憂鬱症

りょう(kagema)

憂鬱症

ぽたりぽたりと雨の降る音


私は雨を確かめようと手のひらを上にまっすぐ腕を伸ばす


雨粒は一向に私の手には当たらない


雨の降る音は一層強く


それでも私の掌に雨が落ちることはなかった


私の存在は天にまで忘れられたか


私は自分の掌を見た


掌には雨の代わりに蛆が乗っていた


とうとう私は腐ってしまったらしい


私は自分の体が蛆だらけなことに気づいた


腹はすでに食い荒らされ


顔はもはや蛆に乗っ取られている


暗雲が垂れ下がり雨は一層激しさを増す


雨はこの私に纏わり付いた蛆を流してはくれない


腹の中で渦巻く重たい感情も脳内で起こる薄暗い思考も全部この蛆のせいだ


雨が私の蛆を洗い流してくれないのなら私はこの身ごと蛆を焼き尽くそう


あっちへ行け


あっちへ行け


体が重たい


蛆の重みだ


あっちへ行け


あっちへ行け

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