第4話 どうする?
「さて、この駄龍は放置しましてその子はどうしますか?」
栞さんがちっちゃい聖龍さんを見ながら聞きます。
「うーん、私としては一緒に居たいけど一応産みの親がそこにいるし……」
駄龍駄龍言われ続けて流石に心が折れたのか紅葉さんの足に抱きついて拗ねてます。そして紅葉さんは先程同様ニコニコしたまま本を読んでます。凄く強い。
「では小さい聖龍さんに聞きましょうか。貴方はどちらと一緒に居たいですか?」
飛んでいたちっちゃい聖龍さんはケモミミさんの胸に飛び込み、「ぴぃ!」と嬉しそうな鳴き声を出しています。
「だ、そうですよ?」
「うーん、じゃあよろしくね?」
「ぴぃー!」
一件落着でしょうか。今更ですが私も空気になってますね。何故かシロちゃんが私の膝を枕に本を読んでますが。
「首痛くない?」
「ちょうどいいよー」
ちょうどいいそうです。 というよりなかなか大きい本を腕だけで支えて読んでますが重くないのでしょうか。
「シロ、お客様に失礼ですよ」
栞さんが注意します。
「だってお姉ちゃんって感じなんだもーん」
シロちゃんにそう言われちょっと嬉しいです。
「すいません。 千秋さんがよければ相手してやってください。 基本私と紅葉しか居ないので……」
「私には甘えてくれないのに!」
いつの間にか近づいていた紅葉さんが拗ねてます。
「紅葉飽きたら直ぐに立っちゃうじゃん。 転がると痛いんだよ?」
確かに膝枕をされてて立たれると痛いでしょう。 頭がごんってなりますし。
「むぅ……」
頬を膨らませて拗ねてます。 あざといなーと思うのに素でやってそうなのでかわいいです結局これです。
「さて、決まったところで名前を決めないとですね」
「そーねぇ、 貴女の名前も決めないとね」
あ、聖龍さんが復活しました。
「私の?」
「そうですよ。 貴女は親になるのです。 親の名前を知らない子供は悲しいですよ」
「確かにそうだね……」
ケモミミさんが寂しそうな顔をしてます。 私は両親健康で妹も元気よく生きてます。幸せなことなんでしょうね。
「貴女には3つの選択肢があります」
「3つ?」
「1つ目は自分で決めること。 2つ目は此処にいる全員で決めること。そして最後に」
栞さんが話ながら何処からか本を掴むように手を動かし、 何もないところから本を引き抜きました。
「この本を読むこと。 あまりお勧めはしませんがね」
「それは?」
「貴女の産みの親、 御両親の記憶です」
「……え?」
私も意味がわかりません。 何故ケモミミさんの両親の本があるのでしょう。
「この図書館は全世界の全ての本が集まる場所ですが、正確には全ての記録が集まるのです。 誰かが辿ってきた記録、考え、全てが本になりこの図書館に置かれます」
「「なにそれ怖い」」
あ、ケモミミさんとハモりました。 でもそうでしょう。 自分の考えなどが全て知らない誰かに観られるのは恐ろしいです。
「管理はしっかりしてるので大丈夫ですよ。 私以外、本来なら触ることも、見ることも出来ないものですから」
「まぁ、諦めます。 理解しきれないし」
「で、どうしますか? 正直貴女が親から望まれて産まれてきたとは確信して言えません。私もこの本達だけは目を通しませんし、貴女が傷付くだけかもしれません。 私としては自分で決めるか此処にいる全員で考えるかの方をお勧めします」
「……読ませて」
「わかりました。 では、情報が多すぎるので御両親が出会った所からにしましょう」
そう言うと本が浮かび上がり、 元の一割程になりました。
「……思ったより薄いですね」
栞さんが少し悲しそうな顔をして呟き、 丁寧に渡します。
「……読みます」
何かを決意するような声の響でした。
それから三十分。 ケモミミさんが本を閉じました。
「……ふふっ、ふふふ、あははははは!」
急に笑いだしたので肩が跳ねました。
「どうでしたか?」
「うん、生きててよかった。 そして此処に来れてよかった」
泣きながら、嬉しそうに笑っています。
「アイリス。 それが私の名前だった」
「ギリシア語で虹ですか」
「大雨の日に産まれそうになって、産まれたと同時に晴れて虹が出たんだって。だからアイリスにしようって笑顔で話してたみたい」
「直ぐに消えてしまい、 縁起のいいもの出はないと言う人もいますが虹の麓には宝物があると信じていた人達もいるようですね」
「ただ、大雨だったせいで山が崩れてみんな呑み込まれちゃったみたい」
「……そうですか」
「でも、 私は望まれて産まれてきたんだって。両親に愛されていたんだってわかったよ。ありがとうございます栞さん」
「いえ、 よかったです」
ほっとしたような顔をする栞さん。 根は優しいんでしょうね。
「君の名前も決まったよ。 アイトリアーから取ってリア。 私にきょうだいが出来たときにつけようとしてた名前みたいだけど、受け取ってくれる?」
「ぴぃ!」
ちっちゃい聖龍さん改めリアさんが嬉しそうに鳴き、 アイリスさんの頬を舐めました。
「晴れと言う意味ですね。リアも恐らくですがリアルとかけたのでしょうね」
何故言葉の意味が同じなのかは突っ込んだら負けな気がします。
「よろしくね、リア!」
「ぴぃ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます