Episode02.鈍感ギャルゲー脳

 マジで恨むぞ神様。

 沸々と湧きあがる怒りは沸点をとうに超えていた。


「神様に喧嘩売るなよ」

「大丈夫だ。あの廃れた神社の神様だ、タイマンでれば何とかなる」

「ならねぇよッ!」


 鋭いツッコミが入る。

 胸部への水平チョップ――パンという高い音と共に胸部に強い痛みが広がる。

 思わず咳き込む。


「なにすんねん!」


 そこから先は水平チョップの応酬。高校生にもなって何をしているのだろうか、などと言う良識的思考はこの時一切働いていない。


 ついこの間まで中二病という重い病に侵されていた俺たち男子高校生は、いつまたあの厄介な事この上ない病を再発させてもおかしくないのだ。


 もしかしたら抑制されているだけで根本的な部分では完治していないのかもしれない。


 男子高校生って基本バカ。ちょっとしたことで一喜一憂したり、恋愛なんかその典型だ。


「こら! 早く席に着いなさい」


 予鈴よりも早く教室に入ってきた担任が純司と正吉を叱りつける。


 これが男だったら気分は最悪なのだがこれがまた美人なのだ。性格はちょっと――いや、かなりきついが「鬼ギャルパラダイス」のセイコちゃん清純派ルートの時のセイコちゃんそっくりだからたまりません。ぐへへ……


「何気持ち悪い顔してるの橘君」


 辛辣なお言葉も最早ご褒美です!

 周囲の冷たい視線を鑑みてもプラス。今日は一日ハッピーデイ!


「マジでキモいからそろそろこっちに戻ってこい」


 親友正吉の声でようやく現実世界へと帰還する。


「それと、変態橘にうつつを抜かしてると受験に響くぞ~、気をしっかり保て逢咲」


 俯きたまま「はい……」と消え入りそうな声で返事をした彼女の耳は仄かに桜色に染まっていた。


「なんで逢咲が怒られてるんだ?」

「貴殿は本当に罪作りな男ですなぁ」


 馬鹿にした態度を取りやがったので、直後に第二ラウンドの火蓋は切って落とされた。


 当然、放課後に呼び出しを喰らった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る