第30話 不穏な動き
「幸来、またせたゴメン」
「おそいっすよ!」
おしゃれに着こなした幸来と茶飲は、喫茶店にて待ち合わせをしていた
「で?どうだったっすか?兄貴と千年さんはデートするんすか??」
座った直後に待ちきれずに聞いてきた幸来へブイサインをしながらにへへと笑う茶飲。大成功だよ~んと言いながら、ケーキと紅茶を頼んだ
幸来はチョコパフェ
「マジすかマジすか!!あのヘタレの背中をよく押せたもんすよ~感心しますわ」
「ふふふ。二日間にわたって先輩と社長を観察&調べつくした俺の努力の成果さ!」
二人は実は甘党で。結構前から愚痴やら自慢やら情報交換やらで喫茶店やケーキ屋で待ち合わせては、食べ歩きをしていた。
「ここのチョコパフェ美味しいっすねぇ~思わず顔がにやけてしまうっすよぉ」
ほわほわした空気を晒す幸来を見ながら、自分のフルーツケーキを食べる
「このフルーツケーキもなかなかだよ…あーしゃーわせ」
「そんなに美味しいんっすか?」
「おいしいよー」
「一口くださいっす!」
「しょうがないなー」
一かけらをスプーンですくって、幸来へと差し出した
「はい。あげるよ?」
その顔は若干、いたずらっ子のような笑顔。ハハーン。からかうつもりかぁ…と彼の顔を見て、ニッコリと幸来は笑った。
「ありがとっす」
パクり。なんの躊躇もなく食べて、おいしー♡もぐもぐとしている彼女を見て、茶飲は少しあっけにとられていたが、クスリと笑った。
「おいし?」
「そりゃもう!」
「じゃあ、幸来のも一口ちょーだい」
「え、えー?」
少し頬が赤くはなるが、一口くれた人にあげないのは意地悪だと思った幸来は、しぶしぶ一口自分のパフェを茶飲にあげたのだった。
「ん、おーいし♪」
そんな彼らを周りの人は少し顔を赤くしながら見ていた。
「なぁ、おかしいだろ?あれであいつら付き合ってもいないんだぜ…?」
「いつもいつも、順序がおかしいんだよあいつらは。」
それを他のモブのように見ていたのは、昴と進。たまたま見かけたこの喫茶店で、たまたま会った
驚かせようとして機会をうかがっていたら、案の定キャッキャウフフしはじめて今にあたる。
「完全に俺たち空気だよな」
「いつもそうだったがな」
「まぁ、影は薄いって事は承知の上なんだけどさ」
「慣れって怖いよなー」
「モブや背景に馴染むなんて、メインキャラの名がなくぜ?!なぁ、そう思わないか進?!」
「思わないし、メインキャラってなんなのか皆目見当もつかん。それに目立つから声は控えめにな昴?」
相方の扱いに慣れてる様子の進は、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいた
「何お前?このデジタル社会にまーだ新聞なんか読んでるのか?おっくれってるー」
「ハイハイ。お前の相手は後でしてやるから、大人しく待ってろな。ほら、ケーキ奢ってやるから頼んで来い」
「…わかった」
そうして立ち上がって一切れケーキを選びに行こうとした昴が、ふと窓から外を見ると、なにかが空間を避けて移動しているような、妙な感覚がした。すぐさま進へと走り寄って事のありさまを説明。
二人はすぐに店を飛び出して探したが、何も見つからなかった。
「なんだったんだ、あの変な感覚は…?」
「まぁ、もういいじゃないか。きっと疲れてたんだって」
「疲れ…」
本当にそうなのだろうか?
そんな疑問が頭をグルグルするが、進にまたも店へと引きずられてしまい、結局ケーキやらプティングやら食べてから帰る事になった。
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