第3話 嫁さんはビックリ人間

俺の嫁さんはビックリ人間だ。

といっても何か特技を持っているようなビックリ人間ではない。

朝から晩まで、何かと小さな事にビックリして生きている。


僕がトイレに入ってる時、ギャーっと悲鳴がした!

何事だー!と思い慌てて台所にかけつける。

指でも切ったのか?お湯でもひっくり返したのか?

大丈夫か!!??

そう妻に聞いたら「うん、大丈夫。キューリを1本落としただけだから。」


ある日の夜、古い一軒家の自宅の玄関の方からガタンと音がした。

嫁さんはビクッとして、全身を硬直させて怯えている。

「何かいるのかなぁ?怖いよー!」

たしかに深夜1時だから普通ならば怖いかもしれない。

しかし俺は確信を持って、何もないから大丈夫だ!と言ってもずっと怯えている。

「外を見てきて!」と嫁さん。

しょうがないなぁ、と思いながら玄関を開けて確認する。

何もなかったよ、と伝えてようやく安心したようだ。

俺の自宅の玄関横には、自動販売機が設置してあるので、今まで何万回もガチャンと音がしているのだ。

それでも毎回ガチャンとなるたびに驚いて怯えている、プロ級のビックリ人間だ。


嫁さんに「3秒後にワッ!て言うからビックリしないでね。」と言った後で本当にワッ!と言っても毎回ビックリして、何でおどかすの!と怒る。


1番面白かったのは、ジャッキーチェンの映画をテレビで見た時だ。

画面の中でセットをぶっ壊したり、凄まじいアクションが繰り広げられる。

嫁さんは映画が終わるまで、ワー!ギャー!

もう見れないー!と叫びまくり、まるでホラー映画を見ているかのようにビックリしまくっていた。映画が終わった頃には疲労困ぱいでぐったりしていた。


そして、今朝もウワー!と叫ぶので、どうしたの!と心配して聞いてみるとこう言った。

「歯ブラシ落とした。」


嫁さんが居眠りして起こす時も、毎回ビックリして怯えて目を覚ます。


このような嫁さんのビックリエピソードは、毎日数十回は繰り返される。

まるで大昔からタイムトリップしてきた原始人が、突然現在の東京にやって来て、見た事のない文明に怯えてるかのようだ。


もしかすると、俺は本物の原始人と結婚してしまったのかもしれないなぁ。

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