逢咲奈那 編
Episode01.主人公の親友
好感度が見えるようになって俺の人生は大きく変わった。
何が変わったかって? 言うまでもない。俺の愛してやまないギャルゲーの主人公になれた――はずだった。な・の・にぃ~!! 俺の今の立場と言えば……
「おい、純司。俺さぁ、逢咲の事気になってんだよね。どうかな?」
馴れ馴れしく俺に話しかけてくるリア充は山田。下の名前は覚えていない。
彼女を追ってこの高校を受験したと言う
「ん……ああ、今見る」
❤×10
少ねぇ……なんて言えば、って別にこいつが失恋しようが知ったことじゃないか。
「全然だめだね。脈なし」
「そんな馬鹿な……嘘だと言ってくれぇ~」
山田は脱兎のごとく駆けて教室を後にした。山田の失恋は噂が広まること風の如し。瞬く間に広まった噂(真実)は山田の心をへし折った。
彼は後日リア充から引き篭もりへとジョブチェンジを果たしたのだった。
しかし、それはまた別のお話。
ああ、可哀想な山田。俺の能力がなければこんな事にはならなかっただろう。
俺の能力は他者の好感度が見えるというだけの代物だ。それ以外にできることは無い。
「おやおや。またしても殿方の心をへし折ったのですか?」
「そんな言い方はよしてくれないか。俺は事実を教えた、それだけだ」
「それが酷だと言っているのですよ。貴殿にはそれが判らないから困ったものです」
「お前は俺の保護者か何かか?」
「保護者なわけないだろ」
「知ってるわ!」
俺のことを貴殿と呼ぶ(悪ふざけ)のは、俺の数少ない親友である
「って言うかさ、おかしくない? 俺の役回り」
「何がおかしいので?」
「普通さ。好感度が見える俺はギャルゲーの主人公だろ!? なのになんで他の奴のキューピッドにならなければならないんだ」
「山田の恋のキューピッドにはなれてなかったけど」
「あれは好感度が低すぎだ。何やったらあんなに好感度下がるんだ?」
「でもお前の家はもっとすごいんだろ。小母さんの小父さんに対する好感度❤2つって……」ぷっ
「笑うな! マジでヤバいんだから。倦怠期とかってレベルじゃないんだよ」
まあまあ、と俺を宥めているのか煽っているのかイマイチ判断の付かない正吉は、「頑張って離婚回避すれば」と他人事のように続ける。
実際に他人事なのだが。面と向かって言われるとムカつく。
「まぁ、同情はするよ。折角の能力もお前からしてみれば意味ないもんなぁ」
正吉の言う通り俺からしてみれば不要な能力。むしろ邪魔と言っても過言ではなかった。
好感度メーターと名付けた俺の能力は他人の好感度が❤マークで見えるというものだ。しかし、他者が他者に対して抱く好感度を、だ。つまり、自分に向けられた好感度については見ることが出来ない。
俺はギャルゲーの主人公ではなく、ギャルゲー主人公の親友ポジションになれる能力を得たのだった。
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