File7:景色に価値はない
レボーナフと共に近くのカーショップにやってきた。
中は他の建物より原型が保たれてて綺麗だが、比較的なだけで荒廃している。
走れそうな車を数台発見した。
どれも型や必要な燃料が違う。
「さて、どれがいいかねぇ……」
レボーナフはじっくりと細部まで眺め、品定めする。
俺たちは少し離れた位置から見ている。
「やはり、フランエネルギー車が一番だろ」
「ふらんえねるぎぃーしゃ? なにそれ?」
アオイは全く知らない素振りだが、それもそのはずだ。
「こいつはアメリカやその近隣国でのみ販売、実用されてるものだ。お前は見るの初めてか?」
「うん。簡単でいいから説明して」
「あい承った」
俺はコホンッと一度咳をし、説明する。
「フランエネルギー車とは、文字通り第二の核、フランを利用した自動車だ。こいつの特徴はなんといっても燃料補給をしなくてもいいことだ」
「えっ、画期的じゃん!」
「ああ。だが、事故を起こすとほとんどの確率で死ぬのでそこは穴だな」
「核の力、恐るべし……」
まあ、事故を起こさなきゃいいだけの話だ。
今の時代じゃさほど問題でもない。
「よし、コイツでいいか」
どうやら、決め終わったらしい。
選ばれたのは言わずもがな。
「よし、お前ら乗れぃ!」
たまたまオープンカーだったので、レボーナフはそのまま扉を飛び越えてダイレクトに乗り込む。
車のキーとなる声認証を終わらせ、エンジンが動く。
俺たちも乗り込む。
レボーナフはズボンのポケット付近にあるホルスターから小型のボールを取り出し、店内から外の様子が見れる大きなガラスにそれを投げつける。
ボールはガラスにはまり、爆発を起こす。
一辺2mほどの穴ができ、直接外に出られるようになった。
「舌噛むなよ!」
レボーナフはアクセルを全開に踏み、車は加速させる。
穴を通り抜け、道路を走る。
かなり速いせいか、あっという間に先ほどのカーショップが小さくなる。
「次は前線基地に行くんですよね?」
「ああ。しばらくは景色を……と言いたいが、見てて楽しむようなものでもないな」
周りは荒廃し、緑はほとんどない。
廃墟趣味なら喜びそうだが、生憎俺やアオイにその気はない。
つまらなく、時間の流れを忘れそうな、虚無な物でしかない。
しばらくだんまりが続く。
耐えきれなくなったのか、アオイは水中から顔を出したように口を開く。
「そういえば、レボーナフさんは車の免許持ってるんですね」
「いんや? 俺は免許なんざ持ってないぞ?」
「えっ!? 無免許運転はまずいですよ!」
俺は今にも身を乗り出しそうなアオイを制す。
「いいんだよ。自動運転だから」
「え? でもさっきはハンドル握ってアクセル踏んで……」
「ああ、あれはフリだよ。目の前ハンドルがあれば握るし、アクセルがあれば踏むだろ?」
「はぁ……」
アオイはいまいちわかっていなさそうだが、俺にはよくわかる。
自動運転は昔から開発されていたが、あまりの進化に何もする必要性がなくなったのだ。
なので、免許すら必要なくなった。
この時代に免許を持って走ってるのはレーサーぐらいだ。
しかし、俺とレボーナフの感覚は似ているが、アオイとは結構ち違いがある。
都会と田舎の差なのだろうか。
こればっかりは国の政策なので仕方ない。
「とりあえず、着くとアラームが鳴るから、アオイ君は寝てるといい」
「そうですか? 寝すぎる気がします……」
まあ、電車でも寝たしな。
昼寝のしすぎは良くないって言うし。
「まあ、自由にしててくれ」
「俺は周囲を警戒しときますかね」
銃を手に取り、弾数の確認をする。
こういうこまめな事がのちのち響いてきたりするので銃は扱いが難しい。
今回は持ってきたけど、機人には通用しないから邪魔だな。
でも、捨てるわけにはいかない。
念のため、小さいポーチに入れておくことに。
「前線基地まであとどれくらいで着く?」
「うーん……ざっと2時間くらい?」
ということは、到着は夜になるだろうな。
俺は周りを警戒する。
目に映ったのは日が落ちていくけ景色だけだった。
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