第3話 またもや
「とりあえずお名前は?」
「名前はない。黒いのとか赤いのって呼ばれてる」
ケモミミ(猫?)をつけた女の子がそう言います。髪が黒く、目が赤いからそう呼ばれているのでしょうか。
「そうですか。私は栞、この図書館の管理人をやっています」
「私はシロ、よろしくね」
「千秋です」
あれ、紅葉さんは?と思ったら椅子に座って本を読んでいました。マイペースですねこの人。
「あ、私の事は気にしないでね」
視線に気がついたのか笑顔で言ってきました。……美人の笑顔破壊力すごいです。
あ、私は同姓愛者じゃありませんよ?そういう形の愛もあるとは思いますが私は男性が恋愛対象です。それを踏み越えて破壊力ありますすごいです。
「ねぇ、わざとならそろそろ悲しくなるよ?」
ケモミミさんが耳をぺたんとさせてしょんぼりしてます。申し訳ないですがかわいいです。
「すいません、わざとではないんですよ?」
「私は貴女に興味がないだけー」
「紅葉さん⁉」
紅葉さんの言葉になおさらしょんぼりするケモミミさん。なんでしょう、ダンボールに入った捨て猫を連想してしまいます。
「紅葉は人に興味を持つことが少ないしあの通りマイペースなので気にしないでくださいね。あれは置物とでも思ってください」
栞さんも紅葉さんのことをばっさり切り捨てました。言われた本人は気にしてないのかにこにこしながら本を読んでいます。ほんとにマイペースなのですね。
「ところで貴女は何故洞窟に?」
あ、それは私も気になりました。
「お宝があるって噂だったから行ってみたら小型ゴーレムがうじゃうじゃゴブリンうじゃうじゃ最深部には成体の土竜とかすごくめんどくさかった。しかもお宝ないし」
明るくなった表情がどんどん暗くなっていきます。
「成体の土竜ですか。あれなかなか硬かったと思いますが倒したんですか?」
土竜ってたぶん土の竜ですよね。もぐらじゃないですよね。
「倒してないよ。怪我してたし話せたから薬あげて何にもしなかった」
「ふむ、話せる土竜ですか。何か貰いませんでした?石の塊みたいな」
「これのこと?」
服のポケットに手を入れて出すと30cmくらいの石の塊が掌にありました。どうなってるのか気になります。
「これがなんなの?」
「土竜の卵ですよ。売るもよし育てるもよし。育てるなら鉱石が主食なので多少めんどくさいですが」
「「は?」」
土竜の卵と言いました?
石の塊、土竜の卵を見ていると、
「あれ、ひび入ってます?」
「あぁ、孵化の直前で渡されたようですね」
え、孵化するんですか。楽しみのような怖いような……
「え、孵化するの?」
ケモミミさん大慌てです。
「孵化しますね」
栞さん凄く冷静です。なんかおもしろいです。
そう言ってる間にひびがどんどん広がって、
「ぴぃ!」
あ、産まれました。西洋のドラゴンのような外見で真っ白です。
土竜と言ってたので灰色系とか茶色系を想像してましたが違うのですね。
元気よく飛び出してきたのですが全員固まってるのを見て「あ、お呼びじゃないです?」と言った感じに殻の中に戻ってしまいました。
あれ、栞さんも固まってますね。
「さーて、これはどうしましょうか……」
あっ、復活しました。ですがすごい困ってます。
「この子土竜じゃないよね?」
シロちゃんも首を傾げてます。
「でも土竜から貰ったんだけど……」
ケモミミさん軽く現実逃避してますね。
「私も久しぶりに見ましたが聖龍ですね」
せいりゅう、青龍じゃないですよね。白いですし。
「ちょ、ちょっと待って⁉ 聖龍⁉ 伝説の⁉」
「貴女の世界では伝説にすらなってるんですか。 そうですね、世界を移動したり簡単に人化出来るのくらい上位の存在です。あの引きこもり今貴女の世界に居るんですか」
「引きこもり言うな!」
ふぁっ⁉ いきなり後ろから声出されたらびっくりするんですって!
ところで誰でしょう? 振り替えるとこれまた美人。 もういやですこの美形率。 白い髪を肩ほどで切り揃えて、いたずらっ子のような笑みを浮かべています。
「おや、引きこもりに引きこもりと言って何か問題が?」
栞さんめっちゃ笑顔です。
「むぅ、制約あるからしかたないもん」
「数千歳超えるおばあちゃんがもんとか言ってもかわいくないよ?」
シロちゃんが毒吐いてます。 数千歳って想像も出来ません。
「その制約も百年は1つの世界樹から動かないこと、世界樹を混乱させないように化けることだけでしょうが。 狭間の世界には自由に行き来出来るでしょう」
「なんでそんな詳しく知ってるのさ!」
「ここは全ての書物が集まる場所ですよ? 当たり前じゃないですか」
「ちっ……、めんどくさい」
うわぁ、舌打ちしましたよ。
「ところで何故卵を古竜の土竜に渡したんですか? 狙われたのか怪我してたそうですよ?」
話の流れからしてこの人が聖龍ですよね。
「仕方ないでしょう、世界樹のリソースバランスが崩れかけてたんだから。 滅びても私は移動すればいいけど多少の愛着はあるし調整するためよ」
「ふむ、土竜に一目惚れして無理矢理襲った感じですか。この子で何匹目ですか?」
「なんでばれた⁉」
あ、本気で駄目な人(龍)ですね。 こんな駄目な人なのに聖龍なんですか。
「世界樹に影響が出るほどのバランス崩壊だと偉い人たちが騒ぎますからね。ここ数年、卵が孵化する期間での騒ぎはありませんよ」
「言い訳をミスったか……」
なんで聖龍と呼ばれてるのかわかりませんね。 あれ、何かを忘れてるような……。
「ぴぃ!」
「よしよし、君は私を慰めてくれるんだね」
いつの間に殻から出てきたのかちっちゃい聖龍さんがケモミミさんの頬を舐めて慰めてました。
……またケモミミさんのこと忘れてました。
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