05.もう一人の磯野 超常現象を目の当たりにしたオカ研面子。磯野は今まで身に起きた出来事について打ち明ける。
05-01 どこから手をつければいいか
オカ研メンバー全員が
八月七日に映画研究会に訪れた、もう一人のちばちゃんの持っていた汚れた大学ノートを見てからの
翌日のオカルト研究会世界への移動と、
映研世界への
そして、たったいまノートに浮かびあがった最後の
――いまこれを書いているのはもともと映研世界から来た
いままでの流れから、この一文の書き手、文字の浮かび上がり
だが、そんなことは有り得ないということも。
本棚を背もたれにして腕を組んでいた
「……信じられん」
「わたしだって信じられませんよ。……けどさっきの見ちゃうと」
千代田怜はそう言って、ふたたび考え込むように大学ノートを見つめた。
「わたしなんて文字が浮かび上がるの二回も見ちゃってますし」
ちばちゃんもまた
一方の
霧島榛名は、こういう場合ふざけた態度をとることがほとんどだ。
けれど、たまにではあるが、あまりにも持てますような事態に陥ったときには、周囲に
まあ、ノートに文字が浮かび上がるという
「……あんたねえ」
霧島榛名の
腕を組んだままの柳井さんがゆっくりと話しはじめた。
「まあ、なんだ。磯野はこのノートの書き手について気にしている、ということだが、俺たちにしてみれば、いま磯野が話した「いままで起こった出来事」に
おっしゃるとおり、俺だっていまこの状況が現実だなんて信じられないし信じたくもない。ここ数日のあいだの
それにも
さらに、このノートの書き込みによれば、今度はさらに別の映研出身の俺がいるらしい。この先また増えたら
「とりあえず事実かどうかはともかく、一度、磯野の話した
柳井さんが口をつぐんだところで、
「磯野の話、二〇〇〇年代に入ってからの
「時空のおっさん? なんだそれ」
いや、名前は聞いたことがある気がするが、どんな話だったけか。
……そもそもなんでこっちの俺はオカ研に入ったんだっけ? オカ研世界の記憶はたしかによみがえっている。とはいえ、その上で忘れている出来事もそれなりにあるっぽい。現実世界でだって、
ただ、なんとなく覚えているのは、こっちの世界でも映研に入ろうとしてこの部室に訪れたってことだ。
そんなことを考えている俺をよそに、「時空のおっさん」という言葉を聞いて顔の
「時空のおっさんっていうのは、磯野が話したような無人、無音の世界に
柳井さんの話に、同じく
「十年以上もまえですか。時空のおっさんって意外と古いんですね。似た話の「きさらぎ駅」ってこれより前ですよね。それにきさらぎ駅のほうが有名だから、時空のおっさんは影が薄かった印象あります」
きさらぎ駅って、たしか現実には存在しない駅に迷い込んだ人が、その様子をネット掲示板でリアルタイムで
「時空のおっさんに出てくる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます