第3話

同じ日の夜九時頃、静まり返った私立高校A学園に真っ赤な服を着た人物が音もなく入っていった。

まだ明かりの点いている学長室まで行き、ドアをノックする。

「誰かね? 」

「レッドです」

「どうぞ」

 学長室の中に入った人物はシルクハットをかぶり、タキシードにマント、マスクをつけ、全身赤色の__

 赤の男爵だった。

 机に座っていた学長は彼の姿を認めると立ち上がり、破顔した。

「ご苦労様。無事で何よりだよ。今回も完璧だったね」

 男爵も笑った。

「ええ、まあ。ちょっとしたハプニングもありましたが」

「ハプニング? 」

「いえ、大した事はありません。ところで、これが例の品です」

 彼がポケットから木製の小さな箱を取り出すと、学長の柔和な顔つきが険しくなった。

箱を受け取り、中を確認してすぐ蓋を閉じる。

「これが例の・・・。確かに、ものすごく強い気を発しておるよ。君は大丈夫だったかね? 」

「まあ・・・。なるべく気にしないようにしていましたから」

「それなら良かった。・・・全く。こんな物の為にな」

 しばらく学長は難しい顔をしていたが、男爵を見て元の優しい顔に戻った。

「すぐにでも元に戻した方がいいだろう。教頭先生に海外出張して頂こう。なに、急だが心配要らないよ。先生は有能な方だから」

「確かにそうだと思います。いえ、僕はそちらを心配しているんじゃないんです。・・・警察の警備は益々厳しくなってきています。__これ以上は難しいかもしれません」

 学長の顔が曇った。

「そうか・・・こちらも手をつくしているんだが・・・」

 男爵は顎に手をあて、少しの間何かを考えているようだったが、思い切ったように顔を上げた。

「学長。今年の新入生男子の写真を全部見せてもらえますか」

「構わないが、どうしたのかね? 」

「今日、偶然なんですが、反射神経の素晴らしい生徒に出会ったんですよ。うちの制服を着ていました。服がまだ新しかったから一年生だと思うのですが。__彼なら、もしかしたら」

 学長が男爵を見た。表情が輝いている。

「そ、そうか。とうとう・・・。そうだ、新入生の写真はすぐ用意できるが、君が疲れていなければ今から探してみないかね? その生徒が見つかれば、私もすぐ手配をしよう。時間は少しでも節約したいからね。いや、君が良ければの話だが」

男爵が笑った。

「もちろんです」

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