00-01 八月七日一〇時二一分三七秒
雨、雨、雨。
悲鳴を上げる両足と、心臓の
坂道をのぼる視界が、
雨なのか、汗なのか、涙なのか、もうわからない。
俺の行く手を阻んでくる、世界。
それでも、一秒でも速く、速く、彼女に、追いつきたかった。
なぜ、みんな、黙っていたのか。
俺を巻き込みたくないと、彼女が言ったのを、なぜみんなは、真に受けたのか。
走れ。
走れ。
もっと走ってくれ。
一〇時二一分三七秒まで、
たぶん、あと、残り一〇秒。
世界が、変わってしまうまえに。
彼女が、
――消えてしまうまえに。
止まらない涙とともに、俺は、
――彼女の名を、叫んだ。
「なぜ泣いてるんだろう」
その言葉が、
呼吸が落ち着くにつれて、
頬をつたっていた
すでに流されてしまったのか、そもそもそれが涙だったのか、いまとなってはわからない。ただ、なにか、必死だったような、ざらついた
――
ほんの
こういうのなんて言うんだっけ? デジャヴュ? ……いや、ちがう気がする。どうにも説明のつかないこの感覚に、頭を
俺はバスタオルを肩にかけ
八月七日 午前一〇時二二分。
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