11―46

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 砂浜の上で浮遊した状態のオフィリスの体から、椅子に座って目を閉じた状態の自分の体に意識が戻った。

 オフィリスに憑依する前は、テーブルに突っ伏していたはずなのだが、今は椅子に座った状態で上半身が起きている。

 しかも、正面からカチューシャに頭を抱きかかえられているようだ。


 ――むにゅ……


「はぁああぁ……あるじどのぉ……」


 小さな柔らかい物体が顔面に押しつけられている。

 もう、お馴染みの感触と言っても良いだろう。


「フフフ……あたくしも癒されますわぁ……」


 そして、背後から肩の上に柔らかくて大きな塊が載せられていた。


「んんっ……ユーイチどのぉ……」

「興奮する……」


 左右の腕にもしがみつかれていた。

 手は太ももに挟みこまれているようで、かなりの熱を感じる。


「なぁ……? そろそろ代わってくれよ……?」

「そなたは駄目じゃ。主殿の許可があるまで近づけさせぬ」

「そんなぁ……酷いぜ……」


『何でこうなった……?』


 僕は、一瞬だけ【戦闘モード】を起動した。

 そして、頭を左右に振って抱擁から逃れようとする。


「あんっ……主殿……戻られましたかぇ?」


 カチューシャが腕を解いて身体を離した。


 目を開けると僕が座っている席のテーブルに裸のカチューシャが座っていた。

 顔に当たる乳房の感触から胸をはだけているのには気付いていたが、全裸だと思っていなかったので驚いた。


「わっ! 何で裸なんですか!?」

「何か問題かぇ?」


 僕は、目を逸らして頭を左に向けた。


 ――ムニュッ……


「ああん……」

「わっ……」


 肩に乗っていたグレースの乳房が頬に当たったようだ。

 その柔らかい感触にドギマギしながら左腕の辺り見るとマリエルと目が合った。


「あっ……」


 マリエルは、僕の左腕にしがみついていた。全裸で……。


「ユ、ユーイチ殿! こっ、これはっ……」


 そう言って彼女は上半身を僕の腕から放した。

 形の良い乳房が丸見えになる。


「わっ……」


 僕は目を閉じた。


「申し訳ございません。お目汚しを……」

「いえ……」

わたしの身体など見たくはないですよね……?」

「そういうわけでは……マリエルさんは美人だし……」

「そんなことを言われたのは初めてです……」


 美人が多いこの世界でもマリエルは、かなりの美人だと思う。

 ここは元の世界ではイタリアだし、女性を口説く男性が多そうな気がするのだが……。


「リーダーは、男嫌いだから……」


 反対側からモニカがボソッと呟いた。


「なるほど……」

「……どういうことですか?」

「マリエルさんは、男嫌いなので口説かれたことが無いということでしょう」

「ユ、ユーイチ殿は、わたしを口説いておられるのか!?」

「いえ、僕は思ったことを言っただけで……」

「嬉しい……」


 マリエルは、再び僕の左腕にしがみついた。


「落ちた……」

「チョロい女じゃのぅ……」

「なっ、何を……」

「まぁ、主殿が相手では仕方あるまい……妾もすぐに虜にされてしもうた程じゃからの」

「流石、ユーイチくんですわぁ」

「もう、からかわないでくださいよ……」


 右側から伸びてきた手が僕の左の顎のあたりを掴んで強引に顔を右側へ向けた。

 漫画だったら、ゴキッという擬音が入りそうな行動だった。


 ――ムニュッ……


「ああん……」


 今度は、右の頬がグレースの右の乳房に押しつけられた。


「なっ……」


 見ると僕の右腕にしがみついたモニカと目が合った。


「我慢できない……」


 モニカは、そう言って僕の左の頬に当てていた手を後頭部へ回し、身体を起こした。

 そして、僕の頭を自身の乳房へと導いていく。


「待て! 小娘! 妾が先じゃ!!」


 正面に座るカチューシャがモニカの行動に横槍を入れた。

 僕の頭を引き寄せる力が緩む。


「……分かった。順番を守る……」


 モニカは、僕の後頭部に回していた腕を戻して、再び僕の右腕にしがみついた。


「良い心がけじゃ……」


 カチューシャの左手が僕の右頬へ伸びてきた。


「さぁ……主殿……」


 カチューシャがやさしく僕の頭を正面に向けた。

 そして、右手を僕の後頭部へ回して、僕の唇を小振りな胸へいざなった。


「まだ、午前中なんだけど……?」

「良いではありませぬか……」


 僕は、覚悟を決めてカチューシャに授乳されることにした――。


 ◇ ◇ ◇


 ――チュパッ


 僕は、カチューシャの乳首から口を離した。


「ハァハァハァハァ……あるじどのぉ……もっと……もっと吸ってたもれ……」

「交代の時間です」


 早く地下迷宮の探索を再開したいので片側5分ずつ授乳されたところで交代を促した。


「そんなぁ……相変わらず主殿はイケズじゃのぅ……」

「ワケの分からないことを言ってないで交代してください」

「……仕方がないのぅ……」


 そう言ってカチューシャは、立ち上がりながら空中へ浮かび上がった。

【レビテート】の魔術を使ったようだ。

 そして、数歩下がってからテーブルの中央付近に着地した。


「では、お主。主殿の前に来い」


 カチューシャがマリエルを見ながらそう言った。


「わ、わたしですか!?」


 何故かカチューシャがこの場を仕切っている。

 僕は、テーブルの中央に立つカチューシャを見上げた。


「妾が主殿の閨房けいぼうを取り仕切りますゆえ、この者たちに御慈悲をお与えくだされ」


『けいぼう? ごじひ? 何のこと?』


 言葉の意味はよく分からないが、カチューシャが決めた順番通りに授乳されろということらしい。

 ここで質問をしたりすると、また時間が掛かりそうなので、とりあえずカチューシャに任せることにした。


 マリエルが左腕を放して立ち上がった。

 彼女のふとももに挟まれていた手が汗でぬるぬると濡れている。


「ユーイチ殿、失礼いたします」


 マリエルは、そう言って僕の前に身体を入れて正面のテーブルに腰掛けた。

 この世界に来てから女性の裸を見る機会が増えたが、一向に慣れない。

 特にマリエルのように知り合ったばかりでよく知らない女性に対しては余計に緊張するのだ。


【戦闘モード】


 僕は、【戦闘モード】を起動することで、羞恥で顔が熱くなり、ドギマギした状態から冷静な状態となった。

 世界がまるで静止したかのような【戦闘モード】を起動した状態でマリエルの裸体を眺める。

 この状態では、女性の裸を見ても何とも思わない。

 対象が美しい女性であっても特に何も感じないのだ。

 感情が全て欠如した状態で冷静に観察しているような状態だと思う。


 僕は、恥ずかしそうな仕草のマリエルを見ながら、【戦闘モード】を解除した。


「さぁ、主殿に乳を吸われるのじゃ」


 カチューシャがそう言うとマリエルはビクリと身体を震わせた。

 男嫌いのマリエルには、男性に授乳するという行為は敷居が高いのかもしれない。


「あ、あの……ユーイチ殿……」


 マリエルは、恐る恐るといった感じで右手で持ち上げた形の良い乳房を差し出してくる。

 その仕草に僕は、またドギマギとしてしまう。


「いいのですか?」

「も、勿論です!」


 僕は、差し出されたマリエルの乳房を吸った――。


 ◇ ◇ ◇


「ほぉおおぉーっ! しゅごいぃいいー! ゆーいひどのぉ……」


 マリエルに授乳されながら、彼女の顔を見上げると涎をたれながら蕩けきった顔で喘いでいた。

 授乳には性的な快楽は伴わないという話だが、こういう反応を見ていると本当なのかと疑ってしまう。

 マリエルの母乳は、冒険者としてはかなり美味しかった。レベルが一般的な中堅冒険者よりも上なのだろう。


 ――チュパッ


「はぁんっ……ハァハァハァハァ……」


 マリエルは、焦点の定まらない目で荒い息を吐いている。


「大丈夫ですか?」

「……ハァハァハァハァ……だっ、大丈夫です……まさか、こんなに凄いとは……」

「そうじゃろう? お主は、もう主殿の奴隷じゃ……」

「ちょっと! カチューシャさん!?」

「何じゃ? 主殿? 本当のことじゃろう?」

「そんなわけないでしょう? 何でいきなり僕の奴隷になるんですか!?」

「じゃが、こやつはもう召喚魔法を掛ければ主殿の使い魔になるのじゃぞ?」

「それはっ……でも、まだ分からないじゃないですか?」

「確かにのぅ……あのソフィアとかいうおなごは、拒絶しおったからのぅ……では、妾が試してやろう」

「待ってください!」

「何か問題かぇ?」

「問題ですよ。僕は、彼女たちを使い魔にするつもりはありませんし、彼女たちも望んでいないでしょう?」

「ふむ……主殿が望まれぬのでしたら止めておきましょう……」


 何とかマリエルを使い魔にすることは避けられた。


「ごめんなさい、マリエルさん……」

「…………? どうして、ユーイチ殿が謝られる必要があるのですか?」


 マリエルは不思議そうな顔をしていた。

 おそらく、先ほどのカチューシャとのやり取りの意味が分かっていないのだろう。


「マリエルさんは、危うく僕の使い魔になってしまうところだったのです」

「ユーイチ殿の使い魔に……ですか?」

「召喚魔法は簡単には効かないと聞いている……」


 右側からモニカがそう言った。


「ええ……ですが、掛けられた人が望めば、高確率で効果を発揮するのです」

「…………」

「それも強く願わないと掛かりません」

「それは当然だと思う……」


 金銭で売買される奴隷とは違い、使い魔には召喚魔法を掛けられた相手に全てを捧げる覚悟が必要だろう。

 主が死ぬと使い魔も死んだも同然の状態になるようだし、どんな嫌な命令にも従わないといけないのだ。

 ただ、使い魔に対する命令の強制力については、よく分かっていない。


「ユーイチに母乳を吸われたら使い魔になる……?」

「まぁ、今のところ高確率で……」

「なるほど……ユーイチの使い魔が女ばかりなのはそのせい……」


 言われてみれば、基本的に授乳された相手を使い魔にしているので、使い魔が女性ばかりになるのは当然だ。

 ゾンビは、比較的簡単にテイムできるようなので、男性の使い魔を手に入れたいなら、男性のゾンビに召喚魔法を掛けまくれば手に入ると思うが、必要性を感じない。


『そういや、アーシュも牝だよな……ケットシーは、性別不明だけど……』


「リーダー、どいて……」

「んっ? ああ……ユーイチ殿、失礼します」


 マリエルが腰を浮かせて左のほうへ移動して、テーブルから降りた。

 そして、モニカが立ち上がり、入れ替わるように僕の正面に移動した。


「では、小娘の番じゃ……」

「ん……さぁ、ユーイチ……」


 モニカが両腕を僕の頭に回して引き寄せた。


「待って。モニカさん。僕に授乳している間、どんな気分なのか解説してくれませんか?」

「どうして……?」

「知りたいのです……」

「分かった……」


 僕は、モニカから授乳される。

 口の中に広がるモニカの母乳の味は、姉のエレナとよく似ていた。

 レベルに関しては、若干モニカのほうが高そうだ。

 これは、スケルトン狩りをしていたからだろう。


「くっ……凄い……」


 ――チュパッ


「どう凄いのですか?」


 僕は、母乳を吸うのを止めて訊いた。


「言葉にするのは難しい……」


 再度、授乳される。


「想像と違う……こんな……幸せな……全身が痺れて……溶けてしまいそう……」


 僕は、焦点の定まらない目で喘ぐモニカから授乳され続けた――。


 ◇ ◇ ◇


 ――チュパッ


「ハァハァハァハァ……」


 モニカがうわごとの様に言っていた感想から察するに母乳を吸われる行為は、かなりの快楽を伴うが、それは性的なものではないようだ。


「モニカさん? 大丈夫ですか?」

「ん……凄かった……ユーイチに夢中……」

「まとめると、どんな感じなのですか?」

「思っていたのとは違った……絶頂するような快感ではない……」

「…………」


【戦闘モード】


 モニカの話を聞いて、改めて裸の女性が目の前に座っていることを意識してしまった。


「凄く幸せでとろけるような……使い魔になってしまうのも頷ける……」


 やはり、母乳を吸われた相手に対して心を開くような作用があるのだろう。


「ありがとうございました」

「では、次は……主殿の後ろにおる、乳房の大きな貴様じゃ」

「あたくしの番ですわね……」

「オイ! ちょっと待てよ! そろそろオレにも頼むぜ!?」


 カーラが抗議の声を上げた。


「主殿、どういたしますか?」

「変なことしないならいいよ」

「主殿の許可が出たぞぇ……そこな粗忽者、こちらへ来い」

「粗忽者って……まぁ、いいや……」

「ああん! あたくしはどうなりますの?」

「貴様は後じゃ。大人しく主殿の枕をやっておれ」

「……分かりましたわ」

「悪ぃな、グレース」

「構いませんわ。ユーイチくんの枕も楽しいですから」


 そのやり取りを見ていたモニカが身体を移動させてテーブルから降りた。

 そして、カーラが椅子に登って僕の正面でテーブルに腰掛ける。


「待ち遠しかったぜ……さぁ、ユーイチ……」


 そう言ってカーラは、僕の頭を抱き寄せて胸に押しつけた。


「うぷっ……」

「ほら、吸ってくれ」


 僕は、カーラの大きくて張りのある乳房の先端に位置する硬く尖った乳首に吸い付いた。


「ほぉおおぉーっ! コレだよ! コレぇ!!」

「煩い奴じゃのぅ……」


 カーラの上げた叫び声に対してカチューシャが小言を言った。


 そのまま、僕はカーラから授乳され続けた――。


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