第4話 ヒーラーはヒーラーでも…?
その後、彼女を待ち受けていたのは、崩れ落ちてくるコンクリートの塊を一生懸命よけながら、そこから脱出しようとしている、十歳の二人の子供だった。
「こっちよ!」
声をかけて誘導し始めたが、やはり間に合わず。見かけソックリからして双子だとわかったその子供たちをコンクリートの下敷きにするまいと、駆けて彼らを庇い、ギュッと目を瞑った。
すると彼女はある事を思い出し、ハッとしたが───…
(若干、思い出すのが遅かったんだよなぁ…)
あともう少し、思い出すのが早ければ…“新しいアビリティ”で楽にこの状況を
回想終了した彼女はそんな事を思いながら、あの時突き飛ばして救った無傷な双子を目にしホッとするものの。
代わりに巨大なコンクリートの下敷きになってしまった己の身体半分はどうするか…と呑気にも怠そうに考えていた。
(こんな時…どんな“アビリティ”を使ってたっけか…)
ゴフッ…!と吐血するが、彼女はボ~っと、今は見える空を見た。
(あの日も…嵐だったっけ…それが途中で晴れて……こんなに綺麗な青空が見れて…)
自分が死んだあの日。誰か大切な事のために彼女は死んだんだと、思い出しはしたが…何故その日に死んだのか、なんのために死んだのか、理由もなにも思い出せない。
あの猫は覚えていたように思える事からして、思い出せないのは自分だけなのか?だったらどうして自分だけ…
そう考えていると、双子の一人がサラリと髪を撫でた。その幼い手から淡く光が輝き、彼女の吐血が止まった。
「
双子の女の子が、双子の男の子のほうを向きながら指示を出すと、男の子はニッコリ笑った。
「
「そうだった!てへ!」
私ってばうっかりさん☆なんて言いながら彼女が腕を伸ばし、手のひらをあけ放つ。
「“アルブム”」
愛がそう唱えると、優の身体が少しだけ宙に浮き、見たこともない白く輝く光の文字が彼を包み込む。
そして再び足が地面につくと、優はその華奢な小さい身体だとは思えないほどの腕力で、軽々とコンクリを持ち上げ、どこかへ投げ捨てていた。
「今度は僕と
「おばさんじゃねーし…あと動きたくても動けねーし…」
ポツリそう悪あがきで抵抗すれば、
「私たちの“アビリティ”はまだこの世界では出しにくくてさぁ?物凄く集中しないとまともに使えないんだよねぇ?だから気を散らすなって言ってんの。わかる?」
その幼い笑顔が怖い。
「ふぁ、ふぁい…」
「よし。じゃあはじめるね!」
双子が彼女を挟むようにして横に立ち、手を彼女へと伸ばす。薄い真っ白な光が微弱だが、少しづつ広がっていく。
「「“ルーメン”」」
フワリと、双子の桔梗色の髪が揺れる。千年の周りに光が集中し…血は少しずつ止まっていき、傷は深いモノから徐々に治っていく。
無残にも潰れていた部分も、痛々しく腫れあがっていた部分も徐々に消えていった。
「「ふいー…できたぁ……」」
「まさか…“ヒーラー”だったとは…」
あっちの世界でも希少価値だったヒーラーが……まさかこんなところで、こんな世界で転生して出会うとは。
「まさか出来るとは思ってなかったね
ニッコニコ元気に優へ語りかける
「そうだねー…いつもみたく失敗して相手ボカン!かと思ってたよね~
のほほんと笑いながら恐ろしいことを言ってのける優。
「おいコラちょっと待て」
「ん?」
「なぁに?お姉さん」
「こんな時だけお姉さん呼ばわりか。じゃなくって。お前たち何?もしかしてヒーラーはヒーラーでも…」
「そうだよー私たちは“オルソネア”では有名な二人組だったんだよ~」
「落ちこぼれヒーラーって呼ばれてた」
「はぁああ?!」
「「よく、“治す”んじゃなくて“壊す”ことでゆーめーだったなぁ…」」
「“壊す”?!“傷つける”とかじゃなくて??!怪我のレベルをはるかに上回ってるってこと?!」
「「うん」」
じゃあ何か?私は運だけで助かったっていうのか?!
「「ウン」」
運だけに。
そう言いながら笑う双子を見ながら、彼女…千年はギュッと拳を握った。
そして……なんの躊躇もなく迷いもなく、一見可愛くて癒されキャラのような双子の脳天へ、思いっきり力ある限り振りかぶったのであった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます