第6詩 躍動する陰謀論



破滅の胎動する深海の奥


誰も見たことがない闇の中で


一筋の邪悪なる鼓動が鳴り始める


ドクン それは命の波


たとえば 屋上で項垂れて タバコを吸っているサラリーマン


マンションのベランダで 下をぼうっと見ている老人


帰り道で 道草を食っている学生のたまり場


ベビーカーを押す人の前に立ち塞がる通行人


ドクン それは空の遥か上にある歌の波


鳴り止んだ鼓動は希望の輝き


光の中で誰もが見るだろう


近い空で躍動する再生を


たとえば 何かが吹っ切れたサラリーマンは屋上を後にする


下を見ていた老人は孫の呼ぶ声を見つける


道草を食っていた学生はそれぞれが家路につく


ベビーカーに立ち塞がっていた人は後ろに気づき、申し訳なさそうに場を明ける


それぞれが それぞれで 笑顔を見せる

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