脇の倉庫の一つが崩れたようです。部下に確認に向かわせました。」
と報告してきた。
「しかしなぜ倉庫が・・・?」
とチカラがつぶやく。
ツカサは
「セリカ、ジン。」
とだけ話しかけると、席を立ち現場に向かうため、入り口に移動する。
靴を履き衛兵が移動している方向に合わせて移動すると、半壊した倉庫が見えた。天守の土台となっている石垣に付随する形で四角い石組みの建物があり、それを倉庫にしていたと思われるが、それが半分ほど崩れていた。
衛兵たちが崩れた倉庫を囲んでおり、ツカサたちはそれを遠目に見ていたが、その時崩れた石が動いた。
ガラガラ・・・
石を押しのけ巨大な腕が現れる。
『GUGYAAAAHHH!!!』
腕から頭、身体、そして足とモンスターが姿を現したのだった。
「なぜモンスターが城の中に・・・。」
「衛兵、モンスターが動き回れぬように囲め! 一部は城内の非戦闘員を避難させろ。」
近くに来ていたチカラが驚きの声を上げる。その隣にいたモンドが指示を飛ばす。
指示を発したモンドがツカサたちに向き、
「このようなことになって申し訳ないが、協力をお願いしたい。」
と頭を下げる。
「はいはいー、とりあえずあのモンスターの注意を引きますねー。」
「とっとと片付けるか。」
セリカとジンがモンスターに向かっていく。ツカサは目線をチカラに向け
(息子の方は関係ない・・・?)
「わかったわ。」
少し遅れて移動していった。
モンスターは未だ崩れた石垣の中にいるため衛兵も攻めあぐんでいたが、ジンもセリカも同様だった。
「セリカ、モンスターがそこだとぶった斬れん。誘導できるか?」
「やってみますー。」
ジンがセリカに言うと、相変わらずどこから出したのかわからない棒手裏剣を数本手に持ち、モンスターに投擲する。顔に命中するがモンスターの硬い皮膚に阻まれダメージは与えられない。が、モンスターの気には触ったようで腕を振りセリカのほうへ移動し始めた。
モンスターが散乱している石の中から出るとジンが斬りつける。
「ぬん!」
「ちっ、浅いか!」
モンスターがセリカのほうへ向かうときに、散乱する石を避けるために身体を予想外の方向へ動かしたため、肩口をある程度の深さまで切り裂いただけとなっていた。
「まずは動けなくしましょう。」
ツカサも参戦すると
「マテリアライゼーション!」
「アセンブリー」
「コンバージョン」
「
モンスターの足にマテリアライズを放つ。大したダメージはいっていないようだが、絶叫を上げバランスを崩し倒れるモンスター。衛兵たちはチャンスとばかり殺到し、モンスターを攻撃し始めた。
囲んでいる衛兵たちで十分処理できると踏んだツカサたちは、倒れたモンスターの逆襲がないか、それ以外の脅威はないかを用心深く見守っていたが、
『GUOOOOOHHH!!!』
『GAAAAAHHH!!!』
別の場所から大きな声と共に人の頭ほどもある石が衛兵たちに複数飛んだ。固まっていた衛兵たちは、気づけなかった者はそのまま、気づけた者ですら避ける間もなく、身体のあちらこちらで受け止めることとなり、大半が即死、生を得た者ですら戦えない程の怪我を負わされてしまった。
石の飛んできた方、先ほど崩れた倉庫のさらに奥、崩れた石を力ずくでどかしながらから二体のモンスターが現れた。
「城の中にモンスターが三体もだと!? 一体どうなっているんだ・・・。」
チカラが茫然とつぶやく。
「あちゃぁー出てきちゃいましたね、やっぱり三体かー。」
「さて、どうするよ?」
(あのモンスターに同族を助けるという考えがあるかはわからないけど、お互いに協力されたら厄介ね。)
倒れたモンスターは衛兵の攻撃でダメージを負ってはいたが、身動きが取れなくなるほどではなかったらしく、身を起そうとしている。囲んでいた衛兵の生き残った者の内、自力で動けるものは自ら、動けない者は周りの者が引きずって戦闘圏内から離脱しようとしているところだった。最初のモンスターは崩れ散乱した石から出たところで倒れたため、出てこようとしている追加二体とさほど離れているわけではなかった。
ツカサはそのため数を減らすことを優先したのだ。
「まずは数を減らしましょう。ジン、まずは手負いのアレを。セリカ、二体の注意を逸らして。」
「わかった。」
「わっかりましたー。」
最初のモンスターは身を起こし切り、救助されている衛兵に目を向けたところだったが、そこにジンが駆けていきモンスターの眼前で大太刀を正眼に構えた。
『GUWAAAAHHH!!!』
モンスターはジンに身体を向け腕を振り上げ攻撃しようとするが
「さっきは中途半端になっちまってすまなかったな。ちゃんと倒してやるよ。」
と言うと、
「
その言葉と共に自分の間合いまで飛び込み、大太刀をモンスターの頭から振り下ろした。ジンは振り下ろした大太刀を払い血振りをすると目線を追加二体に向けた。一体目のモンスターは左右で身体をずらしながら後ろに倒れこんでいった。
セリカは追加二体のモンスターの視線がジンとは違う方向に向くように、別の角度から二体のモンスターに近づくと、やはりどこから出したのかわからない棒手裏剣を数本手に持ち、両方の頭に向け放った。命中するもこちらもやはりダメージは与えられなかったが、意識を誘導することには成功した。
「あんまり大きいのだとお城に被害が出ちゃうし、でも放っておくと城どころか街にまで出かねないから・・・、領主の息子さん? お城に被害が出るかもだけど、良い?」
ツカサはチカラに話しかける。
「アレを街に出すわけにはいかん。城の中だけで済むのなら問題ない。やってくれ。」
チカラもすぐに何のことかわかったらしく、了解の意を示した。
「では。」
ツカサは、パンッと手を合わせると
「マテリアライゼーション!」
「アセンブリー」
「コンバージョン」
稲光が行きかう両手を徐々に広げ、マテリアライズを放つ。
「ジン、セリカ、離れて!
稲妻が意志を持ったように二体のモンスターに襲い掛かる。
『GAAAAHHH!!!』
『GYAAAAHHH!!!』
稲妻に焼かれたモンスターは絶叫を上げ硬直、身体中からプスプスと煙を出しながら崩れ落ちた。幸い稲妻は他には影響を出さなかったようで被害はなかった。
「セリカ、荷物が運び出されたときに一緒にいた人物が倉庫やその周辺に居ないか確認して頂戴。」
「はいですー。」
「!! どういうことだ!?」
セリカへの指示を聞いたチカラがツカサに詰め寄る。
「そのままよ。このお城、領主の館の敷地内に荷車を見つけたの。で、モンスターが現れた。となると、その時一緒にいた二人の白衣の人物もいる可能性があると言うわけ。」
「馬鹿な・・・。」
驚きの顔で固まるチカラ。
「荷車は・・・」
(カレン、どこにあるの?)
(『正面の門から進み、はじめのT字路で右に曲がった通路の先の物置の影です。』)
(ありがと。)
「正門からここまでの通路の、脇道の物置にあるわ。」
「いつの間にそんなところを?」
チカラの隣にいるモンドが疑問を挟む。
(カレンはモンドさんに見られちゃってるし、この際仕方ないか。)
「もちろん私が見つけたわけじゃないわ。モンドさんは会ってるわね、妹がチェックしたの。」
「妹殿が!? 来ているのか? しかしどうやって城に・・・。」
「そういう調査が得意なの。この街流で言うと忍者、的な。カレン?」
すると空気を読んだカレンが忍者スタイルで現れる。
『お姉様、お呼びになりました?』
「お二人を荷車のところに案内してあげて。」
『わかりました。こちらです。』
「「あ、あぁ・・・。」」
ツカサとカレンを相互に見ながらも、カレンについていくチカラとモンド。
「さて、害のなさそうな人たちは移動してもらったし、害のありそうな人のところに行きましょうか。」
とジンに声をかけ、
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