第53話国際政治学者エネ

 日々新たな産声をあげては消えていく国々。ある国は生き残り、ある国は強い国に吸収される等まさに弱肉強食の様な魔界。しかしながら我々の知る戦争とは違い、一滴の血の流れぬ戦争だけに民衆は気にするわけもない。が、その現状に頭を悩ます者も居た。それが『国際政治学者』である・・・


 魔界時間11:00 ワイバニア芸術文化大学 国際政治学部


 風間博士:魔界宇宙創生以来伝統となった『国土争奪戦争』も今や多くの民衆の娯楽と化す・・・か。これをどう思いますかな?ランドルフ教授。


 エネ教授:そうですね。希望に満ちた新人魔王は強い国を目の当たりにして勇敢に立ち向かう一方、引き際をわきまえて強い国に降る魔王もいる。その度に世界地図は目まぐるしく変わるもので、我々国際政治学者や国土地理院の悩みの種・・・といったところですね。


 彼女の名はエネ・ランドルフ。私と同じ国際政治学者でこのワイバニア芸術文化大学の客員教授だ。


 風間博士:そこで今注目の国はありますかな?


 エネ教授:私はシルフィード王国ですね。女王アリス・シルフィードは魔界宇宙創生以来の名君として期待の大きい新人魔王と聞きます。博士は会われた事があるんでしたよね?


 風間博士:ええ、彼女はどこか惹きつける魅力を持った『王』の器のある子でしたよ。


 エネ教授:私も会ってみたいですね♪


 風間博士:『会って』みますか?女王アリス陛下に♪


 エネ教授:え?


 風間博士:私が独自に入手した情報によれば、近く科学超大国『サイエント共和国』が宣戦布告するらしいですよ。気になるのであればその目で確かめてみますか?


 エネ教授:叶うなら是非!


 風間博士:『決まり』ですな♪


 エネ教授:はい・・・・ん?


 エネ教授のデバイスが鳴る


 エネ教授:・・・・はい・・・・・はい。分かった。今から行くよ。


 風間博士:何方から?


 エネ教授:件のシルフィード王国科学大臣ソフィア・クルーガーさんからです。


 風間博士:『学界の魔女』・・・ですな。


 エネ教授:『今度の対戦相手について相談したい事があるから今から来れるかい?』だそうで。


 風間博士:確か現大統領クレア・M・サイエントは彼女の『元カノ』でしたな。


 エネ教授:あの子の場合一方的にというのが実情なのですが。


 風間博士:そうか、ランドルフ教授はサイエント大統領とは幼馴染でしたな。


 エネ教授:えぇ、父が外交官だった頃大統領官邸と家が隣同士だったという事もあります。


 風間博士:そうでしたか・・・ん?そろそろ行った方がよろしいのでは?


 エネ教授:あ、そうですね。あまり待たせるのも悪いですし。では私はこれで。


 風間博士:お気を付けて。


 エネ教授:『国土争奪戦争』の件宜しく頼みます。


 風間博士:あぁ、プロデューサーには私から話しておこう。






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