5-9.女王と天使

「随分と面白いことになったね」


 天使は女王の頭の上を離れ、大理石のテーブルの上に降り立った。

 シャルハの左右には、執事とメイドがそれぞれ警戒体勢を取っている。しかし当のシャルハは慌てる様子もなく、暗い部屋の中に座っていた。


「我が女王、随分余裕だね」

「ボクは天使を王冠にして、二本の優秀な剣を携えているんだぞ。何を怖がることがある」

「結婚してから余裕が出てきてつまんないの。まぁ彼らがこっちに手を出すことは無いから、安心していいよ」


 床の上に倒れたシャーケードは、既に息絶えていた。王は椅子に座ったまま、呆然自失としている。

 ヘンルーダは気絶してしまったヘルベナを介抱しているが、ジーラの姿は何処にもない。ただ、リリィの一撃で弾き飛ばされたらしい剣だけが、その場に残っていた。


「それにしても、黒いお魚がいるとは思わなかったなぁ」

「知り合いか?」

「よく遊んであげてるよ。羽で叩き落すと泣いちゃうんだよね」

「可哀想じゃないか」

「泣き虫で気が強くて諦めの悪いお魚さん。あの卑怯な魔物よりは、余程マシだね」


 さて、とウナはテーブルを蹴って宙に浮かんだ。


「お魚さんに挨拶してくるよ。シャルハは此処で待っててくれる?」

「良いとも。国王と少し話したいこともあるしね」

「まさか、国交の話でもするの?」


 茶化したように言うウナに、シャルハは不敵な笑みを返した。


「そのまさかだ」


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