11-04 柳井、君がいて、私がいるからだよ
タイムトラベル。
この図をみるとたしかにその通りなのだろう。が、
柳井さんがソファから身を乗り出して指摘する。
「なあ三馬、この波紋円の弧がワームホールのような
三馬さんは柳井さんの言葉にあわせて、緑色ペンで映研の世界線の交点から波紋円の円周を上になぞり、もう一方の横線の交点まで滑らせた。
画像URL https://30191.mitemin.net/i416096/
「ああ。だが柳井、そう簡単にはいかくてな。もしこの仮説が正しかったとしても、オカ研世界を越えて八月七日以前の過去へ向かう
画像URL https://30191.mitemin.net/i416097/
柳井さんは、なるほどと腕を組んで
親殺しのパラドックス。
たしか、タイムパラドックスの話だよな。
例えば、俺が両親が出会うまえにタイムスリップをしてどちらかを殺してしまったら、俺は生まれることがない。けど、そうなると誰が親を殺したことになるのか、という話をだったと思うが。
俺はふと、テーブルにある二つの大学ノートへ目を移した。
……ノートに動くものが見える。
なんだろう、虫だろうか。
俺は身を起こして、二つ並ぶノートのうち、俺の大学ノートを見ると、
――クラトゥ・バラダ・ニクト
と、書かれていた。
……いや、その下にリアルタイムで文字が書かれ続けている。
これはいったいなんなんだ?
俺がノートに現在
「こいつは……すごいぞ……ああ、なんてことだ!」
三馬さんは声をあげた。
大学ノートの最後のページに書かれたクラトゥ・バラダ・ニクトという一文から二行空けて、以下のアルファベットがゆっくりと書き加えられていく。
JAXA QST NASA FNAL……
「おい、三馬、これって……」
「ああ。我が国も含めた世界の
このあいだも、一つずつ、しっかりと、
「これは
竹内千尋が目を
「あ、これって日本のLHC――大型ハドロン
「
意味がわからない。
なんで、科学機関の名前がこの大学ノートに書き連ねられていくんだ?
「どういうことなんです?」
「未来の人類の
三馬さんは「……そうか、そうなのか」と声を上げ
「この世界でもたまに、勝手に浮かび上がってきた一文――何者かの意思だと思っていたあのメッセージは、未来の我々であり、世界中の科学者たちの意思だったんだ。そして未来の、世界中の科学者たちが、我々に、
――世界を救え
そう言っているんだ」
……世界を救え? そんな大げさなことになっているのか?
「たったいま、霧島榛名の消失と俺のドッペルゲンガーの出現が起きていますが、これが世界の
三馬さんは
『クラトゥ・バラダ・ニクト』を指差した。
それでもわからない俺は、三馬さんに疑問を投げかける。
「……このエル・プサイ・コングルゥみたいな文字はなんなんです?」
「『地球の
柳井さんが
「柳井さん、それって……あのアニメのやつですか?」
「それは『ジャイアントロボ THE ANIMATION―地球が静止する日』だ」
「柳井、私はあのキアヌ・リーブスの
千尋が「それはリメイク版の『地球が静止する日』ですよ」と笑顔で答えた。
一方の柳井さんはため息をついて、
「おまえら一九五一年のオリジナル版を
「柳井、君がいて、私がいるからだよ。メッセージを理解できる我われがいるからこそ、あえてこの映画の言葉を
柳井さんは呆れ顔を三馬さんにむけた。
「……まったく世界の危機だってのに、この未来の俺たちと世界の科学者たちのユーモアレベルはいったい何パーセントなんだ?」
「おそらく75%くらいだろうな」
そう言って三馬さんは笑った。
「答えはいま柳井が言った通りだ。この世界は近い未来に静止する。その破滅を我々が
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※画像URLは『小説家になろう』にて、画像掲載用のサイト『みてみん』の各掲載ページとなっております。
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