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「おまたせしました」

 斜め後ろから声が聞こえた。反射で振り向きそうになる身体を深呼吸で落ち着かせる。早まるな、俺。焦らずともユートピアはすぐそこにある。

 ゆっくりと皿が目の前に現れる。まるでスローモーション。俺の目は釘づけ。それから放たれる、魔法の言葉。

「特製ローストビーフ丼でございます」

 きたぁぁぁぁ!

 目の前に赤み肉の山がドンっと置かれた。その頂上乗せられた黄身がプルンと揺れる。

てりってりの黄身、つやっつやのローストビーフ。これはまさに、ローストビーフの赤富士やぁ~! なんて思いながらカシャッとスマホのシャッターを切る。

何時間でも見ていたいその極上の姿。でも今すぐにでも食べてしまいたいその極上の姿。ローストビーフ丼、なんて甘美な響きなんだ。

なんて沢山語ったが言いたいことはただ一つ。

「美味そう」

 「いただきます」と両手を合わせて箸を手にした。ゆっくりとそれを下ろして一枚肉を挟んだ。一口目は黄身を割らずに頂く。純粋に肉の味とたれを味わ、うまいっ!!

「うまいっ!!」

 なんて柔らかいんだ! ふわふわ、ふわふわなのにジューシー! この肉の薄さ最高かよ! 醤油ベースのタレには荒切のわさびがアクセントに入っていて少し大人な味付け。それが白ごはんにまで浸みていて、肉の油も相まってエクセレンッッッッ!

 美味い、美味い、美味い。

「最高かよ」

 美味さの前に語彙力なんて何処かへ行ってしまった。

マジでこれめっちゃ美味い。

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