03-04 俺、見ないから
いや、まてよ。ここらへんの会話ってオカ研でこのまえしてたじゃん! むこうのちばちゃんは、笑いながら「セクハラですよ磯野さーん」とか言ってたじゃん!
……けど、こっちじゃほぼ
言い訳はいい。まずはこの沈黙をどうにかしなければ。どうする磯野。ここからどうやって会話を仕切り直せばいい?
じゃあ……これはどうだ。よく見ればそれなりに胸もあるし、かわいいちばちゃんの水着姿とかやっぱ気になるよね! って仕切り直せてないじゃーん! しかも胸もあるしって、さりげなくもなにもただのセクハラ発言じゃん!
ダメだ、冗談でも挟まないとなにも思いつかねえ。いや、冗談なのか? ただ欲望が口から出かかっただけではないのか? そもそも水着の話題からはなれろ。俺の無意識が見たいのはわかるがとにかく離れろ。ああ沈黙がつらい。
俺がひとり
え、なにそれ、
俺も窓の外へ向けると、なんてことはないスズメが二羽、
もう一度ちばちゃんに目を戻すと、俺を見ていたのか、目が合いそうになると慌てて
どうしたんだ、この子?
ふと彼女の隣の席に置かれた鞄とスケッチブックが目に入る。そういえば――
「スズメ、描きたいの?」
ちばちゃんは顔を赤くしてうつむいた。
だが、否定はしない。つまり
なにを探るにしても、まずはちばちゃんの
いやまて。慣れれば
俺は、彼女から顔をそらしてから言った。
「大丈夫。俺、見ないから」
たぶん、ちばちゃんは俺の顔を見て目を丸くしているに違いない。俺は見ないからという意思表示を
なんだろう、このわれながらむず
彼女は理解したのであろう、鞄のゴソゴソいう音やスケッチブックのページをめくる音が聞こえたあと、鉛筆を走らせるサッサッという音が響きはじめた。
盗み見をするつもりはなかったが、左手で
俺の判断は正しかった。
とはいえ、俺は朝っぱらからなにをやっているんだろう。コミュニケーションに
……現実世界に戻れたことだし、こうして夏休みの朝の時間をのんびり過ごすのも
俺は、ちばちゃんのスケッチが終わるまで、のんびりと窓から景色を眺めて過ごした。
……おっと。あまりの心地よさに、いつの間にか居眠りをしていたらしい。そういえば
目をこすりながらちばちゃんのほうを見ると、俺を待っていたんだろうか、すでにスケッチブックをしまって俺の顔をじっと見つめていた。かわいい。 ……まあ、目があった瞬間、いつもどおり目をそらされてしまったんだが。
「ごめんこめん。いい絵描けた?」
ちばちゃんは目をそらしたままうなずいた。
「えーと……ちばちゃんもなにか聞きたいこととかあったら
半分寝ぼけながら
「あの……」
「ん?」
「昨日の……」
「昨日?」
「……あの」
そのままちばちゃんは口をつぐんでしまった。
昨日?
「ちばちゃんたちがうちの部室に訪ねてきたときのこと?」
ちばちゃんは無言で首を振った。
「あれ? けど昨日はじめて映研に来たよね?」
「いえ……」
なにが言いたいんだこの子は。
だが、ちばちゃんが勇気を出して口にした次のひと言に、俺は自分の耳を疑った。
「それは……
……ちょっとまて。一昨日って、それは無いだろう!
だって、それなら、
――俺は、あのオカルト研究会の夢を丸一日見ていたことになるんだぞ?
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