第240話花にかける想い

 アオイ:人間の皆さんはこの魔界に何人の人間が転移してきたかご存知ですか?今回は一輪の花に情熱を注いだ1人の錬金術師のお話です。


 魔界時間12:45 トレイント共和国首都ステーショナリア郊外霊園


 イザベラ:知り合いに会う用事があるからここに来るようにって言ってたけど。何処にいるのかしら?


 老悪魔:どなたかお探しで?


 イザベラ:貴方は・・・・


 アオイ:彼の名はトレイント共和国のトーマス・パンダクラフ副大統領。スティーブン・ティーゼル大統領の右腕であり、叔父でもある方ですね。


 トーマス:お参りしたい方がおりましてな。もしお時間がおありならば少しお付き合い願えませんかな?ヘルベルト帝国女帝イザベラ・ヘルベルト陛下。


 イザベラ:フフ。悪い人。知ってて声をかけたのですね♪


 霊園最奥 『慰霊の大樹』


 大樹の根元に咲く一輪の花


 トーマス:綺麗な花でしょう?


 イザベラ:ええ。


 トーマス:ここはかつて『ある人間の錬金術師』の屋敷があった場所なのですよ・・・そうですな。少し、昔話をしましょう。


 1000年前 旧フロール王国 北部 錬金術師 憂鬱太郎ゆううつたろう屋敷


 トーマス:今から1000年前、人界の地球、時代は中世のイギリスという国から転移して来た1人の人間の錬金術師がおりました・・・


 屋敷の花園で手入れする太郎のもとに尋ねて来る女性


 太郎:やあ。こんにちは。今日は天気が良い。花が良く育つし、おやつが美味しくなる上に昼寝に相応しい♪そう思わないかい?


 女性:そうね♪


 太郎:綺麗な花園だろう?自画自賛になるけど気に入ってるんだ。貴女はどうかな?


 女性:もし気に入らなかったらこうして通ってなんかないですよ♪それに貴方の花のお話。興味があるの。


 太郎:自慢話になってしまうが、つまらない話では無い事は確約するよ♪


 そして現在・・・


 トーマス:この女性というのが旧フロール王国の王女サンティア。後に第3代女王となる方です。彼はその後自身が追い求める『至高の一輪』の生成法を発見するも魔導錬金実験の折事故に遭い・・・


 イザベラ:亡くなった・・・


 トーマス:いえ。今もなお生きておりますよ。


 一輪の花を指すトーマス


 イザベラ:事故で自身が花となった・・・ですか。


 トーマス:サンティア姫は3日3晩哀しみました。ですが、この花が『永遠に枯れない花』と知ると。いつか元に戻す術があると信じて。女王即位後、ここを霊園にするよう命じたそうです。


 イザベラ:本当に戻す方法が無いのですか?


 トーマス:我が国の大学の考古学研究チームの調査によれば、彼の屋敷跡地から研究ノートが見付かったそうです。そこには万が一生き物が花になってしまった時の事を想定して元に戻す方法を記していたそうです。


 イザベラ:その方法とは?


 トーマス:『火鼠の皮の灰』です。残念ながら火鼠は天界宇宙の特別指定絶滅危惧種。今では手に入りません。


 イザベラ:ありますよ。


 トーマス:え?


 イザベラ:ですから。『火鼠の皮の灰』


 手提げバッグから取り出すイザベラ


 トーマス:た、確かにそれは火鼠の皮の灰!どうしてそれを⁉︎


 イザベラ:我が国の宰相になる予定の『かぐや』にお土産にあげようと話したら要らないって言うものですから。なんでも人界で良い思い出が無いからだそうで。


 トーマス:で、では早速!


 火鼠の皮の灰を花に振りかけるイザベラ眩い光と共に現れる女性


 太郎?:・・・・・ここは?君達は・・・誰だい?


 トーマス:こ、これは・・・


 太郎?:・・・ん?胸の辺りが重いな。・・・そうか。火鼠の皮の灰の副作用か。


 イザベラ:意外に冷静ね。性別変わってパニックになると思ったのですが。


 太郎:想定内です。それより今はいつですか?


 トーマス:魔界暦4000億2018年。君が花になってから1000年後だ。もっとも君の居たフロール王国は無くなってしまったがね。


 太郎:そう・・・か。


 花になった後の経緯を話すトーマス


 太郎:そうか。彼女はここを霊園にしたのか。


 トーマス:君の花への情熱と君への想いを込めて『色彩の花園』またの名を『スペクタルサンクチュアリ』とこの霊園に名付けたそうだ。


 太郎:サンティア・・・


 イザベラ:今後はどうなさいます?良かったら私の国に来てもらえますか?今私の国は驚くほど人手不足で。その魔導錬金の知識を活かして科学大臣になってくれると助かるのですが。


 太郎:そうだね。貴女には元に戻してもらった恩もある。君の国に世話になろう。


 イザベラ:決まりですね♪










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