第339話色彩の清姫

 アオイ:色、古今東西どの世界にもあるものですね。色がないと味気なく、色があると味わい深くなりますね。今回はそんな色にまつわる1人の塗料メーカーの社長さんのお話です。


 魔界時間16:00 シーラント諸島連合国首都圏トワイライト島


 カラーリーフグループ本社 新社屋


 常務:あ、社長見なかった?もう直ぐ会議の時間なんだけど。


 秘書:社長ならいませんよ。


 常務:いない?何処行ったのよ。


 秘書:そ、それが・・・


 常務:はあ?リンネ島に行った⁉︎彼処は連合国政府から降魔日食による時空嵐の影響下にあるから立ち入り禁止令が出てたって言ってたでしょう!何でお止めしなかったの!


 秘書:私は何度もお止めしました!でも『お婆さんの願いを叶えるためには、あの色を出すにはどうしてもリンネ島にしか自生していないクロノリオンしかないの!』と言って聞かないんですよ。


 1週間前 トワイライト島総合病院


 依頼人:私はリンネ島で生まれ育ち、造園業をしていた亡き夫と2人で暮らしてきたの。降魔日食が近づくにつれて年々時空嵐も酷くなり政府からとうとう離島命令が出て想い出の詰まったあの家を出て行くことになったわ。


 清姫族の女性:あの花は・・・クロノリオンですね。


 依頼人:あら、よく知ってるわね♪そうよ。主人が若い頃に私にプロポーズする時に指輪と一緒にプレゼントしてくれたの。私の願いはこの花と同じ色の部屋で余生を過ごしたいの。老い先短い私の願い、聞いてくれますか?


 清姫族の女性:必ず叶えてみせますよ!


 依頼人:ありがとう・・・


 そして現在・・・


 常務:『どんな小さな儲けにもならない依頼でも全力でお客様に寄り添う仕事をする。一切の手を抜く事はせず、社運を賭けよ』社長のこの経営理念があるからこそ魔界宇宙第3位の塗料メーカーにまで成長する事が出来た・・・か。


 秘書:ええ。


 常務:あーー!もぉ!・・・・役員達には私の方で何とかしましょう。


 秘書:私もサポートします♪


 常務:助かるよ♪


 同時刻リンネ島南東部 農林水産エリア 『クロックス農園』


 清姫族の女性:あった!クロノリオン・・・やっぱり、降魔日食の影響で殆どの花がつぼみのままだ。


 エリカ:例の遺跡はこっちからの方が近いのよね?


 アオイ:この方は巨獣保護チーム『ビーストガーディアンズ』のメンバーで魔法担当のダークエルフ族でエリカ・カズクラフトさん。本職は魔界宇宙で4人の金融界の支配者の1人で黒燿銀行こくようぎんこうの頭取さんです。


 オリビア:ええ。この先の・・・あら?彼処に誰かいる?


 アオイ:こちらはビーストガーディアンズのリーダーで巨獣専門医のオリビア・火乃酉さんです。


 エリカ:あの後ろ姿ってもしかして黒崎さん⁉︎


 清姫族の女性に駆け寄るエリカ


 エリカ:やっぱりそうだ!


 光:カズクラフト頭取⁉︎


 アオイ:それでは改めてご紹介します。こちらは魔界宇宙第3位の塗料メーカー『カラーリーフグループ』の社長で清姫族の黒崎光くろさきこうさん。小さな子供の依頼でも社運を賭けて取り組むほどお客様に寄り添う経営理念を持った凄い社長さんです。


 エリカ:ここは今危険区域に指定されて私達調査チーム以外の関係者は立ち入り禁止になってる筈よ。


 光:実は・・・


 入院中の依頼人のお婆さんと事話す光


 エリカ:そうだったんですね。やはり私が見込んだ女性ひとです、融資して正解でした。だって、私の期待通りの事をしてるんですもの♪


 オリビア:でも流石に見つかったらマズイんじゃ・・・


 圭:塗料メーカーなら色の専門家という事だろう?


 アオイ:彼女は主人公のアリス・シルフィード女王様から直々にリンネ島遺跡調査の全権を任された王立科学研究所時空工学最高責任者の磨墨圭ますみけい博士。


 圭:実はこの島の遺跡の文献が経年劣化で色が薄れて正確な色のわからない部分がある。これを復元出来るか?


 光:印刷業者さんと要相談になりますが、出来ると思いますよ。


 圭:なら『関係者』だな。


 光:え?


 圭:色のついた文献は正確な色がわからないと当時の様子を知る事が出来ない場合がある。よって貴女は専門家としてここにいる。これはその色を再現するべく原料の調査という事だ♪


 エリカ:アンタも随分粋な事するわね♪


 光:あ、ありがとうございます!これでお婆さんの願いが叶えられる!


 圭:因みにこの文献の色の原料の特定は可能か?


 光:それなら簡単です。その文献に使われてる色の原料はこの花、クロノリオンですよ。ただ・・・


 圭:ただ?


 光:この文献の色を復元するにも、お婆さんの願いを叶えるのもこの状態では駄目です。先ずは避難したこの島の専門の職人さんに来てもらわないと。それがさっき言った印刷業者さんなんです。


 圭:わかった。ではそっちはお任せしてもいいかな?


 光:勿論!助けていただいたお礼に協力しますよ♪








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る