第1話

クラス替えは嫌いだ。いつも先生は何考えてるんだろう的なメンバーになる。昔から偶然か故意にか、仲の良い友達とはことごとく引き離され、他のクラスがいつも自分の所より良く見えたものだ。

しかしこの高校は三年目にしてやっと分かってくれたらしい。私は先生ありがとう、と小さくつぶやいてみた。

「育ちゃん! 育ちゃん、一緒、一緒だよ!! 」

 私は後ろを振り返って大きく手を振った。クラス替え表を見ようとする人だかりから少し離れた所に、ぽつんと育ちゃんが立っている。恥ずかしそうに笑って手を振り返すのが見えた。

 私は周囲の人だかりをかきわけながら彼に近付いた。

「育ちゃん、もっと喜ばなきゃ! やっと同じクラスになれたんだよ!? 」

「うん・・・、でも今までだって大抵一緒にいたから変わらないんじゃないかな」

「今、何て!? 」

「いや、嬉しいよ、すごく嬉しい。うん」

 育ちゃんは何度も大きく頷いた。

私は疑わしげに育ちゃんを見ていたが、彼の髪をわしゃわしゃと触って、にっこり笑った。


まあ、いいか。育ちゃんは優しいし可愛いから。

「教室まで一緒に行こうね」

育ちゃんは黙って微笑む。

育ちゃんは昔からずっと変わらない。

子供の頃から男勝りで元気の良かった私は、いつも育ちゃんを引き連れて走り回っていた。

彼は黙ってにこにこしながらついてきた、いつでも。

良い幼馴染だと思う。 

 でも、まさか。

 私は右隣を歩く育ちゃんをちらりと見上げた。


 付き合うとは思ってなかったなあ。


 彼の柔らかな茶色の髪はいつでも軽くウェーブがかかっている。その綺麗な癖毛を私はふざけてよく、くしゃくしゃにする。

 淡い茶色の瞳はぱっちり大きく、肌はどちらかと言えば白くてお人形のようだ。

 付き合おう、と言われた時にはびっくりした。

 ずっと良い友達だとは思っていたけれど。

でも、即座にうん、と頷いたのは分かっていたのだろう。


これは、必然なのだと。

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