第354話薬師雪羅

 アオイ:国土争奪戦争シーラント諸島連合国戦が刻一刻と迫って・・・


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 アオイ:え?『まだだ〜いぶ尺があるからまだ当分引っ張っていく』ですかぁ?では今回は人界から来た人間の薬屋さんのお話です。それでは魔王少女物語354話スタートです。


 マリンタワー女王襲撃事件より約3時間後 魔界時間11:00 リムジン車内


 妖狐族の男性:シーラント諸島連合国の一部店舗の売り上げが急激に落ちてると?


 秘書:はい。人間の経営する薬局が開業して1週間で我が社の系列ドラッグストアの売り上げをその薬局が40%上回りました。


 妖狐族の男性:気になりますねぇ。


 秘書:それで、如何なさるおつもりですか?薬膳社長。


 護:そうですねぇ。一度会ってみたくなりました♪


 アオイ:この方の名前は薬膳護やくぜんまもるさん。魔界宇宙財界に君臨する12人の『王』の称号を持つ『トゥエルブ』の1人で製薬業界の支配者『妖凱製薬グループ』の社長さんです。種族は妖狐族で『製薬王』の称号を持つ方です。


 秘書:これがその人間の作った薬で。勿論、魔界宇宙中央政府の認可も受けてる薬の1つです。


 護:ほぉ!これを作った人間のいた世界の文明レベルは?


 秘書:中世レベルと聞いてます。


 護:素晴らしい!中世レベルの文明でこれ程の高品質、高性能の薬を開発するとは!個人経営の一店長にしておくには惜しいですねぇ♪


 秘書:我が社にスカウトしますか?


 護:ええ、当然です。第1研究所の所長にしたいですねぇ♪


 秘書:現在空席になってるあの薬学研究所のですか?彼処は相当優秀な研究者でなければ務まりませんが。


 護:『だからこそ』です。この才能埋もれさせるにはあまりにも惜しい。然るべき施設と設備、そして重要なポストこそ彼女には必要なのです!


 秘書:・・・では運転手さん。例の薬局へ向かってください。


 運転手:承知しました。


 同時刻 薬局『街の薬屋さん』前


 蓮:・・・寒気がする・・・ヘックション!


 千夜:アンタ風邪じゃないの?


 蓮:うぅ、降魔日食逃すわ、アダマンタイト鉱石は間違いでダークマター鉱石だっけど即日サタンヘイルダムに緊急転送されるわ、国営農場で足止め喰らうわ、農場から戻ってきても私だけ海に落ちるわで何で私だけこんな目に。


 ケイン:お前は昔から全国模試以外の運は最悪だったもんな。


 蓮:あれ?天里君?警察撒けたんだ。


 ケイン:誰の話だよ!


 千夜:そ、それより久し振りね天里君。今日はどうしたの?


 ケイン:え?あ、ああ。ここの薬局は人間が経営しててな。審査の結果良心ランクがSSだった事から融資を受ける事が出来たんだ。更に開業して1週間で他店舗の売り上げを40%上回るという営業成績を叩き出したってんだから銀行側も追加融資OKのGOサインが出たんだよ。


 蓮:へ、へぇ〜。それすご・・・・ヘーーーーックショイ!


 ケイン:本当に大丈夫かお前。


 千夜:それで追加融資の手続きしに来たの?


 ケイン:ああ。あと『警告』にな。


 レイド:ここか、噂の人間がやってる薬局ってぇのは。


 蓮:・・・あ。虫だ。


 レイド:虫ってまたテメェか!虫人コクーンロイドって言ってん・・・・プッ!何だお前その顔は・・・ククク♪


 蓮:う〜、笑うなぁ!・・・ズビーーー!アンタこそ何しに来たのよ!


 レイド:あ?最近右目が疼くんでな、傷薬を買いに来たんだよ。


 蓮:・・・プッ!右目が疼くって厨二病じゃあるまいし♪


 レイド:あ?んだとこの鼻垂れエルフ!


 蓮:あんだとこの厨二虫!


 レイド:言うに事欠いてこのアマ。表出ろや!


 蓮:上等だ・・・ってもうここ表だこの野郎!


 リタ:うぅ、からだポカポカする〜。あたまいたい。


 ミシェル:大丈夫っスか?リタちゃん。


 小雪:しっかりするべ!


 豆子:クゥ〜ン。


 カマル:お医者さんに診せた方が良いのでは?


 ミシェル:風邪なのは間違いないんスけどねぇ。魔界には人間の薬を扱ってる店が無いんっスよ。


 通行人A:聞いたか?彼処の薬局人間がやってるらしいぜ。


 通行人B:知ってる。かなり評判らしいな。俺も彼処の薬で目の腫れがこの通り治ったんだよ♪


 カマル:聞きましたか⁉︎あの薬局、人間が経営してるらしいですよ♪


 ミシェル:そうっスね!もしかしたら人間の風邪薬があるかもっス♪


 リタ:おくすり・・・あるのぉ?


 ミシェル:あるっスよ!さっ、行くっス♪


 リタ:・・・・うん♪


 店内


 ミシェル:ちわ〜っス!人間の風邪薬あるっスかぁ?


 ミレイ:は〜い!今行きま〜す♪


 アオイ:この方はミレイ・雪羅せつらさん。人間族で魔界に迷い込んだ薬師の方です。


 ミレイ:この子ですね?今幼児用の風邪薬調合しますね♪


 10分後


 ミレイ:お待たせしました。え〜っと・・・


 計測器を当てるミレイ


 ミレイ:凄い!良心ランクSSSですか!ではお代は無料とさせていただきます。3回食前にお飲みくださいね♪


 ミシェル:さ、ホテルに戻って休もうか♪


 リタ:うん♪


 ミレイ:さ・て・と・・・ん?


 ケイン:ごめんくださ〜い。


 ミレイ:は〜い!


 ケイン:あれからどうですか?


 ミレイ:お陰様で好調です♪


 ケイン:実は追加融資の件、OKが出たので手続きをしに参りました。


 ミレイ:ではこちらへ・・・あら?いらっしゃいませ〜♪


 護:あ〜、私は客ではないのですよ。ミレイ・雪羅さん・・・ですね?


 ケイン:(妖凱製薬グループの薬膳自ら来たか。一足遅かった!)


 護:そちらは・・・妖魔銀行さんですか。お世話になっております♪


 ケイン:ではまた日を改めて・・・


 護:その必要はありませんよ♪すぐ終わります。ミレイさん、単刀直入に言います。我が社に来ませんか?


 ミレイ:テレビやネットのニュースで存じております。申し訳ありませんがそのお話、お断り申し上げます。


 ケイン:(へぇ。大抵の個人経営者はトゥエルブの1人が直々にスカウトしに来ると二つ返事で受けるものだが)


 護:差し支えなければ理由をお伺いしても?


 ミレイ:私は自分の世界で商会・・・ここで言うところの貴方達トゥエルブの誘いを受けて失敗した事があって。それにこの薬局の名前の通り『街の薬屋さん』をやって地域の人達と触れ合いたいんです。


 護:そうですか、そういう事なら無理には誘いません。行きますよ。


 秘書:良いのですか?


 護:私がこの世で1番嫌いなのは無理強いをする事です。本人が断るのならそれを尊重して然るべきです。違いますか?


 秘書:申し訳ありませんでした。


 護:わかったら行きますよ。


 秘書:はい。


 レイド:随分と潔く退いたな。退き際をよく心得てやがるぜ。


 ミレイ:あ、いらっしゃいませ〜♪


 レイド:この傷に効く薬はあるか?


 ミレイ:虫人用の傷薬ですね。少々お待ちください、直ぐに調合します。


 蓮:ずびばぜん。エルフ用の風邪薬ってありますか?


 ミレイ:まあ、大変!そちらも直ぐにご用意します!あ、これあの子の忘れ物。どうしよう・・・ん?これは・・・


 オーシャンリーフホテルのパンフレットを見るミレイ


 ミレイ:確かホテルに戻るって言ってたわね。後で届けてあげよう♪


 20分後


 ミレイ:お待たせしました。こちらが傷薬で、こちらが風邪薬です。


 レイド:仕事が早いな。助かるぜ♪


 蓮:早く届けてあげて。ソレ、大事なものだと思うよ♪


 ミレイ:はい!


『出掛けております』


 ミレイ:これで良し!ここからだとあのトランスゲートを使った方が早いわね♪


 一方オーシャンリーフホテル


 ミシェル:お薬飲んだしご飯食べれるっスか?


 リタ:うん。


 小雪:ならオラのでばんだべ!


 杏:こゆきちゃん、おりょうりできるですか?


 小雪:まかせるだ!


 雛:こゆきちゃんのつくるごはんはおいしいどしゅえ〜♪


 ミシェル:へぇ〜。


 リタ:リタ、こゆきちゃんのごはんたべたい♪


 小雪:よおし!まかせるべ♪


 中央のモニターに映るフロント


 フロント:お客様に忘れ物を届けに来ている方がおりますが如何致しますか?


 ミシェル:忘れ物?


 フロント:街の薬屋さんのミレイと言えばわかると申しておりますが。


 ミシェル:あ〜!わかったっス。部屋に通してくださいっス♪


 フロント:畏まりました。


 部屋内のトランスゲートに転移するミレイ


 ミレイ:お邪魔しま〜す。はいリタちゃん。忘れ物♪


 リタ:あ!パパとママのしゃしん!おねえちゃんありがと〜♪


 ミレイ:フフッ、どういたしまして♪・・・あら?あなた達料理するの?子供達だけじゃ危ないし、私も手伝うわ♪


 小雪:たすかるべぇ♪


 ミレイ:それで何を作りたいの?


 小雪:びょうにんさんのていばん『おかゆ』だべ♪


 ミレイ:お粥?


 リタ:おかゆって?


 ミシェル:実際食べた事ないんっスけど、日本版リゾットって事っスよ。


 リタ:たべる〜♪


 小雪:レッツクッキ〜ング♪


 杏&雛:クッキ〜ング♪


 小雪:まずはどなべにごはんとおみずヒタヒタワンカップとだしのもといれるべ。ふつふつとしたら〜、ひをよわめてふたして5ふん!


 杏&雛:ふむふむ


 小雪:そのあいだに〜、ときたまごつくるべ。ミレイおねえちゃんはだいこんのはっぱあらってきざんでほしいべ♪


 ミレイ:は〜い♪


 ミシェル:随分と本格的っスね。


 小雪:ふたとって〜、ときたまごまわしかけてさっきのあらってきざんだだいこんのはっぱをのせてふたしてむらしたらできあがりだべぇ♪


 おもむろに子供用包丁を見るミシェル


 ミシェル:銘が『備前長船』ってあるっス。


 小雪:ばっちゃがおりょうりセット買ってくれたべ♪


 ユキ:小雪様のお母様からは小雪様の料理セットは全てオーダーメイドであると聞き及んでおります。


 ミシェル:備前長船のオーダーメイドって、小雪ちゃんのお婆ちゃんは何者っスか。


 小雪:さ、リタちゃんにたべてもらうまえにあじみだべ。


 スプーン一杯ずつ食べる一同


 ミシェル:美味っ!


 杏:こゆきちゃんおりょうりじょうずです♪


 雛:ウチのいうたとおりやろ♪


 ミレイ:お米って魔界でその存在を初めて知って生まれて初めて食べるけど、凄く美味しい♪これをこんな小さな子が作れるなんて!


 ミシェル:多分小雪ちゃんの才能だと思う。


 小雪:さ、リタちゃん♪


 卵粥を食べるリタ


 リタ:・・・・おいしい♡


 小雪:えがった♡あと、イチゴ。ビタミンもとるべ♪


 リタ:うん!


 ミレイ:じゃ、私はこれで。


 リタ:ミレイおねえちゃん。


 ミレイ:ん?


 リタ:ありがとう♪


 ミレイ:はぁい♪






























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