深夜の渋滞 後日談

石花タクシー運行管理室は、

ある話題で持ちきりだった。


「ーそれで、お縄となってしまったか。」

「霊感ちゅうもんは無いほうがいいな。」


霊にとり憑かれたとみられる客は、恐ろしい力でタクシー運転手に掴みかかり肩を脱臼させた。


ドライブレコーダーは、

一挙手一投足を如実にとらえていた。


俯いている客がいきなり運転手に掴みかかる映像。


小学校まで連れて行け、息子がいるんだ等と叫ぶ、憑依した霊の言葉までもしっかりと録音。


「大変なのはお客さんです。」


顛末を結論から言うと

憑依をされた客は、この映像等が証拠となり逮捕されてしまった。


――――――――――――――――――――――――――――――


あの後運転手は、とり憑いた霊を落ち着かせる為に息子が居るという小学校へ向かった。


脱臼した左肩を庇いながら右手だけでハンドルを握り車を走らせた。


――――――――――――――――――――――――――――――


「それで小学校まで行ってみれば・・。」


――――――――――――――――――――――――――――――


小学校へ到着すると、客は門を飛び越えて走り出し、奇声をあげながら校舎のガラスを割って侵入。


息子を探しているのか

5年生の教室をひとつひとつ覗き探しているところを宿直に捕らえられた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「傷害罪、おまけに器物破損、運賃を支払わなかったから窃盗罪か・・。」


「同情しますよ。警察に霊だなんて言っても信じやしませんし。

信じたところで実際に起きた事実で処理されます。」


「君は信号無視だけだったけど・・、大変な思いをしたね。」


数日後、正気に戻った客は

取り調べ室で「霊にとり憑かれた」

と冤罪を訴えているそうだ。


「ほう~・・これがその映像ねぇ。」


運転手達は身を乗り出して

ドライブレコーダーの映像を注視。


「おいおい、幽霊が客に入り込む姿まで写っているじゃないか。」


「いやだから、

 それでも幽霊はいないそうだ。」

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