第29話 百千と司祭

「百千さんは、いつ頃お気づきになられましたか?」

「さぁ?忘れました」


そよそよと、温かくなり始めた風が吹く中で、百千と司祭が対談していた。


「でも、なんとか納まるところに納まったみたいで、一安心してます。ただ…」


彼女はふと青い空を見上げる。司祭もお茶を啜ったあと、見上げた


「心配なのが、マナをなくしたこの世界が、いつごろ“あの封印”を解いてしまうのか…でしょうか」

「やはり、あなたもそこが気になっていましたか」


私も、じつは気になって調べたんです。そう言いながら司祭は彼女へ一つの、透明な液体の入った小瓶と、一通の手紙を渡した。


「そして行き着いたのが、彼でした。彼も気が付いてましたよ。だから手紙をあなたへ届けてくれるように、私に頼んできたのです」


手紙を読み終えた百千は、驚きと、焦りの混じった表情をしていて


「司祭さま…これは」

「ああ。嫌な予感は当たってしまったとしか言いようがない」


ましてや、まさか“あいつら”が動いていようとは…


「して、やられたよ」

「この手紙をくれた彼は無事なんでしょうか?」

「彼ならもうすでに、避難したよ。私が訪ねてくるのを待っていただけだったと言っていた。手紙を君に渡すころには、仲間を集めにすでに外国へ渡っているだろうとも言っていたよ」


ハァ…と溜息を零したのは、一体誰だったのか。


「とにかく」


誰も見てないことを確認し、司祭は手をパン!と叩く。すると何もなかったハズの彼の横に、スタッと二足歩行の、可愛らしい恰好をした何かが現れた。


「ユリに彼への手紙を届けさせる。キミもそれくらいはできるだろ?」

「ええ。でも、この世界のマナを取り戻すのが先決でしょう?」

「それなんだが、それは千年ちゃんたちにまかせてみないかい?」

「ええ?この前すべてを終わらせた彼らに、また戦えっていうの?しかも彼らにはもうチート能力はないわ」


司祭はホホホと笑った


「なぁーに。時期に慣れてくれば、この世界の『隠されし秘宝』の存在にも気づく。そうすれば失われたチート能力の変わりに彼らの中に芽生えるはずだ」


我々と同じ、力が


「手始めに、この遊園地なんだが…どうも彼らの動きが確認できたらしい」

「あら、この遊園地って…たしか今度ちーちゃんが行くっていってたような」

「そうか。それは頼もしい。キミも行くんだろう?」

「そうねぇ…」


困ったように、百千は笑った


「こうなってしまったら、行くしかないわよねぇ?」


ウフフ。と彼女の笑う顔に、若干影が見えたのは…目の錯覚だと信じたい。

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