第12話
次の日、私達は二人そろってエイジに会いに行った。
放課後の図書館は、やはり私達三人以外に人がいない。
私達はそれぞれ座っていた。育ちゃんと私はソファに並んで。エイジはコンピューターの椅子に。
「ふうん」
エイジは押し黙っていた。
私達は言ったのだ、一言、
離れられない、と。
壁時計がコチコチ言う音に交ざって、時々外から生徒の元気な声が聞こえる。
しばらくしてエイジが顔を上げた。私を見る。
「それでいいのか」
私は頷いた。
あの後育ちゃんは私に言ったのだ。
一言だけ。
一緒にいよう、と。
ずっとなんて約束できないけど、一緒にいよう、と。
それ以上の誠実なんて、あるわけがないのだから。
私達は誓ったのだ。
エイジは私から目を逸らし、育ちゃんを見た。先程よりも強い視線で。
「本当にないのか」
隠している事は。
育ちゃんは、強く、きっぱりとした声で答えた。
「ない。何も」
私は瞳を閉じた。
ないのだ。何も。
そうなのだ。
育ちゃんがそう言えば、言った瞬間にそれは真実となるのだ。
育ちゃんの場合には。
エイジはため息を一つついた。
「何なんだろうな、もう」
彼は椅子の背に大きくもたれて天井を見上げた。椅子を左右に揺すっている。
「何て言えばいいのかな」
しばらくして私達に顔を戻した。
「お幸せに、か」
そう言ったエイジの笑顔は、今まで見た中で一番、
優しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます