第136話工業都市のアヤ

 ウエポニア帝国戦においてシルフィード王国領となった大工業都市ファクトリア。その片隅の小さな町工場に若き天才技師がいた。


 魔界時間11:00 魔王界中枢 帝王都サタンヘイルダム 商業エリア


 ゴレオン重工グループ本社 社長室


 ダレス:何⁉︎工業都市ファクトリアがシルフィード王国の手に陥ちただと!


 秘書:はい。今各メディアはその話題で持ちきりです。それで・・・『お嬢様』の件ですが。如何致しましょう?


 ダレス:まったく、折角我が社のファクトリア支部を推薦してやったというのに。あんな小さな町工場が良いなど言いおって。


 秘書:それで、如何なさるおつもりです?私などが言うのは失礼かと存じますが、お嬢様は奥様に似て相当頑固ですよ?


 ダレス:姉のマーガレットがウエポニア帝国皇太子レオパルト殿下へ嫁いとなれば、我がゴレオン重工グループを継げるのはアヤしか居らん!


 秘書:直接行って連れ戻すおつもりで?


 ダレス:当然だ!


 社長室を後にするダレス


 秘書:奥様・・・・失礼、副社長。私です。・・・・実は・・・


 同時刻 工業都市ファクトリア 南西部 町工場『ヨシダ精工』


 吉田社長:はぁ〜!シルフィード王国の女王様も粋な事するねぇ!なあ?アヤ。


 アヤ:悪いけど今手が離せないの!社長も新聞読んでる暇あったらノブさん手伝ってよ!


 コイツはアヤ・ゴレオン。魔界宇宙財界に君臨する12の企業の一角『ゴレオン重工グループ』CEOダレス・ゴレオンの実の娘だ。何の因果かこんな小さな町工場にいきなり転がり込んできてここで働かせてほしいときたモンだ。


 吉田社長:おいおい、経営者たる者世の中の事知らなきゃ魔界の財界じゃ出世出来ねぇぞ?


 アヤ:へぇ、隣の『アルフ工業』の社長さんと昼間っから呑んでる事が社長の仕事なの?


 吉田社長:相変わらず厳しいな〜。そういうトコ希里江(きりえ)ソックリだな。


 希里江ってのは俺の娘で魔界宇宙屈指の天才エンジニア。つまりアヤは俺の孫だ。


 アヤ:でも、アリス・シルフィード女王は凄い魔王様だよね。『シルフィード王国の国民になってもこれまで通りで構わない』って。普通ならそういう事言う魔王なんてそうは居ないよ。


 吉田社長:だろ〜?さっすがドーラ皇女殿下が惚れて嫁入りしたいって言うだけの事はあるってモンだ♪


 慌て作業場に入るタツ


 タツ:おやっさん大変だ!


 吉田社長:おやっさんはやめろって言ってるだろうが!で、どうした?


 タツ:ウチの製品納めてるゴレオン重工グループの社長さんがき、来てるんだよソコに!


 吉田社長:何だって⁉︎


 ダレス:お久しぶりです『お義父さん』


 吉田社長:娘を連れ戻しに来たのか?ん?


 ダレス:話が早くて助かります。


 アヤ:父さん!私は本社に戻らないって言ったわよね?


 ダレス:お前ももう子供じゃないのだ、いつまでも駄々をこねるな。さ、帰るぞ。


 ダレスの手を掴む吉田社長


 吉田社長:待ちな。その子はお前の娘だが、俺の孫でもある。孫が嫌がるところを見て『はいそうですか』と見過ごすわけにゃいかねえんだ!


 アヤ:おじいちゃん♪


 黒髪の女性:そこまでよあなた!


 ダレス:き、希里江⁉︎


 アヤ:母さん!


 希里江:秘書から聞いたわ。出張から戻って来てみれば勝手な事を!この子は父さんの下で充分に修行を積んでから連れ戻すって『約束』したわよね?


 ダレス:アイツ余計な事を!だ、だがな。


 希里江:父さん、アヤは今本社に戻っても大丈夫?


 吉田社長:いんや、技師としちゃあ文句ねえが『経営者』としちゃまだまだ全然未熟だな。


 希里江:だ、そうよあなた♪


 ダレス:・・・・・好きにしろ!


 アヤ:有難う母さん!


 希里江:おじいちゃんのトコで修行を積みたいってあの人に啖呵きったんなら父さんが認めるまでやり通さないとね♪


 アヤ:うん!


 希里江:じゃ、お願いね。父さん♪


 吉田社長:おう!任せとけ!


 希里江:あと・・・・コレ。


 吉田社長にキャバクラの名刺を渡す希里江


 吉田社長:ちょ!おま!


 希里江:母さんから伝言『私が帰ったらゆ〜っくりお話しましょう』だって。


 アヤ:おじいちゃん・・・・ご愁傷様。


 吉田社長:お前の別荘に匿わせてくれ!な?


 希里江:だ〜め♡











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