深夜の渋滞
2016年 5月 午前2時
壮年の客を乗せ信号待ちをしているタクシーで
怪奇な霊現象が起きた。
「運転手さん、
いまクラクション鳴りませんでした。」
後部座席の客が脅えた様子で運転手に尋ねた。
「いえ、聴こえませんでしたが・・。
第一、他に車ないじゃないですか。」
(ブッブーッ!!)
「わ!ほら、今もブブーッ!て!」
「ああ・・ここ中心街でしたよね。
まだ渋滞しているんですよ。」
「渋滞?」
「いや、怖がらせようとしているわけじゃないのですが。
どうやら、本当の事らしいので。」
東日本大震災では、地震発生後の宮城県の中心市街で渋滞が連鎖。
道路という道路が車でガチガチに埋め尽くされてしまい、全く動けない状態に陥ってしまった。
この車で道路が埋まり、動けなくなる現象を、
グリッドロック現象と言う。
「聞こえたって事は・・。
お客さん、見える人ですよね?」
「え・・?
確かに私は霊感はあるほうです。
そのグリッドなんたらが起きたって事も」
「なら、頭を伏せていてください。
以前、霊感ある方を乗せたのですが
このあと霊が来て文句を言うそうです。」
運転手がそう言った途端
(ドンドンドンドンッ!!)
「ひいっ!?」
(ドンドンドンドンッ!!)
「き・・来てます・・!来てますって!!」
後部座席の窓が、
けたたましく叩かれる音が響いた。
(ドンドンドンドンッ!!)
「ひい~~・・。
もう青ですよね!はやく発車してください!」
(早く行け!息子が小学校にいるんだ!
迎えにいかなきゃならないんだ!)
「は、はやくっ!
何か言ってますっ!言ってますって!」
霊感のない運転手は、
客の切迫した様子からただ事ではないことを感じて、まだ信号が赤であるが発車をした。
「落ち着いてください!発車してます・・!」
「ひ・・!ひい~~・・。
やめてぇ~~・・!!」
(・・・・・・。)
車を走らすと、客は静かになった。
「・・大丈夫ですか?
・・もう聴こえませんか?」
(・・・・・・・・。)
サイドミラーを覗くと、伏せたままの客が見える。
「お客さん・・?
もう大丈夫ですよ。走ってますよ。」
(・・・・・・・・。)
返事のない客に異変を感じ、
運転手は車を道路脇に停めた。
「・・お客さん?」
がばっ!と起き上がった客は
とんでもない腕力で
タクシー運転手にとびかかった。
「何停まっているんだタクシー!
早く行け!息子が小学校にいるんだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます