Episode03.主人公不在のギャルゲー
最近男子からの視線が痛い。ギャルゲー好きを公言した直後は冷ややかな目を向けられる事も少なくはなかったが、それらの多くは嘲笑であって、敵意はなかった。と思う。
しかし、現在俺へと注がれる男子の視線の多くは敵意に満ちている。全体の半分は敵意、もう半分は好奇心から来るもののようだ。
正直って思い当たる節が無い。この事を親友に相談したら割とマジで殴られた。普段なら取っ組み合いの喧嘩になるところだけどそうはならなかった。
「喧嘩したらまた麻耶ちゃんに怒られるよ」
逢咲が、なぜかいた。あの日。俺と正吉が放課後に担任の
「なんでまた喧嘩なんか」
「こいつがいきなり殴りやがったから……」
「いきなりぃ? マジで言ってるのか?」
いつにも増して挑発的な言動が目に余った。いや、確実に俺を煽っている。俺を怒らせることが目的なのか――それとも他に何か目的があるのか。
「純司」
名前を呼び捨て。どうやら正吉は本気のようだ。普段名前でなど呼び合うことは無い。ここまで
不思議と笑みが零れた。
「なんだよ正吉」
仁王の如く立つ正吉の怒気満々の眼は真っ直ぐに俺を睨み付けていた。
自分の目つきは判らないが相当酷い面をしていることは分かった。逢咲の表情を見てその事だけは確信が持てた。
「純司。お前、逢咲の気持ちも考えろ」
「えっ……」
反応したのは俺ではなく逢咲の方だった。鈍感と揶揄される俺にでもわかるくらい判り易く動揺していた。
「逢咲。お前も言ってやれよ」
三次元女子にも二次元女子同様の優しさを、がモットーの正吉らしからぬ厳しい口調で逢咲に詰め寄る。
見る見るうちに逢咲の正吉に対する好感度が下がっていく。❤×0――好感度は最悪だ。
❤0は憎しみを産むレベルでのトラウマになりかねない。ギャルゲーで言うところのバッドエンドである。一人の人間を壊しかねない。
ヤンデレルートに突入した暁にはこちら側のトラウマも確定的になる。
堪えきらなかった泪の本流が溢れ出ると同時に逢咲は駆け出していた。
「追えよ」
「はぁ?」
ぶっきら棒に言う正吉に無性に腹が立った。
「お前が行けよ!」
…………
……
…
口論は白熱していった。正しく言えば白熱させられた。そのように仕向けられたのだろう。
今になって思えばあの時の正吉の言動は彼らしく無かったように思う。それに気付けていればあんなにひどい事は言わなかった。
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