第351話常闇の怪盗

 アオイ:成り行きが重なり国営農場に行く事になった杏ちゃん達。そこに一通の予告状が届きます。その怪盗とは・・・


 魔界時間12:00 地獄界 妖魔銀行本店頭取室


 善景:『200年ぶりに復活か』・・・200年の沈黙を破り再び動きますか。


 アオイ:この方は魔界宇宙4大メガバンクの一角で地獄界の金融界を支配する妖魔銀行頭取の朝倉善景あさくらよしかげさん。種族はバンパイア族です。


 秘書:頭取の指示通りシーラント支店の『彼』を見張っておりますが、良いのですか?


 善景:というと?


 秘書:彼が例の怪盗となれば、犯罪者をかくま擁護ようごしたとしてマスコミの知るところとなり当行の信用問題に関わります。


 善景:だが不法侵入と器物損壊だけで盗まれたという実害はないのでしょう?


 秘書:え、ええ。


 善景:なら問題ありません。万が一の時は私が全責任を負います。貴女方は心配しなくてもいいですよ♪


 秘書:そんな!何故頭取だけが責任を負わないといけないんですか‼︎


 善景:強いて言えば『200年前の贖罪しょくざい』といったところですかな。


 秘書:何かお飲みになりますか?


 善景:ではトマトジュースを頂こう♪


 同時刻 シーラント諸島連合国首都トワイライト島 妖魔銀行シーラント支店


 ケイン:(こんなところか)


 支店長:頑張るねぇ、天里君。


 ケイン:支店長!


 アオイ:この方はケイン・Y・天里あまりさん。種族は烏天狗。ワイバニア芸術文化大学の経済学部を首席で卒業したエリート行員です。


 支店長:例の国営農場への融資の件、稟議が通ったんだ。


 ケイン:本当ですか⁉︎


 支店長:ああ、カントリア王国からの申し出があってね。あの農場で餌に使ってる果物を教える代わりにカールトンの幼体を寄贈すると言ってきたらしいのだ。


 ケイン:魔界宇宙の食の至宝、魔界宇宙3大珍味の1つカールトンを寄贈するなんて流石農林水産超大国。太っ腹ですね。


 支店長:そこで君に農場へ赴き融資の話を前向きに進めてくれ。


 ケイン:わかりました(フフフ、次の『ターゲット』は決まったな)


 1時間後 シーラント諸島連合国国営農場


 オーナー:うう、緊張してきた。


 従業員:オーナー!大変です!


 オーナー:何だ!ビックリするだろう。


 従業員:と、兎に角コレ見てください!


 オーナー:ん?手紙?・・・・こ、これは!大変だ、直ぐに警察呼びなさい!


 従業員:で、ですが。カントリア王国からの特使の方は如何致しましょう?


 オーナー:警察の方は私、特使の方は君での同時進行でやる、兎に角通報しなさい!


 従業員:わ、わかりました!


 ケイン:すみませ〜ん。妖魔銀行の者ですが・・・お取り込み中ですか?


 オーナー:これはこれは、今日は如何致しました?


 ケイン:例の融資の件、稟議が通ったのでお話をしに来たのですが。


 オーナー:なんてこった!こんな時に。


 ケイン:出直しましょうか?


 オーナー:ちょ、ちょっ待ってください!お話を伺いましょう!


 ケイン:え?良いんですか?


 オーナー:あまり時間はありませんが。


 ケイン:まぁ、今日は必要書類に判子とサインを頂くだけですので。


 オーナー:そ、そうですか。では早速・・・


 10分後・・・


 ケイン:・・・はい、確かに。では詳しいお話は後日という事ですので詳しい日時は後ほどご連絡させていただきます。


 オーナー:わざわざありがとうございました。


 ケイン:それはそうと、聞けば稟議が通った1番の理由はカールトンの幼体が寄贈されたとか。


 オーナー:そうなんですよ!カントリア王国国家最重要特別天然記念物に指定されてる巨獣キングカールトンの眷属カールトンの幼体となれば幼体の内はマスコットとして物凄い人気があり、大人になれば巨万の富を生むのですからそれが決め手となったんでしょう♪


 ケイン:そのようですな(魔界宇宙の生きた至宝。それを私が頂くんだからな)


 オーナー:どう・・・されました?


 ケイン:え?あぁ、なんでもありません。ところでその幼体は何処に?


 オーナー:あの小屋がそうです。成体になるまでの間に新たに専用の飼育場を建設予定です。


 ケイン:そうですか、では私はこれで。


 オーナー:ご苦労様でした。


 トランスゲートで銀行へ戻るケイン


 千夜:ん?あれ天里・・・君?


 蓮:千夜?


 千夜:え?あ〜、うん。何でもない(きっと気のせいね)


 従業員:お待ちしておりました。千夜ファームの千夜・綾上さんですね?


 千夜:はい。


 従業員:ではこちらへ・・・っとそちらの方々は?


 千夜:友人と・・・


 杏:あんずです!


 小雪:こゆきだべ!


 リタ:リタ・・・ヌルマユ。


 雛:おばんどしゅ〜。ウチはヒナいいますぇ。


 カマル:ボクはカマルです。


 豆子:アン、ア〜ン♪


 小雪:このこはまめこだべ♪


 マル:ピピィ♪


 杏:このこはマルです!


 ミシェル:ども、保護者のミシェル・ウスバッタっス。


 千夜:だいぶ賑やかになりますが、大丈夫でしょうか?


 従業員:ええ、大丈夫ですよ♪さ、皆さんこちらですよ。


 カールス飼育場


 カールス:フモォ〜!


 杏:ふおー!だいごろうのおともだちがいっぱいです!


 大五郎?:プンモォ〜♪


 ミシェル:まさかと思うっスけど、大五郎ってその仔の事っスか?


 杏:あい!


 命名『大五郎』


 杏:みんなできめたです。ね〜♪


 ちびっ子達:ね〜♪


 ミシェル:すみませんっス勝手に。


 従業員:良いんですよ、むしろ名前を付けてくれて助かりました♪


 千夜:それで、この国のカールスに食べさせてる果物ですが・・・


 従業員:それはクロノマンゴーですよ。


 千夜:クロノマンゴーですかぁ。それは毎食与えてるのですか?


 従業員:いえ、決まった時間のみオヤツとして与えてます。あとトコナッツミルクも飲ませてます。


 千夜:トコナッツミルクもですか。


 従業員:ええ。


 千夜:一頭辺り何個くらいですか?


 従業員:クロノマンゴー自体が糖度が高く、栄養価も高いので1日一頭辺り2個までです。


 千夜:クロノマンゴーとトコナッツは我が国でも栽培可能ですか?


 従業員:千夜さんが来る前に送ってくださったカントリア王国の資料ですと、クロノマンゴーは可能ですが、貴国の気候ではトコナッツは無理ですね。


 千夜:そうですか・・・


 従業員:トコナッツは無理ですが、トコナッツに1番近い『シュガールナッツ』でしたら可能です。なんでしたらクロノマンゴーとシュガールナッツの苗を送りましょうか?


 千夜:本当ですか⁉︎ありがとうございます!それで試してみます♪


 そわそわする蓮


 蓮:あ、あのぉ〜。ここでカールスのミルクで作ったスイーツが食べられると聞いたのですが。君達も食べたいよね?


 ちびっ子達:お・や・つ!お・や・つ!


 千夜:はぁ、さっきからソワソワしてると思ったら。


 従業員:フフッ、それじゃあご案内します♪


 ちびっ子達:わ〜い♪


 20分後・・・


 小雪:おいしかったべぇ♡


 リタ:フワフワのあまあまでトロトロだったねぇ♡


 杏:う?


 雛:どないしたん?


 杏:あれ、シエルおねえちゃん?


 リタ:ほんとだ!


 シエルに駆け寄るリタ


 リタ:シエルおねえちゃ〜ん!


 シエル:リタちゃん⁉︎どうしてここに?


 アオイ:この方は朝唯あさただコンツェルン総帥のシエル・朝唯さん。かつて4界宇宙境界エリアに迷い込んだリタちゃんを苛めた天使からミシェルさんと一緒に守った人です。


 これまでの経緯を説明するミシェル


 シエル:そうだったんだ。


 ミシェル:それはそうとシエルは何してるっスか?


 シエル:ここにすっごく美味しいチーズがあるからワインに良いかなぁって。


 リタ:ムー!またおさけ〜?リタおさけキライっていったでしょ。


 シエル:うぅ。


 頭を優しく撫でるミシェル


 ミシェル:リタちゃん。リタちゃんは大好きなお菓子を嫌いだから食べちゃ駄目って言われると嫌っスよね?


 リタ:・・・・うん。


 ミシェル:それと一緒っスよ。まぁ、シエルの場合は飲み過ぎるトコがあるっスけど。


 シエル:うっ。


 ミシェル:だからあんまり厳しく言わないであげよう・・・ね?


 リタ:・・・うん。シエルおねえちゃんごめんなさい。


 シエル:ううん。良いのよ♪じゃ、私そろそろ行くから。


 ミシェル:ほ〜い。


 オーナー執務室前


 千夜:警察?何かあったのですか?


 従業員:実は貴女方が来る前に予告状が届きまして。


 千夜:予告状?


 従業員:その内容が・・・


『今宵生きた至宝を頂きに参上する 怪盗アマヤドリ』


 ミシェル:怪盗アマヤドリ・・・どっかで聞いたような。


 リタ:リタしってる!ミシェルおねえちゃんのデータのなかにあったよ。あめのふるよるにあらわれて、あめのやむころにはぬすまれる。そのようすがあまやどりににてるからでしょ♪


 ミシェル:リタちゃんまた私のデバイスのデータベース覗いたんスね。毎回パスワード当てて。ホント凄い子っス。


 蓮:確か怪盗アマヤドリって200年前にプッツリ姿を消したんじゃなかったっけ?


 千夜:でも最近復活したってニュースでやってたよ。でも何か違うのよね。


 蓮:違う?


 千夜:伝説の怪盗らしからぬというか、なんていうか、200年ぶりに現れた怪盗アマヤドリは最近まで『一度も盗みに成功していない』のよね。


 ミシェル:私もそこが引っ掛かってたっス。200年前の怪盗アマヤドリは100%の成功率を叩き出した天才怪盗なのに、最近じゃ成功率0%。でも一回も捕まらないのは健在だけど。


 蓮:何か刑事さんが慌ててる。


 オーナー執務室に入る


 従業員:何かあったんですか?


 オーナー:この農場のトランスゲートが突然動かなくなったんだ!


 蓮:え⁉︎


 オーナー:原因は中継基地の停電らしい。


 従業員:復旧にどれくらいかかるのですか?


 オーナー:明日の朝だ。


 蓮:良かったぁ!明日の夕方だったらアウトだったよ。


 従業員:お客様方は如何致しましょう?


 オーナー:宿泊所にお泊りいただいてくれ。


 従業員:わかりました。


 杏:おとまり〜?


 小雪:だいごろうとおとまりー!


 リタ:おとまりワクワク♪


 雛:おとまりやぁ♪


 ちびっ子達:わーい♪


 ミシェル:あ、コラ!待つっス!走っちゃ危ないっスよー!


 大五郎の小屋


 大五郎:プンモォ〜♪


 杏:今日はだいごろうとおとまりです!


 大五郎:プモッ!プンモォ〜♡


 小雪:みんなでねんねするべ♪


 リタ:おとまりだよ〜♪


 雛:だいごろう、フカフカのモフモフやわぁ♡


 突如真っ暗になる


 ミシェル:やっと見つけたって、何事っスか⁉︎


 小屋の屋根にスポットライトが当たる


 謎の声:フハハハハ!


 蓮:誰⁉︎・・・って誰もいない?


 謎の声:うお!出てくる所を間違えた・・・とう!


 壁に豪快に激突する


 謎の声:イッテテテ・・・・諸君!私が怪盗アマヤドリだ!


 蓮:何事も無かったかの様に進めてる。てか天里君でしょアンタ。


 アマヤドリ:違う!私は怪盗アマヤドリだ!


 千夜:懐かしいわね〜、高校時代いつも蓮と全国模試で競ってたっけ。


 蓮:そうそう!私が全国1位で天里君が毎回2位でさ〜♪


 千夜:その時のお決まりの台詞が・・・


 蓮&千夜:『これで勝ったと思うなよー!』


 蓮:そうそう、そうだったわ♪


 アマヤドリ:お前等!勝手に盛り上がるな!


 千夜:それはそうと天里君、何で大五郎なんて盗もうとするの?結構重いよこの仔。


 大五郎:プンモォ〜♪


 アマヤドリ:だ〜か〜ら!ア・マ・ヤ・ド・リだ!フン!それくらい知ってる。そのためのこのパワーハンドだ♪


 蓮:あ、なぁる。


 アマヤドリ:最大1トンまで軽々と持てる手袋だ♪


 千夜:水差すようで悪いけど、この仔の体重550トンよ。


 アマヤドリ:・・・・・・え?


 蓮:呆れた、カールトンの幼体の平均体重500トンって知らなかったの?


 大五郎:プンモォ〜♪


 ちびっ子達:プンモォ〜♪


 アマヤドリ:クッ!今日のところはこれで勘弁してやる!これで勝ったと思うなよ!・・・とう!


 屋根から裏へ飛び降り盛大に落ちる


 アマヤドリ:ぐえ!


 刑事:裏へ降りたぞ!総員・・・かかれ!


 千夜:『降りた』というより『落ちた』だと思うけど。


 警官:刑事!


 刑事:どうした。


 警官:奴がいません!


 刑事:な⁉︎


 蓮:逃走率100%かぁ。てか、最後の『これで勝ったと思うなよ!』ってまんま天里君じゃん。


 千夜:何でアマヤドリが天里君ってわかったの?最後の台詞抜きにして。


 蓮:ケイン・Y・天里、これを全部カタカナにするとケイン・ヤード・アマリこれから『ヤ』『ド』『ア』『マ』『リ』これを並び替えると?


 千夜:アマヤドリかぁ。


 蓮:さ、寝ましょ。


 ミシェル:皆んなも寝るっスよ〜。


 ちびっ子達:あ〜い♪


 大五郎:プンモォ〜♪





















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