紅茶は檸檬で

第1話 檸檬を浮かべて

「私もやっぱり紅茶には檸檬だと思うの。」

貴方はそう言うと、紅茶の入ったティーカップに一切れの檸檬を浮かべた。

ゆらゆらと紅茶の中で揺れる檸檬を眺めている貴方はどこか淋しげな顔をしていた。

貴方は長い間入れていた檸檬を取り出して紅茶を一口飲んだ。

「＿＿少し苦いかな。」

紅茶に檸檬を入れるのは僕。

貴方はいつもミルクを入れる。

なのに今日は檸檬なんだね。

「ねえ、戻ってきてよ...。」

貴方は顔をくしゃくしゃにしてうつむいた。

ごめんね。僕はもう貴方の側にはいけないんだ。

ああ、僕も貴方の隣で紅茶を飲みたい。

檸檬を浮かべてもう一度。