4番線 時刻表、紙切れになる
好きな音楽を聴きながら電車に揺られるのはとても気分がよかった。小倉駅まではおよそ25駅。時間にして1時間とちょっと。そのぐらいなら大学の通学で慣れている。なんてことはなかった。
福岡市内を抜けるとしばらく田んぼ道が続いた。あたりはまだ薄暗く、車内も私の他に、眠そうなサラリーマンが数名いるだけで、ほとんど貸切状態だった。
遠賀川を抜け、大きな遊園地が見えてきた。福岡県民なら誰もが一度は訪れたことのある、スペースワールドだ。(2017年で閉園してしまうことになった、悲しい)このあたりまでなら、何度か来たことがある。高校の旅行でこの遊園地を訪れ、例の幼馴染達とはしゃいだ冬を思い出した。彼女らを、裏切るような気持ちが少しした。それでも私は遠くの景色を見てみたかったのだ。無茶苦茶な角度のジェットコースターが、ゆっくりと景色に流れていった。
関門トンネルは、どんな造りになっているのだろうか。電車で海に潜るだなんて、いったいどんな景色が広がっているんだろう。想像して、どきどきした。昔、北海道を旅行した母に聞いたことがある。「青函トンネルは青い海が広がっていて、鯛やヒラメが舞い踊っている」のだと。
そうこう思いを馳せているうちに、終点の門司港に着いた。
やっと空が明けてきた頃、私は久々ににホームに降り立った。少し伸びをして、凝ったからだを伸ばして、そして次に乗る電車を探そうとして、はっと気づいた。
小倉だ。私は小倉を目指していたはずだ。小倉で乗り換えをしなければならなかった。終点まで来てどうする。18きっぷ初心者が陥りがちなミスだった。さっそく乗り換え時間を全て記載したメモがただの紙切れになった。門司港から出ている下関へ渡るフェリーに乗ることも考えたが、電車旅としてあるべき姿ではなかったし、何より鯛やヒラメの舞い踊る関門トンネルを潜りたかった。
当時私はスマホなどという高等なネット環境は持ち合わせておらず、スラッシュすると文字盤が出てくるタイプのガラパゴスな携帯を使用していた。もちろんパケットし放題など入っているわけもなく、頼れる情報はなにもなかった。
一気に先行きが不安になった。乗り換え時間が分からないだけで乗り換える駅はおよそ一緒だろうと心を落ち着かせながら、とりあえず、記念に門司港の下車印をもらった。(こういうところはちゃっかりしている)
情けないような恥ずかしいような気分で、折り返しの電車に乗った。
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