一人目!①
プラガ村から帝都サガヴェンまでは徒歩最短ルートを通れば
村を出て、
「もうすぐポルトルだ。着いたら少し休ませてもらおうか」
「うん!賛成~。実はあたしもうヘトヘト~」
「ポルトル村の村長さん、元気かな。昔プラガ村に来た事あったよね」
「あたしはあの村長苦手ぇ。セクハラが激しいのよ」
「せ、セク?……え?なに?」
「セ・ク・ハ・ラ!知らないの?帝都で流行ってる異国の言葉なんだって!意味はねえ、"変態"ってことらしいよ」
("変態"が激しいってどうなんだ?なんとなく意味は通じるけど……)
異国の言葉を誇らしげに語るキンジーだが、意味としては大人のすることではないと、私の中のポルトルの村長に対する尊敬が音を立てて崩れた。
「へ、へえ……そうなんだ。でも良く知ってるね」
「他にも知ってるよ!スシ、テンプラ、ゲイシャ、フジヤマ」
「なにそれ?聞いたことないや」
ポルトル村の入り口に近づくと、今まで嗅いだことのない独特の臭いが漂ってくる。ただならぬ気配に私は身震いがした。
「ねえ、ウーノ、何か変な臭いしない?」
「確かに、ちょっと変だな。キンジーちょっと止まって」
私は村の入り口に立ち止まり、それ以上入る事を躊躇してしまった。
今時期の農村部では、豊作を喜び、農耕の神に感謝と祈りを捧げる"ベルアー"と呼ばれる祭や儀式を行うことは珍しくない。その時に大量の
「ベルアーかな?でも
「いや、わからないけど、ベルアーじゃないのはたしかだ」
確かに焦げたような臭いはする。しかし、とても濃厚で鼻の奥にツンとくる臭い。分類するならばやはり異臭になるのだろうか。
「きっとベルアーだよ。だって今はそういう時期じゃん」
私の静止を話し半分に、キンジーは村の奥へ進んで行ってしまった。嫌な胸騒ぎは気のせいであって欲しいと思いながらも、キンジーの後を追った。
だが、嫌な予感は的中する事になった。
キンジーはその光景を前にその場に座り込み、嘔吐した。私はキンジーの荷物を全ておろしてやり、背中をさすり、元気づけるが、私自身も限界寸前であった。
農地は無残にも荒らされ、
「なに……これ……やだ、あたし帰りたい……」
「それはダメだ。魔法使いを見つけなければ、きっとプラガ村もこうなってしまう」
「なんでそんなに冷静でいられるの!?ウーノおかしいよ!……人が……死んでるんだよ!?」
「冷静なんかじゃない!!こんなの……冷静でいられるもんか」
私の大声にキンジーは黙ってしまい、死体を啄んでいた
(なんの音だ?)
しかし、今はそんな事よりも目の前のキンジーが優先だった。精神的にも肉体的にも疲労困憊のキンジーをこのままにしておくわけにはいかないと、一旦キンジーを村の外までおぶり、休ませた。
「いいかい、キンジー、何かあったらこの笛を吹くんだ。いいね?」
私は貝殻でできた笛をキンジーに手渡した。私の言葉にキンジーは何も言わずに頷くだけだった。私がキンジーを置いて村に戻ろうとすると、キンジーは私の足を掴んで止めた。
「ねえ、嫌だよ、どこ行くの?置いてかないで……」
「大丈夫、荷物を持ってくるだけだよ。君をおぶってくるのに置いてきてしまったから。すぐ戻るから」
「本当に?」
私は頷き、キンジーの頭に手を置く。普段は男勝りな性格のキンジーも村のあの惨状は堪えたられなかったのだろう。この姿を目の前にすると、やはり女の子なのだと再認識せざるを得ない。
「早く戻ってきてね」
「ああ」
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