17-02 いまは、なにも無いことを祈るのみだ
「青のパーカーの
ライナスの指示にに合わせて、ドラムバックを
ハルは外の男にうなずくと、バックシートを振り返り言った。
「おばあちゃん、ご主人と榛名さんは、わたしたちが助け出します。この男性がおばあちゃんを安全な場所まで連れて行きます。いいですか?」
「行っちゃうのかい?」
ハルは手を差し出して、不安げに見るおばあさんの手を
「また会えますから」
二人は抱き合った。
おばあさんは、名残惜しそうな目を俺にむけて「あんた、
霧島榛名とハル、どちらともとれる言葉。
それでも、守らないといけないのはこの二人両方であるということ。そのことを言葉にしてくれたおばあさんに、俺はうなずいてみせた。
俺たちは車を降りた。
人混みもあって、
パーカーの男が手渡してきた、
「
男は
「レンズ部分がディスプレイ化されている。現在のCIAの三チームの展開状況がリアルタイムで表示される。イソノさんも
眼鏡をかけると、自動で眼鏡に
「……すごいな」
ぼんやりとつぶやいているところを、ハルが二の腕をつかんで引っ張った。
「磯野さん、こちらへ」
そのまま車のまえから歩道へと数歩よろけて、ハルに受け止められた。
その
「……わるい。こういう
ふと身体が密着したままだったことに気づいて、ハルからあわてて離れた。
ハルは目を丸くしたあと、なぜ俺があわてたのかをやっと
「防弾ベストは、そのまま身につけてください」
俺は防弾ベストを身につけようとしたが、
「ハルは眼鏡をかけなくてもいいのか?」
「わたしには見えていますから」
ああ、そうか。おそらくハルの
公園のときもそうだったが、バイオロイド的な行動をみせることで、あらためて彼女が人間ではないと気づかされてしまう。それくらい彼女は、人間らしくて、そして、俺にとって――
装備が整うと、ハルは「行きましょう」と言って、南口に向けて歩き出した。
人ごみを
「ライナス、さっき言っていた実行部隊というのは、この画面だとどれのことを
「画面にはまだ表示されていない。実行部隊はいわゆるアセット、つまりCIA外部の人員から
なんだよ、それって
「CIAは、我々に実行部隊のことを伝えてはいない。つまり、表向きには我々は、実行部隊が動いている以前に、その存在すら知らないことになっている。CIAの数名以外に知られていない、
――警視庁は
「出し抜く? なぜ?」
「CIAは、我々がなにを行おうとしているのか――つまり、この世界を見捨てて君たちの世界を救うという目的――は、正確には把握してはいないはずだ。だが、我々とZOEに
「……それって、実行部隊が動き出す前にカタをつけたところで、安心できないってことですか?」
「ああ、その通りだ。しかし、我々にはZOEがいる。まずは危険度の高い実行部隊が動き出した際について伝えておこう。CIAとは通信を
「磯野さん、わたしたちの前方二〇メートルに榛名さんと松田さんがいます」
ハルは、俺の右側にくるよう歩く速度を落としてから、耳元で
俺は前方を見ると、目の前を流れる人の波の
「榛名!」
「磯野さん、なにかおかしいです」
「おかしい?」
「ゴーディアン・ノットが
「けど、狙撃をするなら榛名を殺してしまうことになって、収束が起こってしまうんじゃ――」
「二つの可能性があります。
彼らの目的…………それって、死ぬまで殺し続けるってことか。
「もしくは、となりの松田さんを撃ち、
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