第四章 企画名「なろう「冬の童話祭」に出した作品が読みたい!」(糾縄カフク様)
第7話(シンデレラは王子様から逃げ出したい!)
私、シンデレラは最近ある悩みがある。
それは、新しい母とその娘たちが、あまりにも……かたずけ等、家事が苦手な点だった。
見目麗しいあの姉と母だが、ああ見えて魔法使いのトップともいわれる宮廷魔法使い長(母)、宮廷魔法使い(姉たち)なのである。
国の危機に瀕するようなドラゴン達に向かって、さっそうと現れて倒すさまは、この国の人間ならば誰もが知っている一年ほど前の出来事だ。
そんな人たちと、まさか家族になれる時が来るとはシンデレラも思わなかった。
この時ほど父に、よくやったと言いたいことはなかった……のだが。
「うん、今日のシチューと、パンもいい感じに焼けたわ。はあ、使用人の一人や二人が雇えれば良いのだけれど、事情が事情なだけに雇えない」
「シンデレラちゃ~ん、どうしたの?」
そこで現れて後ろから抱き着いてきた美少女の二番目の姉に、私は、
「いえ、何でもありません」
「嘘はついちゃだめだよ~、やっぱり~、家事って結構大変なことだと思うの。だからお手伝いを……」
「触るな」
私は姉が手を伸ばしたところでそれを払いのけた。
すると姉がいつものように、
「一度失敗したからといって、すべてを否定するのはどうかと思うの。何事も挑戦は大切よ?」
「一度の失敗があの地獄だったのです。というか、どうして魔法薬に関しては天才的なのに、料理はこんなにダメなのですか!?」
「……特定の魔法に特化してしまうと、“祝福”に偏りが出てしまうから、別のいくつかがダメダメになるのは、これまでの魔法研究でも明らかなの」
「ではその特性を生かさなくてもいいように、料理から離れてください」
「え~」
「料理をするのにも魔法を使うのです。それにお姉さまが干渉して、今日のパンが、そこら中を飛び回る“何か”に変質させられては困ります」
そう言い切ると、ようやくその場から二番目の姉が立ち去った。
だが後には、まだ一番目の姉と三番目の姉、そして義理の母が控えている。
彼女たちが起きてくる前に、すべてを終わらせなければならない。
父の援助も当てにできない。
再婚してから義母と仲良くなってしまい、義母のお願いを断り切れないようなのだから。
彼女にもこの台所という聖域に入れてはならないのだ。
そう思っていると案の定、一番上の姉がやってきて、
「シンデレラ、今日という今日こそは食事の……く、もう終わっているなんて」
「残念でしたね。先手を打たせていただきましたわ」
「……仕方がないからお掃除だけでもしようかしら」
「魔法を使ってやってくださいね」
「……」
沈黙した姉を見て、私はやはりかと気づいた。
またもだ。
またも彼女は魔法を使わずに、家の掃除をしようとしたのだ。
以前それをされたとき、家が半壊しそうになったのをもう忘れてしまったらしい。
あの暗黒の記憶は、私の中に刻まれて再度、それを引き起こさないと私は誓った。
だからもうあのような過ちは二度と起こさないのである。
そう思っていると姉が、
「でもシンデレラ、灰かぶりとあなたが呼ばれているのは、私達にとっても本意ではないわ。せめてお手伝いの人を何人か入れたらどうかしら」
「お姉さま方やお義母さまがたはこの国での“英雄”なのです。いいですか。それがそう言った人たちを入れてこんな、家事にダメなところを知られてしまうなんて、私は絶対に許せません!」
私は自分の思っていることを告げた。
この憧れのお姉さまたちが、そんな欠点があるところなど隠し通さなければならない。
この人達にあこがれる私のような人間はまだまだ沢山いるのだ。
彼らの“夢”を壊すべきではない! そう思っているとそこで、ようやく三番目の姉と父と義理の母と……なぜか最近よくうちに来るようなとある人物が現れた。
なぜまたこいつがここに来た、そう私が思っているとその連れてこられた客人の彼は私に微笑み、
「久しぶりだねシンデレラ。朝食をごちそうしてもらいに来たよ」
「一昨日も来ませんでしたか」
「そうかな? 君に会えない時間は一日でも、10年以上あっていないような気持に僕はなってしまうんだ」
「宮廷の料理人が丹精込めて作った料理を袖にして、こんなところに来て……」
「前に君にそういわれたので、僕の分は料理人たちに食べてもらうことになったよ。なんでも弟子に味を教えるのに使うらしいよ」
「そうですか。ですが、あなたの口に合うようなものを作れる自信が私にはありません。王子様」
そう強めの口調で、現れた客人に返す。
父は後ろで青くなっているが、私としてはこんな、“遊び”としてこんな場所にまで来る王子は気に入らない。
私の夢は、普通の貴族の優しい普通の容姿の男と結婚し普通に暮らすことなのだ。
違ってもこのイケメン男の王子様と結ばれるつもりはない。
そもそも、王子だと知らずに出会ってしまった数年前の私を、今ならば殴りたい気がする。
などと思いつつ、それでも王子様を絶たせたままでいるわけにはいかないので、椅子に案内したのだった。
シンデレラが買い物に出かけた後の事。
王子は深刻な表情で、語った。
「実は今日ここに来たのは、あのシンデレラを舞踏会に連れてきてほしい、そういった理由だ。あれに出ないと花嫁レースに参加させられない」
そういうと、姉たちは顔を見合わせ、そして一番上の姉が、
「ですがシンデレラはそう言ったものに全く興味がありませんから」
「だが彼女にはそれだけの実力がある。口説いてきてくれ」
「え~、そんな~」
無理です~、と次々にいう姉たちを見て王子は一回ため息をついてから、
「協力しないと、魔法研究の予算を半減させる」
「お、横暴だわ」
「そうよそうよ」
「そうそう」
口々に文句を言う三姉妹を一瞥して王子はさらに、
「だが、シンデレラを舞踏会に連れてくることができたのなら、予算は二割増しだ」
「「「ぜひ、頑張らせていただきます」」」
こうして、シンデレラの姉たちの策略は、始まったのだった。
最近、姉たちの様子がおかしいと思っていたら、嵌められた。
「舞踏会に本当は興味があったのでしょう? シンデレラ。口に出ていたものね」
「ち、ちが」
私は必死に否定したけれど、笑う姉たちに身ぐるみはがされて、ドレスを着せられて魔法の馬車(なぜかカボチャ型)で連れていかれてしまった。
なんでこんなことにと私が思って問いただすと、
「研究予算が増えるの。だから……シンデレラ、あなたには犠牲になってもらうわ」
「なんですって、ひどいです、お姉さま、ぁああああああああ」
という展開で会場に私は連れてこられた。
しかも舞踏会の会場には……と思っていると王子が私の前にやってきて、
「やあ、今日はよろしく」
「なんで私が王子と踊らないといけないのよ」
「一回くらいはいいじゃないか。ほかにも何人もと踊る予定だし」
そういわれて私は、一回くらいならいいかなと思ったのだ。
その時は。
気づけばなんだかんだ言って、12時まで踊らされてしまった。
このままでは他の人と踊る時間が無くなってしまう。
それに気づいた私は即座にその場から逃げ出した。
引き留められる間もなくその場から逃げ出したものの、その時靴を片方落としてしまった。
だが、それが運の尽きだった。
「どこに逃げた、いたぞ!」
「く、しつこいわね」
気づけば花嫁にされかかっていた私は変装してその場から逃走した。
だが私の落とした靴の片方を大量に複製して私を探し回っているのである。
ここまでなりふり構わないと思わなかったがここまでされれば絶対に逃げ切ってやる、そう思いながら三人ほど適当に倒してさらに別の場所に逃げ……。
「やあ!」
「! 何でここに王子が!」
「いざという時のために誘導した。まさか全員上手く倒されてしまうとは思わなかったからね。というわけで、僕の勝ちだね」
「べ、別に鬼ごっこで決めたわけでは……」
「僕が君の“遊び”に付き合ってあげるのはここまでと決めたんだ。ここから先の手は、あまり使わせてほしくないかな」
などと圧力をかけられた私は、しぶしぶ、これからデートです、お付き合いからですと準備期間を設けさせた。
それからもろもろの出来事があって、本当に結ばれたのはそれから一月後の事だった。
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