第255話閻魔裁判

 アオイ:う〜ん。国土争奪戦争、明日開戦なんだけど大丈夫なのかな〜。っと、お仕事お仕事!今回は地獄界の裁判の様子をお届けします。4界警のサトウ警部の下に着任した新米警部補と、魔界宇宙法曹界の『剣』と『盾』この双璧ともいうべき最強検事の1人のお話。


 魔界時間10:00 死霊裁判開廷


 閻魔大王:これより、死霊裁判を開廷します。被告人前へ。


 証言台に立つ神族の被告人


 閻魔大王:それでは被告人。名前と職業。そして種族を。


 ダニエル:ダニエル・カルロス。天界宇宙中央政府元上院議員。種族は福の神。


 小町:(私は小町・島猫しまねこ。地獄界の検事で種族は化け猫。今病欠の相棒の代わりにこの法廷に立っている。普段は事件の調査と証拠集めが専門なんだけど、ウチの相棒ときたら・・・)


 死霊裁判開廷1カ月前 地獄界 鬼面通り2丁目 マンション最上階 朝珠邸


 結衣:うぅ・・・・ちょ、調査資料に・・・・目を通さ・・・・


 豪快に倒れる結衣


 小町:あー!もう‼︎病人は病人らしくしてなって!


 アオイ:こちらの方は朝珠結衣あさたまゆい。種族は日照り神。魔界宇宙法曹界の『剣』の通り名を持ち、最近では天界宇宙中央政府の闇の根源とその一派を法廷で一掃した英雄。でも今は日照り神特有の病気『日照り熱』にかかって療養の真っ最中です。


 結衣:うぅ・・・でも今度の裁判の被告人は・・・・袋井耀蔵の懐刀だった奴よ。ほ、ほっとくわけにはいか・・・いかないじゃない!


 熱が上がる結衣


 小町:ほら興奮するから悪化したじゃない!それに。たまには相棒を頼れっての!


 結衣:そうね、アンタの情報収集能力と洞察力のお陰で袋井の奴を追い詰められたんだし。ここは素直にお願いしようかしら。


 小町:そうよ。それに今回の件には『強い助っ人』を呼んであるし♪


 結衣:・・・・助っ人?


 小町:4界警特権課(4界宇宙統合国際警察特別権力強制取締課4かいうちゅうとうごうこくさいけいさつとくべつけんりょくきょうせいとりしまりか)のサトウ警部とその助手。ヒロ・法師警部補よ♪


 結衣:え!あの『タイムロード王国の英雄』ゲン・サトウ警部⁉︎


 小町:そうよ。これ以上にない助っ人でしょ?


 結衣:そうね。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ。


 小町:ハイハイ。荷物はまとめといたからとっとと病院行って早く治してくる!相棒のアンタが元気になってくれなきゃこっちが困るんだからね♪


 結衣:流石、魔界宇宙法曹界の『盾』ね。完璧なサポートだわ♡だから安心して背中を預けられる♪


 顔を真っ赤にして言う小町


 小町:は、恥ずかしい事言ってないでとっとと病院行けーーー‼︎


 30分後 喫茶『ピュアミント』


 小町:ふぅ。まったく・・・恥ずかしいったらない。


 ゲン:待たせたにゃ。


 アオイ:こちらは4界警特権課のゲン・サトウ警部。種族は猫神様。特権課一の敏腕警部にして特権課の最古参で愛称は『おやっさん』です♪


 ヒロ:小町!久し振り♪


 アオイ:こちらの長身のお姉さんはヒロ・法師警部補。種族は犬の獣人族。顔はどちらかと言うと人に近く犬耳のお姉さんですね♪


 ゲン:ヒロ。あまり大きな声だすにゃ。こういう小洒落た喫茶店じゃ静かにするモンにゃよ。で。今回の事件にゃが。


 小町:はい。


 手持ちのデバイスから投影する小町


 小町:被告人の名はダニエル・カルロス。天界宇宙中央政府の元上院議員。先の4界宇宙大法廷で裁かれた天界宇宙中央政府汚職事件の主犯格反魔党の元代表で布袋族の袋井耀蔵ふくろいようぞうの懐刀と言われた男です。


 ヒロ:死霊裁判で被告人として出廷するって事は・・・


 ゲン:奴ぁ、死んだって事だにゃ。


 小町:はい。天界の住人は天界では不老不死ですが、いざ天界宇宙を離れると歳はとらない代わりに平等に死が訪れます。今回の死因は逃亡先の人界での『事故死』となっています。


 ゲン:・・・・・・・ううむ。


 ヒロ:おやっさん。何か引っかかる事でも?


 ゲン:あぁ。奴は逃亡先を何故『わざわざ人界に選んだか』ってトコがにゃ。人界だと閻魔大帝様の持つ閻魔帳で直ぐに居場所が割れる。


 ヒロ:確かに。逃亡するなら同じ天界の方が良いのに。彼処だと探れない閻魔帳のー唯一の弱点なのに。


 ゲン:危険を冒してでも行かねばならにゃい『何か』があるって事だにゃ。検事さんよ。


 小町:はい、何でしょう?


 ゲン:奴が人界のどの次元の宇宙の惑星に潜伏してたか知ってるかにゃ?


 小町:それなら閻魔庁から聞いています。確か・・・


 デバイスからファイルを検索する小町


 小町:・・・・あった!異界No.06の宇宙で・・・太陽系第3惑星の地球です。場所は・・・北極圏です。


 ヒロ:なんだってそんなトコに?


 ゲン:さてね。ま、行ってみりゃ分かるって事にゃ。


 ヒロ:行くは良いですけど、大丈夫ですか?私は寒いの平気ですけど。ほら、猫神族でしかもお年でしょ?


 ゲン:馬鹿言うんじゃにゃい!まだまだ現役だ!年寄り扱いするんじゃにゃい!


 ヒロ:ハ、ハイーーー‼︎


 3時間後 人界時間 20:00 異界No.06 地球北極圏


 小町:さ、さむーーーい!


 ゲン:なにもアンタまで付いて来る事ぁにゃいだろ。


 ヒロ:小町は昔から自分が気になった事はじの目で確かめないと気が済まないんですよ。


 ゲン:さあて・・・・ここかぁ。


 特殊光学迷彩を解くゲン


 ヒロ:本当にありましたね。


 ゲン:まさか天界の神気を使った光学迷彩で覆うとはにゃ。


 ヒロ:閻魔大帝様の閻魔帳でも見付けにくくなるわけですね。


 ゲン:さてさて、何が出るやら。


 小町:行きましょう!


 別荘を捜索する3人


 ゲン:それにしても誰の別荘だにゃ?人界のシングルナンバーっていやあ入界禁止区域だろ?


 ヒロ:4界国際法でカオス濃度が特別濃い危険宙域だから入界禁止区域に指定してるんだすよね?


 小町:獣王界の精霊学者、ヘルハウンド族のアルフレッド・D・バウンズ博士が発見したエネルギー物質のお陰でこうして安全にシングルナンバーに入界出来ているわけですが。


 ゲン:おそらくそれ以前に奴等はそのエネルギー物質を先に見付けた。だからこんな危険宙域の特にカオス濃度の濃いこの地球に別荘を建てられたってトコだろうにゃ。


 2階から呼ぶヒロ


 ヒロ:おやっさん!


 ゲン:何か見付かったかにゃ?


 2階の書斎に入る2人


 小町:これは!


 ゲン:ここが『本当の殺神現場』だにゃ。


 ヒロ:じゃあカルロス氏を殺害した犯人はここで殺したって事でしょうか?


 ゲン:そうにゃ。天族は天界で殺す事は出来ねぇからにゃ。だが人界なら可能にゃ。


 資料を持って再び入室する小町


 小町:私達より先にここを突き止めこれを見付けた殺神犯はここでコレを見付けた時に被告人と遭遇し殺害したといったところでしょう。


 ゲン:何々?『ピュアマテリアルとカオスとの関連性』何にゃ?ピュアマテリアルってのは。


 小町:それがバウンズ博士の発見したエネルギー物質です。これは4界宇宙で唯一感染型精神汚染物質カオスを死滅させる抗体を持っているのです。


 ゲン:成る程、これが世に出れば袋井一派にとって計画の妨げになる代物だからここに隠した・・・か。


 ヒロ:おやっさん!


 一枚の写真を見せるヒロ


 小町:え⁉︎


 ゲン:成る程にゃ。コイツが殺神事件の犯人か。そしてこの部屋は・・・



 そして現在・・・


 閻魔大王:それでは検察官。事件の説明を。


 小町:はい。事件は2カ月前のカルロス邸で起きました。被害者兼被告人は屋敷の主人、ダニエル・カルロス元上院議員。被告人の容疑は逃亡罪並びに隠蔽罪。天界検察庁の家宅捜査の前に『何か』を持ち出し逃亡を図ろうとした際何者かによって殺害されました。


 閻魔大王:成る程、それで『被害者兼被告人』ですか。


 小町:はい。


 閻魔大王:して。殺神事件の容疑者は?


 小町:容疑者はカルロス邸使用人イリア・ルークベルク。種族はヴァンパイア。性別は女性。凶器は護身用に持っていたナイフです。


 カルロス:(フッ。ここまでは想定内♪)


 閻魔大王:殺害現場はカルロス氏の書斎・・・と天界検察庁からの捜査報告書にありますね。


 小町:はい。ですがここで大きな『矛盾』が生じます。


 閻魔大王:矛盾?


 小町:はい。天界宇宙全体は天界宇宙最高権力者である天界大帝様の加護で『物理的な殺害は絶対不可能』なのです。


 閻魔大王:確かに。ではイリア嬢は容疑から外れると?


 弁護士:異議あり!容疑者は間違いなくイリア・ルークベルクです‼︎


 閻魔大王:弁護人、その根拠は?


 弁護士:容疑者が使用したナイフからは確かに『カルロス氏の血痕』が付着しておりました!これが天界宇宙国際警察科捜研からのDNA鑑定結果です‼︎


 鑑定結果に閻魔帳を向ける閻魔大王


 閻魔大王:確かにこの鑑定結果報告書には偽りはありません。本物です。


 小町:異議あり!誰が『容疑から外す』と言いました?


 弁護士:何⁉︎


 小町:『殺害現場がカルロス邸ではない』と言っているんですよ!


 閻魔大王:殺害現場が違う⁉︎


 小町:それについてはここで検察側は証人の召喚を要請します!


 閻魔大王:証人の召喚を許可します。


 閻魔の木槌で叩くと証言台に転移されるゲン


 ダニエル:(あ、アイツはゲン・サトウ警部!アイツ一体何を言うつもりだ⁉︎)


 閻魔大王:では証人。名前と職業と種族を。


 ゲン:ゲン・サトウ。4界警特権課警部。種族は猫神。


 閻魔大王:では証言を。


 ゲン:確かに血痕はカルロス氏のものだが、死亡推定時刻と遺体発見の『時間が一致しにゃい』


 閻魔大王:どういう事ですか?


 ゲン:遺体発見が殺害翌朝の8時なら死後6時間は経っている筈にゃ。だが遺体の経過した時間は『死後48時間』どう見積もっても勘定が合わにゃい。


 閻魔大王:・・・・たった今天界宇宙国際警察の科捜研から連絡がありました。サトウ警部の言う通り死後48時間だそうです。


 小町:加えて補足するとカルロス氏の遺体には『凍傷の痕』がありました。1年を通して温暖な天界宇宙で果たして凍傷などあり得るのでしょうか?いいえ。『あり得ません』


 閻魔大王:では検察官。カルロス氏の『本当の殺害現場』は何処ですか?


 小町:それは・・・・・異界No.06地球の北極圏です!


 法廷内が騒つく


 傍聴人A:どういう事だ?


 傍聴人B:確かに人界なら天族の殺害も可能だけど、なんだってそんな危険宙域に居たんだ?


 閻魔大王:静粛に!静粛に‼︎検察官、説明してくれますね?


 小町:はい。カルロス氏が本当に隠したかったのはそこに隠されていた『ある研究資料』です。


 閻魔大王:研究資料?


 小町:皆さんは『ピュアマテリアル』というのをご存知ですか?精霊学者アルフレッド・D・バウンズ博士が発見した物質でこれから抽出されたエネルギー物質で対カオスワクチンが精製出来るのです。その研究資料はバウンズ博士より先に発見した医学博士のものでした。


 傍聴人A:なんだって⁉︎


 傍聴人B:それじゃあ奴等は『知ってて公表しなかった』のか!


 閻魔大王:静粛に!で、その医学博士の名は?


 ダニエル:(マ、マズい!)


 小町:ロイド・ルークベルク博士。


 イリアを指差す小町


 小町:イリア・ルークベルクさん。貴女の祖父です!


 傍聴席が再び騒つく


 小町:今から120年前、天界で誘拐事件が発生しました。被害者は天界医学博士ロイド・ルークベルク博士。そして当時80歳(人界換算8歳)だった身寄りの無いイリアさんを使用人として引き取りました。それは『ある物』の場所の在り処を知ってたからです。


 閻魔大王:そ、それはまさか!


 小町:そう。バウンズ博士より先に発見したピュアマテリアルの隠し場所です!


 閻魔大王:つまり公にされては困る現物を処分。若しくは増産して証拠を絶対入界不可能なシングルナンバーの宇宙に隠せるようにしようと画策したですか?


 小町:彼等の目的は後者の方です。


 ダニエル:な、何を根拠にそういう事を言うのだ!


 閻魔大王:被告人は発言を控えなさい!


 小町:証拠はカルロス氏の別荘より発見されたこの写真です。


 そこに映る幼いイリアとロイド


 小町:これは貴方の『本当の殺害現場』にあった物です。そしてそこは同時にルークベルク博士殺害現場でもあるのです!


 閻魔大王:な、何ですと⁉︎


 ゲン:カルロス氏は120年前ルークベルク博士を拉致し、この北極圏の別荘で本格的な研究をさせ。口封じに殺害。そして2カ月前カルロス氏の専用機に紛れ込みその事実を知りカルロス氏を殺害したのにゃ。ヒロ。


 ヒロ:はい。島猫検事との合同捜査の後に4界警の鑑識チームと共に現場を調べた結果。ルークベルク博士の血痕も発見させました。死亡推定時刻は丁度80年前の今日です。


 愕然とするダニエル


 閻魔大王:それでは被告人前へ


 係官に担がれて証言台に立つダニエル


 閻魔大王:袋井耀蔵に加担しただけではなく、1人の尊き命を奪った罪。そして、カオスに苦しむ多くの人々を救うチャンスを遅らせた罪は天界の神にあるまじきものである!よって被告人を求刑通り『夢幻地獄送り』とする。


 ダニエル:・・・・終わった、何もかも。


 閻魔大王:続いてイリア・ルークベルク。


 イリア:はい。


 閻魔大王:復讐のためとはいえ殺神を犯すのは亡くなられたルークベルク博士は望んではいなかったでしょう。しかし、情状酌量の余地ありとみなし。イリア・ルークベルクを『懲役100年の刑』に処す。


 イリア:・・・・・え?


 閻魔大王:命を奪った罪は重い。しかしながら貴女も事件の『被害者』である事もまた事実です。服役して罪を償い綺麗な身になってお爺様に報告して下さい♪


 イリア:・・・・・・はい!


 翌日 地獄界総合病院


 結衣:そっか。それが事件の真相だったんだ。


 小町:まったく!元はと言えばアンタの不摂生の所為だからね!


 結衣:わかってるって。今度何か奢るから・・・ね?


 小町:もう!


 病室前


 ゲン:さ、俺達も帰るとするにゃ♪


 ヒロ:はい!あ。おやっさん。


 ゲン:ん?


 ヒロ:私も何か奢って下さいよ〜♪ホラ、頑張ったご褒美に♡


 ゲン:馬鹿言ってねぇでとっとと行くにゃ。


 ヒロ:あ〜ん!待って下さいよ〜!




























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