File4:積極的で
しばらくして、アオイが部屋に戻ってきた。
それと同時に俺たちの任務に関する説明が始まった。
「さて、俺たちがやるべきミッションはズバリ、
「「根元?」」
俺とアオイは首を傾げる。
レボーナフは続ける。
「通常の合格者には機人とドンパチしてもらう。そして、少なくなっているうちに大本となるコンピューターを叩くのさ」
「つまり、壮大な囮作戦ってことか?」
「その通り! 当時プロジェクトに関わっていた生き残りの博士曰く、機人はまだ完全に独立しきってないそうだ。マザーコンピュータと呼ばれる装置があり、それが在って初めて動く、これを破壊してしまえば全て止まるらしい」
「そんなでかい機械があったんだね……びっくり」
人間で言う辺りの脳死、植物状態にするってことか。
機人は硬い、いちいち火器類で破壊する必要がなくなるだけでもかなりありがたい。
「んで、肝心のマザーコンピューターの場所は?」
「マザーコンピュータはデカく、移動ができない。研究時と同じ場所ならテキサス州北部のダラスになる。そこの南部にある機人研究所にある」
ダラス、あの時父さんがいた場所か。
「俺たちは基本ステルス、静かに行動し、首を切る。明日にもここを出てメキシコの前線へ向かう。今日は早めに休んで備えてくれ。なにか質問は?」
俺とライアは互いの顔を見合い、戻して首を振る。
「よろしい、解散」
◇ ◇
俺たちは話しながら帰路につく。
「明日でここを出なきゃいけないなんて、急だね」
「善は急げって言うしな」
「それっておじさんの言葉?」
「日本の言葉らしい」
他愛もない会話ができるのも、もしかしたらこれが最後かもしれない。
戦地に行くということは、もちろん死と背中を合わせることだ。
もう遺書も書いて心構えしていたつもりだったが、本当につもりだったようだ。
自らの意思で日常を捨てる、並の人間ならできない。
「ハットリく~ん♪」
「なんだ、うお!?」
呼ばれたので振り返れば頬にアオイの指が突き刺さる。
昔
俺は指をそっと退ける。
「お前なぁ……」
「え~、不満そうなんだけど。難しい顔してたから和らげてあげたのに」
「……さんきゅ」
「あっ、これってデレだよね? キュンてきた!? キュンてきた!?」
「おいおい、落ち着け!」
俺はエサに興味津々な子犬のようなアオイを手で制し、落ち着かせる。
ついでに頭を撫でてやると喜ぶが、今は外なのでやめておく。
「キュンというやつはよくわからんが、たぶんきてないぞ」
「ざんね~ん」
言葉の割には嬉しそうだ。
相変わらずよくわからん。
不意にポケットに入れていた携帯端末が揺れる。
手に取り、確認するとおじさんからのメールだ。
『お昼がまだで、お腹が空いています。至急、サクラちゃんを連れて帰宅してください』
昼くらい自分で何とかしてくれと言いたいが、台所が荒れ地になるので言えない。
俺はアオイに急いで帰るよう言って、二人とも早歩きで移動した。
◇ ◇
それからというもの、時間の流れは早く、もう夜の八時。
俺は風呂上り終え、自室で机のライトだけをつけて日記を書く。
ロシアに来てから毎日欠かさず書いている。
書き始めた当初は内容が酷いが、今はマシになってる。
これもアオイとおじさんのおかげだ。
今日の分を書き終えると後ろのドアがノックされる。
「ハットリ君、今大丈夫?」
アオイだったので、ああ、とだけ言って扉を開ける。
「ごめんね、こんな時間に」
既に入浴し終え、パジャマに着替えたアオイ。
身長とパジャマのせいか子供にしか見えない。
まだ髪を乾かしていないのでより
「気にすんな。なんか用か?」
「髪、乾かしてくれる?」
本日二回目だが、自分で何とかしてくれと言いたいが、あっさり聞き受けた。
アオイはあまりにもうまくいったので少し驚く。
「ベットに座ってくれ」
「うん」
アオイをベットに座らせ、近くの引き出しから小型のドライヤーを取り出す。
コンセントに刺してから、銀色の髪を丁寧に撫で、整えつつ乾かしてやる。
時折頼まれることがあったので慣れてしまった。
こうしてみると、父親にでもなった気分だ。
「かゆいところはありませんか?」
「それって美容院の人とかが聞くやつでしょ」
珍しくアオイにつっこまれ、二人とも笑う。
同時に嬉しいとも感じる。
「あ、流れ星」
「マジ?」
アオイが窓の外を指さすので俺も見る。
綺麗な流れ星が一つ、また一つと流れていく。
「願い事しなきゃ」
アオイは手を握ってブツブツ祈る。
近くだというのに小さくてよく聞こえない。
「なにお願いしたんだ?」
「な~いしょ♪」
「なんだそりゃ」
髪を乾かし、整え終える。
「レ~ン君♪」
「お前、それは……まあいっか」
今日くらい良いかと思い、俺はドライヤーを引き出しにしまう。
「許可する代わりに願い事を教えろ」
「もう叶ったからいいよ」
イジワルのつもりだったが、そうでもなかった。
少し顔が赤くなるのを感じる。
風呂上がりのせいではない。
「……そうか」
「それじゃ、そろそろ寝るね」
「ああ、お休み」
「お休み~」
アオイは部屋を出て、俺はドアの鍵を閉める。
すぐさまベットに入ったが、眠るのに時間がかかった。
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