3.ツカサ・コノエ

 そんな中、テラフォーミング艦隊マザーシップの量子コンピューターカレンの管理者、近衛このえ つかさがメンテナンスの担当として目覚めた。作業は確認程度ですぐ終わったため、暫くの間現状確認として亜人世界に降り立つことにした。人間の身体のまま亜人世界に降り立つことはカレンが断固として認めなかったため、本体は眠りにつき、自身の記憶を生成した亜人にコピーし、亜人として上陸した。記憶を成立させる本体と私の成り代わりである亜人が同時に起きていなければ、記憶をコピーしても矛盾は成立しないことがわかっている。過去の他星系探索メンバーが暇つぶしで自身を利用して実地体験をした結果なのである。

 上陸する際、カレンに文明の利器の持ち込みを止められたため、殆ど何も持ち込んでいない。唯一インターフェースが身体に埋め込まれているだけであった。代わりにマテリアライズの知識と経験がコピーされており、マテリアライズが使用できるようになっていた。


 上陸後ツカサがまず驚いたのは、亜人に複数人種が存在していたこと。テラフォーミング艦隊として連れてきていたのはヒューマン型だけだったが、ファンタジーな物語の中のごとく、ドワーフやエルフ、獣人がいたのだ。

 カレンに確認したが、初期の持ち回りで目覚めたメンバーが亜人生成時にパラメータをいじって作った、ということだった。微々たる種族特性と外見および生活の特徴が設定されただけだったので放置したとのこと。

 ちなみにドワーフは背が低く頑健な種族で、実際に鍛冶を営んでいることが多い。エルフは背はヒューマン型と変わらないが耳がとがっているという特徴を持ち、弓が得意で主に森の中で生活をしているらしい。獣人はヒューマンより身体能力に秀でており、頭頂部付近に獣の耳を持つ。

 いずれ人類が移住する際には彼らをどうするか議論が持ち上がること請け合い、と考えざるを得ない。


 またモンスターと呼ばれる害獣たちが存在しており、亜人たちの生存圏とモンスターで威を争っていた。

 もちろんテラフォーミングでモンスターなど作ってはいない。先達の管理者もだ。奪われた艦で亜人生成のための機構を利用し、作成、放ったものと考えられている。目的は不明である。


 交代で目覚める管理者だけでなくテラフォーミング艦隊生き残りの人類全てが思っていることだが、艦を奪ったテロリストたちを憎んでいた。ツカサも同様であったが、管理者たちからの引継ぎのための申し送り事項にも、見つかったという話はなかった。どこかに隠れているのか・・・。

 ツカサの地上上陸はそれを探す意味でもあった。

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