File:8作戦前夜
数時間が経ち、すっかり日は落ちてしまった。
俺たちは目的地である前線までやってきたわけだが、臨時の難民キャンプのようだ。
テントがいくつも並び、国境の印である壁がそのまま利用されている。
即席で作られたであろう木製の見張り台が一定間隔で設置されており、一つ一つに明かりが灯されている。
人数は多く、数えきれない。
これだけの人間がドンパチしてくれればこちらとしてもありがたい。
「お二人さん、待たせてる人がいるからついてきてくれ」
アオイはまだ寝足りないのかあくびをしながらフラフラ進む。
ぎこちないので少し肩を貸して一緒に歩く。
レボーナフの後ろについて他のとはひとまわり大きいテントの中に入る。
中はテントの上に吊るされたランタンに照らせれており、図体のデカい軍帽を被った男と薄い茶褐色の肌が目立つ女性の二人がいた。
男は左胸に勲章をぶら下げていることからここでの上司であろうことがわかる。
女性に関してはなんとも。
「チームDT、レボーナフ、サクラ、ハットリ、以下三人到着しました」
「おお、ご苦労だったなレフ」
男とレボーナフは握手を交わすとこちらに視線を向ける。
「私は今回の全面式を行うザックトルテ少佐だ。君たちの噂は聞いてるぞ」
「どのような噂でございますか、少佐?」
失礼のないように言葉に気をつけながら尋ねる。
「メディックとハッカーの両方が可能な女性と侍のような男だとな。もちろん、銃を扱うのが下手なのもだ」
「「うっ」」
俺とアオイは痛いところを突かれる。
「サクラ君は
「「返す言葉もございません……」」
訓練生時代の事だ。
俺は銃の分解や組み立てに関しては問題なかったのだが、弾を命中させることはできなかった。
アオイはアンラッキーなのか扱った銃の殆ど弾詰まりでおじゃんになった。
知らぬ間に
俺たちは銃に関しては呪われている。
だから俺は銃を使わないようにしているし、アオイはそもそも戦わない職に就いた。
「あのぉ、そちらの方は?」
アオイは辛くなったのか話の方向を女性に変えた。
「彼女か? 彼女は君たちの仲間だよ」
少佐がそう言うと女性は一歩前に出る。
「アマンダです。階級は一等兵、よろしくお願いします」
一人一人握手を求め、順に交わす。
「これで最後の部隊のチームDTが揃ったな」
レボーナフが緊張した面持ちで言う。
そこにアオイが質問を入れる。
「はいはい、チームDTってなんですか?」
「DTは簡単に言うと45番目の部隊ってことだ」
レボーナフは事前に聞かされていたのかそこそこ詳しそうだ。
「最後ということは……もしかして45個分しか部隊ないんですか?」
アオイは恐る恐る聞く。
少佐とレボーナフは頷く。
「す、少なすぎますよぉ! 相手は何万といるかもしれないんですよ!?」
俺も同じだ。
ひとつの部隊が五人だとしたらたった225、多くても二倍の450くらいだろう。
そんな少数で敵うだろうか。
「しかし、人口は前の戦争でかなり減ってしまった。五十年ほど前には70億近かった人口も今は20億人ほどにまで減ってしまった。それを考えれば希望制でよくここまで集まったものだ」
いや、少なくても千人くらいくるだろ。
というか試験とかやってふるいにかけたのが駄目だったんだろ。
「数こそは少ないが、優秀な人材であることは間違いない」
いや、そんなスパルタみたいなことされても困る。
戦いは数なんだから。
「さて、話を変えて君たちの任務についてだ」
少佐は近くにあった椅子に腰かける。
「既に知っていると思うが、我々の目的はマザーコンピューターの破壊だ。途中の機人をチームGWからBOと協力しながら撃破し、目的地のダレスまで行く。機人は手強く、指揮官がいるようだ。それの破壊がダレスに行くまでの君たちの主な仕事だ」
「その指揮官は普通の機人との違いはあるんでしょうか?」
俺の質問を聞き、少佐は懐から二枚の写真を出し、それを手渡される。
それぞれ、通常の機人より三倍ほど大きいものと少し刺々しい見た目の機人が映っていた。
「このような明らかに他のモノとは違うタイプが見つかっている。恐らく、これが指揮官だろう。姿からわかるように簡単に撃破はできんだろう。心してかかってくれ」
「了解!」
「うむ。出発は明日だ。今日は移動で疲れてしまったろう、指定されたテントで休んでくれ」
それぞれお礼を言ってから、テントを後にした。
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