第296話王国音楽フェス

 アオイ:1日がかりでリハーサルを終えた前日。開催は今夜。その最終リハーサルであの巨獣が動き出しました。真に心に響く歌にしか興味を示さないビバロン王国伝説の巨獣シンフォニードラグネア。一体誰の歌に反応したのでしょうか?


 魔界時間10:00 ビバロン王国最北端 湯楽湖ゆらくこ


 湯楽湖から姿を現すシンフォニードラグネア


 管理人:これが伝説の巨獣シンフォニードラグネア。なんて大きさだ!


 オリビア:姿を現したわね!


 晃斗:ああ。流石は全長5000万m級のドラゴン種の巨獣。全長500万m級の双流鯉とは比べ物にならない大きさだ。


 湯楽湖上空 ビバロン王国空軍偵察機


 パイロット:こちらグリフィン1。シンフォニードラグネアを目視で確認!


 ビバロン王国軍政省


 ブートン:動く気配ないか?


 パイロット:ハッ!現在音楽フェス会場の方を一点に見つめたまま動く気配はありません。


 湯楽湖 地上


 晃斗:動かないな。


 オリビア:多分彼のおめがねに叶う歌声の持ち主が歌い始めるのを待ってるのかも。


 晃斗:ここでじっとして聴いていればいいのだが。


 オリビア:この国の文献によると彼は無類の音楽好きっていうらしいから多分じっとしてられないかも。


 晃斗:この巨体で動かれたらそれこそ歩く大災害だぞ。・・・ん?アレは・・・羽か?羽なら飛べるのではないのか?


 オリビア:残念ながらアレは羽じゃないわ私達で言うところの耳よ。彼はあそこから聴きたい歌をどんな遠く小さい音でも拾えるようにしてるの。


 晃斗:いずれにせよ奴の進行方向には湯楽湖エリアを統治するユラク伯爵の城下町や伯爵領の街や村がある。多くの住人に被害が及ぶ。


 オリビア:・・・・・・・


 晃斗:どうした?


 オリビア:彼の様子がおかしいわ。


 時折辺りを見回し両翼耳を前へ動かすシンフォニードラグネア


 オリビア:あの耳の動き・・・そうか!彼、鼓膜に何かしらの異常があって聴き取りづらいんだわ!


 晃斗:だとしたらマズイな。


 オリビア:ええ。ちょっとした歌声が聴こえただけで湖を出て動きかねないわ!


 再び軍政省


 パイロット:タカギ大臣閣下。地上に獣医の火乃酉様と護衛の鷹橋様がおります!


 チョウスケ:何⁉︎出国していなかったのか。これは奇跡だ!


 ブートン:直ぐに緊急回線で繋げろ!


 オペレーター:ハッ!


 チョウスケ:火乃酉殿!


 オリビア:陛下!丁度こちらからお話したいと思っていたところです!


 チョウスケ:シンフォニードラグネアの事だが。そちらで何か気付いた事はないか?


 オリビア:はい。どうやら彼の鼓膜に何か異常があるようです。このままだと彼のおめがねに叶った歌い手が歌った途端動きだしかねない状況です!


 同時刻 音楽フェス会場


 スタッフ:それでは次にナナさ〜ん。ナナさんの最終リハーサルお願いしま〜す!


 ナナ:は、はーい!


 再び湯楽湖


 ナナの声が聞こえた途端突然前のめりになって湖を出ようとするシンフォニードラグネア


 晃斗:おい!動きだしたぞ!


 オリビア:マズイわ。晃斗!


 晃斗:緊急オペだな!


 オリビア:ええ。先ずは戦闘機で巨獣専用麻酔をかけて動きを止めてもらうから、鼓膜異常の原因を晃斗に『駆逐』してほしいの!


 晃斗:鼓膜異常の原因の駆逐?


 オリビア:行けばわかる!陛下!


 軍政省


 チョウスケ:我が国に手伝える事があるのか?


 オリビア:はい。今から巨獣専用麻酔を転送するので戦闘機の注射型ミサイルで彼に打ち込んでください!


 チョウスケ:承知した!ブートン!


 ブートン:あいよ!


 湯楽湖上空 シンフォニードラグネア頭上


 戦闘機パイロット:さあ。おやすみの時間だぜ!


 シンフォニードラグネアの首に巨獣専用麻酔を打ち込む


 オリビア:行くわよ!


 晃斗:応!


 シンフォニードラグネア両翼耳左側鼓膜前


 晃斗:・・・コイツは!ノコギリタガメ⁉︎なんて大きさだ。


 オリビア:頼んだわよ!


 晃斗:それは良いが、右側にもいるんだろう?


 オリビア:大丈夫。右側には心強い『助っ人』を呼んであるから私達は心置きなくこっちに集中出来るってわけ♪


 両翼耳右側鼓膜前


 カリン:全く。オリビアも急に呼び出して何かと思えば・・・


 助手:それでは姫様。お願いします。


 杏:あい!さあマル、こんどはデザートのでっかいムシさんですよ♪


 マル:ピィーーー♡


 両翼耳左側


 晃斗:成る程、巨大昆虫達の天敵オーロラフェニックスの雛鳥か。しかも特大の♪


 オリビア:さあ!音楽フェスまで時間がないわ。いくわよ!


 愛刀『牙狼景光』を構える晃斗


 晃斗:応!


 3時間後全快するシンフォニードラグネア


 杏:ほわ〜。ドラゴンさん嬉しそうです♪


 マル:ピィ♪


 アオイ:オリビアさん達の活躍のお陰で音楽フェスは無事開催され、多くの名だたるアーティストが歌い、ナナさんの出番となりました。


 ナナが歌い始めた途端両翼耳を大きく広げるシンフォニードラグネア


 オリビア:この子か。彼がお気に召した歌い手は。


 ハル:姫様。皆様がお待ちです。さ、私の背にお乗りください。


 杏:あい!


 音楽フェス会場


 杏:おまたせです♪


 ミシェル:皆んな歌上手っスね〜♪


 リタ:あのおねえちゃんのおうた・・・きれい♡


 小雪:こういうのをききほれるっておっかあがいってたべ♪


 ステージ脇の控え室


 リディア:過去1000万年姿を現さなかったシンフォニードラグネアを動かすほどかぁ。やっぱり私の目に狂いはなかったようね♪



















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