ギャルゲーライフ

小暮悠斗

ギャルゲーライフ

プロローグ

好感度メーター

 俺はイケメンだ。

 具体的に言えば、切れの長い目にスーととおった鼻筋はパーツとして一級品だと自負している。

 血色の良い唇は瑞々しく口角から覗く牙のように除く犬歯はチャームポイントだ。

 顔立ちはテンプレなほど日本人で、西洋風の彫りの深い顔立ちならば尚よかったが贅沢は言うまい。


 現状でも充分イケメンなのだから。

 しかし年齢=彼女いない歴の俺――橘純司たちばなじゅんじには欠点があった。個人的には欠点だとは思っていないが、ギャルゲーオタク故に彼女ができないらしい(親友談)。


 損なのはただの偏見だ。ギャルゲーは素晴らしいものだ。やってみれば判るものをやらずして判断する。理解に苦しむ。


 全人類がギャルゲーをプレイすれば戦争も無くなるだろうに。

 最も手っ取り早く人々を幸せにする方法こそがギャルゲーなのだ。


 この世はクソゲーだ。コミュニケーションなどと騒ぎ、その重要性を語るくせして好感度メーターも完備されていない。それなのに相手をおもんばかるだなんて不可能だ。


 好感度暗い見えるようにしとけよ神様よぉ。

 何気なく立ち寄った古びた人の気配の全くない神社の穴あき賽銭箱に五円玉を投げ込んだ。


「頼んますよ」


 そう言えば今日は「鬼ギャルパラダイス」のアップデートの日だった。早く帰らねば。

 俺は神様への願いよりも目の前のギャルゲーを優先し帰路に就いた。


 …………

 ……

 …


 いや~最高だったなぁ新キャラのカリンちゃん。

 徹夜だったが疲れなど微塵もない。

 最高の――至福の時であった。

 欠伸を噛み殺しながら自室を出てリビングへと向かう。


「おはよ~」

「おはよう。またゲーム? いい加減勉強しなさい」


 毎日同じやり取りの繰り返し。

 変化の無い日々は退屈そのもので、俺は変化を求めていた。「私に甘えて?」のアップデートまだかなぁ……。


 ――ピコン!


 電子音が鳴った。何だ、辺りを見回すが我が家の家電にあのような電子音を持つ物は無い。

 テレビか……違うか。それじゃあ一体今の音は――。


「母さん今の音って……」

「ん? 何ぃ」


 母親の頭の上には❤マークが2つ浮かんでいた。

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