第3話 ハロウィンさらば(約束)!

事のてんまつを説明するとこうだ。

二人の魔物はリーナの手によって滅され、この事件のすべてがリーナの魔法

一夜限りの楽しい悪夢ハロウィンナイト】によって記憶が改変され、ということで、片付けられた。

これに対して祐樹はこんなことを言っていた…


『ホントっになんでもありなんだな…っていうか、ご都合主義過ぎじゃないのか?コレ』


対してリーナは、


『ハロウィンの力デース!いや?ハロウィン主人公ホセイってやつデス!』


と、調


そして祐樹は今までこれほど深いため息をついたことは無かった。


場所が変わって空港内。祐樹は白石穂花を探していた。


『あっいたいた。白石さーん!』


『あっ!嵐山くんっ』


どうやら、穂花も祐樹を探していたようだ。


『大丈夫だった?いっイヤー俺もこんなことは初めてだよ!あ、親御さんは?』


あんなことがあったが、祐樹は話をあわせた。魔物云々はともかく、穂花がエンジントラブルによってでもある種の恐怖体験をした事は間違いないからだ。


『うん。ビックリしたけどなんとかね。お父さんとお母さんなら、向こうでこれからのこと相談しに行ってるよ。』


軽快に答える穂花。どうやらなんともないようだ。祐樹は安心していたが、次の言葉で息がつまることとなる。


『それよりも!どうして、嵐山くんがここにいるの?それにあの時、いきなり火が出てる飛行機の中に乗り込んできて、どうやったの?』


祐樹は焦っていた。


〈そうだった、いきなり色々あったから忘れてたけど、確かに不自然だよな…それにはここにきたのはちゃんとしようって決めたからで…どうしよう!?っていうかリーナそこんとこちゃんと消しとけよな〉


『は……………』


『は?』


急展開に弱い祐樹の脳はこの言葉しか弾き出せなかった。


『ハロウィンの力デース!!』


その場の空気が、いきなり20キロほど重くされたのかと祐樹は錯覚しそうになった。


『えっ…と、ハロウィン?の力?確かに今日、ハロウィンだけど…ごめんね?何言ってるかちょっとわかんないや。』


〈だよね、だよね、だよねぇぇ!〉


祐樹はもう自分でも訳がわからなかったが、なんとか答えることにした。


『いや、ほ、ホラ今日ってハロウィンだし、サプライズで、見送ろうかなって?あと飛行機の中にいたのは見間違いだよ!そんな幾ら何でも、一般人が火事に突っ込んで行けるわけないだろ?』


苦しいがこれが妥当だろう。祐樹はそう判断した。


『そうかな〜?まぁ、でも確かにそうかも。それに見送りありがとうね。こんなところまで。すごく嬉しいよ。最後にこうして会えて。』


〈あぁくそっ!そうじゃねーだろ俺!伝えるんだ。最後まで。そのために来たんだから!〉


穂花の嬉しそうなのにどこか辛そうな笑顔を見て、祐樹は決心した。


『聞いてくれ、白石さんっ!』


『うん?』


穂花が少し驚いていたが、今の祐樹は気にしない。


『あの時、告白してくれた時ちゃんと返事ができなくてごめんっ!今更なのは本当によくわかってるけど、今しか言えないんだ。』


祐樹はそこで一息ついた。穂花は顔を赤らめていながらも、言葉を発しず聴いていてくれていた。


『俺も白石さんのことがずっと…好きでしたっ!』


恥ずかしさで死にそうだが、祐樹ははっきりと言い切れた。


〈笑われてもいい。軽蔑されてもいい。自分でも男としてダメ過ぎるっていうのは誰よりも分かってる。それでも俺は絶対に後悔したくない!きっとリーナが来たのもこのためですごく意味がある事だったって今なら分かる。〉


祐樹は恐る恐る、咄嗟に瞑った目を開けた。

怒鳴られるか、はたまた泣かれるかそれとも何も言わずに去られるか…祐樹は覚悟を決めていた。が、穂花からはどれとも違う結果が返ってきて…


『もしかして、それを言うためにここまで来たの?…………………………はは、ホントに嵐山くんてば、バカなんだから…』


穂花の目から熱い雫が一筋流れた。本来それは悲しみや辛いことを指すものだが、それに似合わず、穂花の顔は笑っており今日のよく晴れた日のような穏やかなものに包まれていた。






『こんなところにいたのか?』


ここは空港の屋上だ。全てを終えた祐樹はリーナを探してここまで来ていた。


『あっ祐樹サーン。どうでしたか愛の告白ハ?』


降り注がれる日の光に、金髪を普段より光らせていたリーナが、祐樹に聞いた。


『愛の告白ってお前なぁ。どっちかって言うと謝罪会見だったんだぞ?…でもなんとか上手くいったよ…』


祐樹は少しだけ笑って答えた。


『そうデスか、それはそれは良かったデース!!』


対してリーナはニッコリと笑った。


『リーナ』


『ハイ?』


『ありがとうな』


『!?』


〈まさか一日にこんなにも緊張シーンが続くとはな…〉


祐樹はフッと笑って迷わず続けた。


『確かにやる事はめちゃくちゃで、いつも突然で、冗談ばっかりだったけど、こうして俺が笑って居られるのはリーナ、君のおかげだ。他の人にしてみれば若かりし頃の一種の気の迷いって片付けてしまうかもしれないけど俺は多分そうは思わなくて、一生後悔していくことになってたと思う。だからありがとうなんだ。』


肌を撫でる風が、心地よかった。リーナを見てみると、おそらく今の祐樹の顔と同じであろう。赤く火照っていた。


『い、イヤーそんな面と向かって言われるト、なんだか照れマスねぇ。ヤッパリワタシはここにきて本当に良かったデス。』


お互いが照れていてどこかやっぱり気恥ずかしさがあった。


『た、確かにリーナなんかすごかったよな。なぁ、あれって……………』


祐樹はそこで言葉を止めた。いや正確にはなぜなら…


『おい、リーナその、体が…』


いつのまにかリーナの体の周りにはホタルのような光の粒が舞っており。少しずつではあるが


『もう、そろそろだと思ってマシタヨ。さすがになれない事はするもんじゃナイデスネ。』


リーナは全て分かっているように話し始めた。


『祐樹サン。どうやらこの辺でお別れみたいデース。』


『えっ?』


〈どう言う事だ?そんなお別れって…〉


『規格外の力を制御せずに使いマシタから、多分キョウセイテキにに返されるだと思いマス。』


〈向こうってまさか…〉


『っっ待ってくれよリーナ!何だかんだで俺はまだ話したいこととか、一緒にやりたいこととかいムグ……』


その時、祐樹の唇をリーナの白くて小さなリーナの人差し指が軽く抑えた。


『ワタシもですよ?このままイキナリ別れるのは悲しいデス。』


気がつくとリーナの顔には本当に悲しそうな影が張り付いていた。

それを見て祐樹も冷静になれ、話を続けた。


『そっ…か。なら、寂しいけどお礼がちゃんと言えて本当に良かったのかもな。』


祐樹は無理でも嘘でも笑って見せた。だが出てきた言葉は間違いなく本音だった。


『私もです。良かったことがひとつ。この世界に初めてやってきて、出会った人がこんな私を普通に受け入れて、願いを叶えさせてくれて。それが祐樹さんで本当に良かったです!』


『ははっ、リーナ喋り方普通になってるよ?』


『そうですか?そんなことないですよ。』



『『はっはははっ』』


二人同時に笑い出していた。


『なぁリーナ。またいつか会えるのか?』


祐樹はさりげなく、小さな声で聞いてみた。


『さぁ、さすがにそれは分かりません。でも…』


リーナは今にも消えてしまいそうな中、ハッキリと、こう言った


。ハロウィンはこうして必ずやってきます。祐樹さんがもしも、この短い中での出来事を覚えていてくれるなら、きっとまた会えると私も思います。いや、願いがあればですかね?』


『リーナ…』


祐樹はそう呟いた刹那、リーナの体がパッと弾けたかと思ったとき、本当に最後こう聞こえた


『最後に祐樹さん。この言葉をあなたに。貴方に幸福あれ。ハッピーハロウィンまたいつの日か…』


そうして、ハロウィンの妖精は光となって青空に溶けていった。


『はは、本当になんなんだよアイツ。………あーあ今日はどんだけ体の水分抜けるんだろ…』


そう、呟いて祐樹は顔をぬぐい帰り方はよく分かっていなかったが、とても力強い一歩を踏みしめまた歩き出していた。




魔界



『おかえりなさいませお嬢様。いえ、【七大魔王セブンスロード】がうちの一人【祭祀の魔王】リーナ様。』


そう出迎えてくれたのは執事もとい魔王補佐のクロウだった。リーナは魔界に戻って来たのだった。


『ただいまクロウ。面倒かけたわね。』


リーナはそう返すと、


『いやはや、いつものことですゆえ』


クロウはなんでも無いように応じた。


『いかがでしたか、向こうの世界は。』


クロウは主に尋ねてみた。


『そうね、人間たちはとても自由というか

楽しそうで文明レベルもとても高かったわ。

魔力なしでやっているのに、正直敬意を表したいぐらいね。……やっぱり、先代魔王お父様の時代とは大分違うようね。』


リーナはどこか遠い目をして、そう答えた。


『早いものですなぁ。もう今年で120年ほどになるのでしょうか?』


リーナの父親、そして先代魔王オズワルト・J・ハロルロードは長く、祭祀系悪魔を率いていた。祭祀系悪魔は他の悪魔に比べて、ハロウィンなどでしか存在が発揮できないような弱い悪魔であった。しかし、それらを守り、他の悪魔に引けを取らないようにしたのがオズワルトであった。善政は続くかのように思われたが、一変、病に倒れ魔の世を去ってしまう。そして直系の娘である、リーナが魔王を継いで現在に至ると言うわけだ。



『ええ。そうね』


リーナはすこし重く返事をした。


『それで、リーナ様。魔王としてのあり方何か掴めたでしょうか?』


クロウが体を鳴らしながらまた尋ねて来た。


『そうね、確かにお父様は良い魔王だった。私も尊敬してる。でも今の世の中には通用しないと思ったのよ。』


『と言いますと?』


『向こうではっていうかニホン。そこでは、ハロウィンは怖いものではなくて、お菓子を貰ったり仮装したり、クリ○○スほどではないにしろ、広く人間たちに慕われていた。沢山の子供達が笑っていた。だからこそ私は…』


リーナのはそこで一息つくと決意を改め、こう告げた。


『ハロウィンのあり方を変えるわ!悪魔みんなも、ちゃんとこれからも守り率いて、なおかつ人間たちにももっと慕われるように…』


リーナの瞳は輝いていた。その決意はまだ幼さが残っていたとしても紛れも無い王の考えだった。


『そんなこと言うんじゃ無いかって思ってましたよ。やれやれ。今回の件でも騒いでおられるのに、そんなことを言ってはまた【賢老院】の方がたが黙っていないでしょうな』


クロウは口のある場所からため息を吐いて続けた。


『そこまで言ったのです。何か具体的なお考えでも?』


対してリーナは


『えっとそこまではちょっと…こ、これから考えていくのよっ!』


すこし慌てて赤面してそう言った。


『それも分かっておりましたとも。』


クロウはなにもかもお見通しのようだ。だてに補佐をやっていない。


『ぐっ、なによその態度。いーじゃない別に。夢はでかくよっ!それに私は約束したのよ…』


『もしや、祐樹殿とですか?』


リーナは一度目を閉じて同意した。


『ええ。確かに私は悪魔で魔王だけど、願いを叶え続けるって。そうしてまたいつか会おうって。ハロウィンに約束したのよ。』


『珍しく、良い御仁でしたな。』


とクロウ。


『そうね。きっとまた…』


リーナもそう思っていたとき、いつのまにか魔王城の近くにある丘の上についていた。真っ赤に光を放つ巨大な月が出ていた。民家の方ではランプの灯りが幻想的な雰囲気を醸し出していた。それらを見てリーナは胸を張り、半歩後ろを歩いて付いてきていたクロウに振り返り、なんでも無いようにしかし、しっかりと言った。


『やり方とか、どれくらいの力とか時間が掛かるかわからないけど…』


そして追いついたクロウは主であるリーナの顔をみて静かに微笑んだ。



『ハロウィン魔王に任せなさいっ!』



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ハロウィン魔王に任せなさいっ! ミナトマチ @kwt

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