第12話 死の創出と人間へ
有性生殖ができるようになり、自己複製としての生存が、つまり今の定義による死の創出であった。しかし、実際には死などない。思考は、エネルギーはなくならない。ただ、それを言えば、全ては単なるエネルギー、思考が元であって、死もなければ、生もほんとはないんだ。世界は確かに在るが、と同時に無いのだ。意味がわからんと思うが。
俺が最初の有性生殖の相手に誰を選んだか、わかるか。サンの意識を持った自分と同じ単細胞生物だ。自慢やのろけに聞こえるかもしれないし、この話に直接関係ないから、ここではサンとの話は書かない。
関係があるのは、サンとの有性生殖で思い出したかもしれが、俺が作り出した無数の意識、無数の自我を持った俺の意識は、この世界にまだあるということだ。全ての無数の意識は俺と同じように、俺とともに、狭義の生物の起源となった。
しかし、有性生殖がはじまり、死というものができて、これは俺にも理由が分からないのだが、意識の記憶としての継続が断たれてしまったことだ。記憶としての意識を世界の始まりから維持しているのは、無数の意識の中で、どうも俺だけのような気がしている。ただ、記憶は失っても、感覚は残っている。これは後で書く。
とにかく、有性生殖ができるようになり、植物から動物に、何億年もの時間をかけて、様々な種を経て、ついに俺は人間に至った。そして、無数の人間の人生を俺は経て、ついに俺が良く知る、懐かしい元の自分の体に戻ってきたのだ。
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