第22話 “はじまり”の双子
呆れにも似たような顔で、千秋が社長を、そして千年を見つめる。
「お前はわかってはいないだろうから、話をまとめようか。“はじまり”の双子は俺と千年だった。三つのアビリティを発動させたために世界が“壊れた”それを修復しようとお前は何度も俺の前に立ちはだかった。」
そこに、あの社長とかいう『天才バカ』が現れた。あいつは世界がループしていることを知った唯一の人間だった。
そして、双子の片割れがお前だという事にも気が付いたんだ。あいつはあいつのやり方でお前や世界を救おうとした。だがあいつは結果的に世界やお前を救うことはできなかった。
「あいつはお前を失った。そのショックとでもいうのか…あいつは驚くことに、誰も思いつかないようなことに気が付いた。」
俺が何度も異世界を旅してまわって、色んな世界のアビリティを会得していたことに気が付いたんだ。
「それもこれも、俺がやってた事はすべて、千年を世界の呪縛から解き放つためでもあったんだが。あいつは世界を壊してお前だけでも別の世界へ転生させようとしていた俺の計画を狂わせたあげく、俺から二つの力を奪っていった」
その二つの力が転生を促す力だと、千秋は言う。
「え?でも社長は…世界を守るためにやったんでしょ?」
「結果そうなったが、アイツの本心は千年、お前を生き返らせる事だったんだぞ」
まぁ、失敗して千年もの間、グルグル回る仕掛けになってしまい、あげくに世界から嫌われたお前が、よもや全世界からも拒絶されているなどとは、思いもよらなかったんだろうな。
「それ、それなんだけど…社長もそうだったし、あなたもそうだった…」
千年は、千秋を強く見つめた。
「あなたも、社長も…私を救おうとしてくれてるけれど」
一息吐いてから、意を決した顔で千年は、多分すべてを知る千秋へと疑問を投げかける。
「ねぇ、私はもうあなたへと届いて、救ったといったよね?その経緯って…」
千秋は、フッと息を吐くと「そうだな…」と呟くように言いながら空を仰ぎ見た
「丁度、こんな悪天候の日だった。お前が仲間たちとともに、また…魔王城へと俺を倒しに来た時だった」
少なくとも他のみんなは俺を倒すのが目的だった。世界最悪の力で色々な暴挙をしたんだ。恨まれていて当然。情けなど皆無だったハズ。
なのにお前は俺のところへ来た直後に、俺が流す『記憶の逆行』にも耐えながら俺を救いに来たといった。
今までのことを許すとも言った。世界に居場所がない俺に、居場所を与えると言った。
「優しい…言葉だった」
千秋の顔はその時のことを思い出して、とても嬉しそうな、恥ずかしそうな…そんな顔をしていた。しかし、すぐに苦し気に俯いた。
「だが…世界の理を守る番人は…それを許さなかった」
あいつら三人出てきて、千年に『
「それはある事をきっかけにしなければ永遠に解けることがない。」
その結果がこれだ。そう言いながら、今にも泣きそうな顔で千秋は必死に訴える。そして口を重々しく開いた。まるで、今までの感情や想いを吐き出すかのように。
「俺は無理やり転生されてからも探し回った。お前の『
グッと握りしめるその手が震える。
歯を食いしばってなんとか、これ以上泣かないようにしていた。
「俺が赦されているのに、なぜお前は赦されない?汚い事や罪のないモノの命を刈り取って来た俺が赦されたのに!なぜ、俺を赦したお前が罪人とならなければならなかった?!」
千秋の瞳から涙が、また、つー…っとこぼれる
「だから…当初の目的を遂行しようとしたんだ。なのに!」
バッと立ち上がり、千年の胸元を両拳で軽く叩く
「なぜお前が!救う対象のお前がいつも!俺の邪魔をするんだ?!」
(ああ、そうか…この子)
千年は、千秋の手をギュッと握った
「ッ!?離せ!」
「嫌」
「その手を離せと言っている!!」
「もう、離さない」
しかし今までにないくらい、千年の眼光は強く鋭く、そして綺麗に光っていた。
「わかったんだ。やっと…今までのモヤモヤが晴れた」
「わかった…?」
「そう」
そしてスゥ…と息を吸って、吐く。
「この世界に生まれてきて…良かったって思えた。だってね?力がない世界だったからこそ、“視えた”んだ」
そして、ギュッと千秋を抱きしめた。
「私にかけられた『呪縛』は、きっとね?」
『自分を赦すことができない呪縛』
そう言った瞬間に、彼女の周りに何通りもの種類と色んな色の魔方陣がブワリ現れて、空中や地面に浮かんでは消えてを繰り返す
「まさか…こんな簡単な事が…本当に?いや、でもこれらが現れたというのが何よりの証拠…」
驚く千秋。
それを見ながら、千年は続けた。
「一見、解くのが簡単そうに思えるけど、そうじゃない」
他、つまり他の誰もが赦しても、赦されても…その呪縛は解けない
「わたし自身が“理解”して、そして“自分を赦す”ことができなければ永遠に解くことができない。だって、自分を赦せるのは自分だけでしょ?」
「…!」
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