第23話 『解除』への道筋
自分を赦す。
一見、簡単そうでそうでもない。言うのはしごく簡単だ。だが本当にできるかどうかは自分にかかっている。
心の中に自分の嫌いな部分があって、それと向き合う事からはじまり、徐々に自分をわかってあげ、ありのままの自分を受け入れなければ、『解除』できない。
「思っていた以上の酷い呪縛をかけられていたんだな…」
千秋が疲れたようにそうポツリ呟く。
「そうなんだよねぇ~。私ってできそこないで、しかも持病持ちだから色々マイナスばっかで、どれと向き合えばいいかなんてわかんなかったんだけどさ」
しかし、千年は笑った
「社長とか、他の仲間とか、祭司さまとか…」
思い出すは、ゲームの事だと思って気にもしなかった、彼のメッセージ。あれらは全て、千年の心へと送られていた言葉だったのだ。アエノシロのゲームの話だと思ってまったく気にも留めてなかった
『汝の行いは間違ってはない。愚行でもない。すべては罪びとに罪を着せるための嘘であり、封じられた“力”と“記憶”を取り戻すためには、罪びとの枷を外すべし…“すべての始まりはすべての終わりからはじまる”』
司祭が付き添ってくれた、あの時。
『君は一体、なにが赦せなくてそんなに罪悪感を背負うんだい?』
『え?』
『そうだろう?考えてもみなさい。人が罪悪感と背徳感にみまわれるのは、それ相応の嫌悪や憎悪がないと』
司祭さまの懺悔の中、問われたその質問に、千年は最初答えられずにいて。それを見て導いてくれたのは司祭さまで。
『質問を変えようか』
いつものように優しく笑って
『君は何に困っているのかな?』
『私は───…』
懺悔したあとのパズルのピースが組みあがっていくような
『心が痛くて、頭にモヤがかかってて』
『そうじゃない。』
『え?』
『どうして心が痛いか、言ってごらん?』
『…ッ』
何かがやっと
『わた、しは…お母さんやみんなに迷惑ばっかりかけてて…生まれてこなかったほうが良かったんじゃないかって思った時もあった。ううん。今も心のどこかで…ッでも、でも!』
『わかっているよ』
『司祭、さま』
『本当は、自分を生んでくれたお母さんに感謝しているからこそ、そう思うこと自体が罪だって思ってしまったんだね』
コクリと頷く。声はもう震えていて涙声。
『自分が悪いってずっと思ってた。』
『うん』
『自分なんて死んでしまえばいいのにって思ってた。こんな役立たずで、誰にも望まれない私なんてって…でも』
『それじゃあ一生懸命君を育ててくれた君のお母さんに悪いと、ずっと呑み込んでいたんだね?』
『はいッ』
うーん。と静かに考えて、司祭さまは、まだ何かつっかえているモノがあるかい?と聞くと、千年はあります。と答えた。
『最初の質問がわからなかったんですが…今ならわかりました。私、自分が赦せなかったんです。』
『ほう。それは何に対して自分が赦せないのだね?』
『自分自身です。』
すべてにおいて、千年は自分が赦せなかった。それに気づいてさえいなかった。だからずっと苦しみ続けていた。
どうして苦しんでいるのかさえ、わからなかった。だが、先ほどの懺悔の中で、社長の言葉が鮮明に頭の中に浮かんできたのだ。
『司祭さま…『汝の行いは間違ってはない。愚行でもない。すべては罪びとに罪を着せるための嘘であり、封じられた“力”と“記憶”を取り戻すためには、罪びとの枷を外すべし。“すべての始まりはすべての終わりからはじまる”』とは一体何を指しているんでしょうか?』
その言葉を聞いて、司祭は、ほうほう。と言いながら髭を撫でる。
『それは一体誰が言ったんだい?』
『えと、社長からです』
『面白いね。社長くんはよく“わかっている”じゃないか…』
『あの、意味は?』
『まんまだよ?』
その言葉を聞いて首を傾げる千年を見て、フフフと笑った司祭
『わかりやすくすると『キミは間違ってないよ。君のやっていることは正しい。誰かが君に罪を擦り付けてるだけだよ。君の罪の意識が終わってから、やっと君の物語がはじまる。だから待ってる』かな。』
千年はキョトンとしてしまって。まさか社長はずっと慰めようとしていた?
『彼はまだなにか言ってなかったかい?』
『えっと、たしか『“罪の意識”をどうにかしないと、いつまでたっても“枷”になって、真実にいきつけない』もよくわかってなくって…あと』
“罪の意識”って必要だろうけど、時々いきすぎて人を盲目にしちゃうんだよなぁ…それでいっつも進化できずに立ち止まって、“罪の輪”をぐるぐる回って一人じゃ出られなくなるよ
『そうも、言われました』
すると司祭はクスクス笑う
『司祭さま?』
『ああ、ごめん。いや、なに。愛されてるなぁと思ってね』
『あ、あいsっ…?!?』
『つまり、彼はあまり気にしすぎないでほしかったんじゃないかな?人はね、罪の意識があれば次の一歩に踏み出せるが…気にしすぎるとそれに囚われてしまうんだ。君の場合、それが発生していて、社長くんはそれに気が付いていたんだね』
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