2.定期報告

 宇宙歴千五百六十四年六月十八日。テラフォーミング艦隊マザーシップ 量子コンピューターカレンより定期報告。


 セレスティナ星系、惑星フォレスに対するテラフォーミングは五百十一年を経過し、人類の移住は十分に可能であるとここに報告いたします。


 しかしながらテラフォーミング開始二年後に発生した、テラフォーミング艦隊全艦艇への同時クラック行為により、恒星間航行可能な複数の艦艇が暴走、亜空間が本星系全域を巻き込み安定してしまい、本来の宇宙空間とは切り離されているという状況であります。

 クラックの結果半数近くの艦を失い、残ったテラフォーミング艦隊は五十五隻となっておりますが、現在まで、本星系の各惑星に存在する資材を活用することで、無事稼働はできております。


 現状といたしましては、テラフォーミングに関しては、亜人を利用し”人類が移住できること”を目的に開始しておりましたが、”人類が移住できる住環境を保持し続けること”を目的に変更し、いずれ人類が移住することになった際に害となることの無い様、文明レベルを下げて亜人をそこに住まわせております。

 人類が移住後混乱が少なくなるよう、時間、距離、重量、容量といった単位は地球と同じものを使わせております。また居住空間、生活環境、自然環境の保全を目的として、上下水道を与え亜人に生活させております。

 艦隊乗組員に関しては、半数近くが間の消失などにより死亡・行方不明となっておりますが、残存艦艇の人類は本星系が閉じられた以降、コールドスリープにて安全に保護を継続しております。ほとんどの艦の活動は機械人形オートマータにより過不足なく実施できており、一部、各艦艇の制御コンピューターおよびマザーシップ量子コンピューターの管理のため、管理者に交代で目覚めていただきメンテを行っていただいております。


 閉じられた本星系内からの脱出方法は、検討・調査・試行を繰り返しておりますが、未だ見つかっておりません。内部に残された人類のために、外部からのアクセスを並行していただけることを切に望みます。


 以上、定期報告を終了します。



 量子コンピューターカレンは思う。

 日々欠くことなくこの報告を、取り得る全ての通信手段で、本星である地球に向け行っているのだが、届いているのかと・・・。

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