10―44
10―44
『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』
『ダージリンティー』『ダージリンティー』『ダージリンティー』『ダージリンティー』『ダージリンティー』『ダージリンティー』
僕は、パーティメンバーが座るテーブルに『いちごのショートケーキ』と『ダージリンティー』を出した。
「しばらく、ここで待っていて貰えますか?」
「ええ……。でも、ユーイチは、何処へ行くの?」
「オークの拠点の近くにこの『キャンプルーム』の裏口を繋げて来ます」
「本気でオークの集団と戦うつもりなのね?」
「ええ、みんなのレベルなら一度に同数のオークなら余裕で対抗できますよ」
「囲まれずに戦うのが難しいのではなくて?」
「レリアに【ストーンウォール】を使って貰えば、同時に相手をするオークの数を制限できます」
「ユーイチが本気になったら、一人でその拠点を攻略できるの?」
「ええ、オークの拠点程度なら余裕です」
「「――――っ!?」」
パーティメンバーたちが驚いて言葉に詰まった。
「ホ、ホントかよ!?」
「でも、あまりアテにしないで下さい。みんなを鍛えるためにオークと戦うわけですから」
「分かったわ。あなたを信じる」
「では、行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい。ユーイチ」
「早く戻って来いよ」
「行ってらっしゃい」
『密談部屋3』
僕は、近くの壁際に『密談部屋3』の扉を召喚した。
扉を開けて、中に入る。
そして、扉を閉めて、『アイテムストレージ』へ戻した。
『フェリア召喚』『フェリス召喚』『ルート・ドライアード召喚』『ルート・ニンフ召喚』『ユキコ召喚』
使い魔たちを『密談部屋3』の中で『召喚』する。
「ルート・ドライアード、裏口の扉を召喚して」
「御意!」
奥の壁に『密談部屋3・裏口』の扉が召喚された。
ほぼ同時に僕の体が回復系魔術のエフェクトに包まれる。
フェリアがバフを入れてくれたのだ。
「フェリア」
「ハッ!」
フェリアが『密談部屋3・裏口』の扉から外に出た。
僕や他の使い魔たちもその後に続く。
そして、トロールの棲む洞窟の入り口へ移動した。
「フェリア、ここからは任せる。いつも通り、全ての使い魔を出してからトロールを殲滅して。終わったら、ここに居る者たちは、配下の使い魔を帰還させて、『密談部屋3』に戻って。そして、ルート・ドライアードが扉を帰還させたら、僕に【テレフォン】の魔術を使って連絡して」
「畏まりました。しかし、ご主人様は、どうされるのですか?」
「僕は、『オークの砦』に向かう」
「でしたら、
「いや、護衛は必要ないけど、念のためオフェーリアとオフィリスを召喚して連れていくよ」
「そういうことでしたら……」
正直、この辺りで護衛が必要とは思えないけど、フェリアが心配するので、ホムンクルスを連れていくことにした。
『オフェーリア』『オフィリス』
白い光に包まれて、ホムンクルスたちが『アイテムストレージ』から召喚された。
「お呼びですか? ご主人様」
「【インビジブル】と【ハイ・マニューバ】を使ってついてきて」
「ハッ!」
「分かりましたわ」
【インビジブル】【ハイ・マニューバ】
僕は、【インビジブル】と【ハイ・マニューバ】を起動して空中へ舞い上がった――。
◇ ◇ ◇
富士の麓から『オークの砦』までは、【ハイ・マニューバ】で飛行して数分で到着した。
方向が少しズレていたため、行き過ぎて【マップ】を確認して戻ったのに数分しか掛からなかった。
【マップ】上で距離を計ると、富士の麓から『オークの砦』までは、50キロメートルくらいなので、超音速飛行が可能な【ハイ・マニューバ】なら、あっという間の距離だ。
魔力――MP――の上限が以前とは比べものにならないほど上がっていることや【メディテーション】でのMP回復量も格段に上がったため、【ハイ・マニューバ】を使っていてもMPは殆ど減らなくなっているので、地球を一周することも余裕で可能だと思われる。
僕は、『オークの砦』から100メートルほど離れた森の中に降り立った。
【ハイ・マニューバ】と同時に起動した【エアプロテクション】を解除する。
「二人とも、【ハイ・マニューバ】を解除して」
「…………」
返事がない……。
おそらく、【エアプロテクション】のせいで僕の声が届いていないのだろう。
他の使い魔なら気を利かせて解除してくれるのだろうが、ホムンクルスはこういうところで融通が利かないと思う。
『憑依して解除させるか?』
そういえば、直属の使い魔だと装備を直接変更したりすることができる。
ホムンクルスでも同様のことが可能だ。
もしかすると、魔術の起動や解除もできるかもしれない。
『オフェーリアの【エアプロテクション】を解除』
そう念じてみた。
「オフェーリア?」
「何か御用ですか? ご主人様」
どうやら、解除することができたようだ。
『オフィリスの【エアプロテクション】と【ハイ・マニューバ】を解除』
『オフェーリアの【ハイ・マニューバ】を解除』
装備の変更とは違い、見た目で効果が確認ができないのが難点だった。
「二人とも、【ハイ・マニューバ】は解除された?」
「はい。解除されました」
「
「じゃあ、二人は【レビテート】を使って空中で待機して」
「畏まりました」
「畏まりましたわ」
メイド服姿のオフェーリアとオフィリスが木々の間を縫うように上昇した。
予想していたよりも高いところまで上がったようだ。
――もしかして、【レビテート】の限界高度まで上昇したのだろうか?
それを確認してから、僕は近くの大きな木の幹の『オークの砦』から死角となる裏側の位置に『キャンプルーム』の裏口の扉を召喚する。
『キャンプルーム・裏口』
裏口の扉にも円形の物見窓が付いているため、中の光が外に漏れている。
『夜に召喚すると中が丸見えだな……』
「ご主人様」
物見窓から部屋の中を覗こうとしたら、突然、左の耳元でフェリアの声がした。
トロール討伐が終わり、『密談部屋3』へ戻ったのだろう。
【テレフォン】
僕は、【テレフォン】の魔術を起動して応答する。
「終わった?」
「はい」
「裏口の扉が帰還されたのを確認した?」
「勿論でございます」
「ありがとう、じゃあ帰還させるね」
「ハッ!」
「通信終わり」
『フェリア帰還』『フェリス帰還』『ルート・ドライアード帰還』『ルート・ニンフ帰還』『ユキコ帰還』
僕は、トロール討伐をしてくれた使い魔たちを帰還させた。
改めて物見窓から『キャンプルーム』の中を覗くと、パーティメンバーたちは、僕が渡した戦闘用の装備に換装してテーブルの側に立っていた。
クリスティーナとレティシアは、同じ全身鎧と武装を装備していて、体格も似ているため見分けがつかない。
カーラが見あたらないので、左右に移動して部屋の中をよく見ると、部屋の隅で腕立て伏せをしていた。
『効果あるの?』
冒険者は、普通の人間とは全く違う構造の体をしているので、筋トレしても筋力が上がるとは思えない。
しかし、刻印が本人の望みを叶えてくれる可能性が無いとも言い切れない。
――今度、『夢魔の館』の娼婦候補者を使って実験してみようか? いや、検証方法が思いつかないな……。
筋力の上昇は装備で測ることができるが、トロール討伐等で強制的にレベルアップするため筋トレの効果のみの検証が難しいのだ。筋トレした娼婦としていない娼婦で比較しても成長というのは個人差があるため、筋トレの効果かどうか分からない。
大量のサンプルを採取すれば検証できるかもしれないが、大規模な実験をするのは面倒臭いし、お金も掛かるだろう。確証を得るために必要なサンプルがどれくらい必要なのかも統計学に詳しくない僕には分からない。
そんなことを考えながら、僕は扉のノブに手を掛ける。
――ガチャ
【インビジブル】を解除した後、『キャンプルーム』の裏口の扉を開けて中に入る。
そして、テーブルの上の食器を片付けた。
「お、ユーイチ! 早かったじゃねーか!?」
「ユーイチ、準備はできてるわよ」
「あまり騒がないほうがいいかしら?」
「そうね」
「オークの拠点から近いのだろう?」
「ええ」
「あたくし、恐ろしいですわ……」
「じゃあ、明かりだけ用意して付いてきてください。100メートルほど離れているので、オークたちは反応しないと思います」
「戦闘準備。ユーイチとレリアとアリシア以外には【ライト】を設置するわよ」
パーティメンバーの頭上に【ライト】の魔術で光源が設置された。
そして、全員が【ウィル・オー・ウィスプ】を召喚した。
これは、精霊力を鍛えるためだ。
「その前に……」
『魔力超回復薬』を6本作成して、パーティメンバーに配る。
「そのポーションを飲んでおいてください」
「ありがとう」
全身鎧を装備したクリスティーナとレティシアは、そのままではポーションを飲めないので、一旦、寝間着姿になって飲み干した後、再度、全身鎧に換装した。
僕は、パーティメンバーを連れて外に出た。
メンバー全員が外に出たので扉を閉めたが帰還はさせなかった。
いざというときに逃げ込むことができるからだ。
「危なくなったら、この扉に逃げ込んでください」
「ええ、分かったわ」
「では、こちらに……」
木の反対側に回り、僕が降りてきた森の中の少し開けた場所に移動する。
「この辺りで戦います。レリア、こうV字型に【ストーンウォール】を2枚設置して貰えますか?」
「いいだろう」
僕が設置場所を指示すると、パーティメンバーが居る場所を囲うようにVの字に石の壁が出現した。
開いた部分の先に『オークの砦』がある。
【ストーンウォール】は、長さ約5メートル、高さ約3メートル、厚さ約10センチメートルの石の壁を任意の場所に設置する魔術だ。
常に垂直に立った壁として設置されるが、空中に設置することも可能だ。
「それから、このVの字を塞ぐような位置に2メートルくらいの高さから、もう一枚設置してもらえますか? 入り口から2メートルくらい離れたところがいいですね」
「それは、何のためだ?」
「オーク・アーチャーの矢を避けるためです」
「なるほど。そういうことか……」
V字型の入り口から2メートルほど離れた空間に地上から2メートルくらいの高さから【ストーンウォール】が設置された。
これで、V字型の陣地内に矢は飛んで来ないだろう。
「じゃあ、僕がオークを引っ張ってきますので、入り口をクリスとレティで守ってください」
「分かったわ」
「分かりましたわ」
「緊張するぜ……」
「任せる」
「オークが押し寄せてくるかと思うと震えてしまいますわ……」
「ユーイチに任せておけば大丈夫よ」
グレースは、他のメンバーに比べて特にオークを怖れているようだ。
彼女は、穢れ無き聖女という感じではないが、回復系の魔術を使う者は、どことなく神聖なイメージがあるので、穢れを嫌うのかもしれない。
尤もオークに囚われてみたいなんて思う女性がフェリス以外に居るはずもないと思うが、特に忌避する女性も居るのではないだろうか。
【マニューバ】
僕は、【マニューバ】を起動した。
これで僕に掛かっている自己強化型魔術やバフは、【トゥルーサイト】と【ナイトサイト】、【マニューバ】、フェリアが掛けてくれた【グレーターダメージスキン】と【グレート・リアクティブヒール】の5つだ。
木々を避けながら地表スレスレを飛行する。
森の中は草むらだが、草原のように長い草が生えているわけではない。
だが、蜘蛛の巣などがそこら中にあるので、獣道から外れると飛行していても移動しづらい。【エアプロテクション】を起動すれば気にせず突っ切れると思うが。
『オークの砦』の入り口に接近する。
数十メートルまで接近したところで、オークが僕に気付いたようだ。
入り口の見張りが騒ぎ出した。
僕は、停止して様子を見る。
砦の中からオークの群れが続々と外に出てきた。
それを確認してから、反転して森の中へ戻る。
パーティメンバーが見えた。
バフは終わっているようで、彼女たちの武器は、【ホーリーウェポン】の淡い光に包まれている。
僕は、矢避けの【ストーンウォール】をくぐった後、パーティメンバーを飛び越えて後ろに降り立った。
【ストーンフロア】
矢避けの【ストーンウォール】の上辺に繋げるように【ストーンフロア】を設置した。
V字型の入り口から前方2メートル、高さ5メートルほどの位置に正方形の屋根のような足場が出現する。屋根と言ってもV字型の陣地をピッタリと塞いでいるわけではない。矢避けの【ストーンウォール】に上辺を合わせてあるので、V字型の【ストーンウォール】よりも2メートルほど高い位置、つまり地上から約5メートルの高さに設置されたことになる。
「おお、何だそれ?」
「その魔術は、初めて見るな」
「ユーイチ、乗ってもいい?」
「ええ、アリシアとレリアは、上から魔法で攻撃したほうがいいかも」
「ユーイチ、その魔術は魔力系なの?」
「いいえ、精霊系ですよ」
「精霊系も使えたの?」
「ええ、実は……」
レリアとアリシアが空中に浮かび上がって【ストーンフロア】の上に移動した。
森の中を見ると、オークの大群が接近してきた。
――ウォオオオーーッ!
パーティメンバーを見たオークたちが凄まじい雄叫び上げた。
「キャッ!」
「ひいっ……」
「な、なんだよ!?」
「…………っ!?」
「捕まってオークの性奴隷にされたくなかったら、死ぬ気で戦ってください」
「そ、そんな……」
「機械のように戦い続けないと殲滅できませんよ。魔力の残量にだけは気をつけてください。10パーセントを切ったら、自己強化型魔術などはオフにしてください」
「ええ!」
「分かった!」
「来るわよ!」
――ガキン!
――ガキン!
クリスティーナとレティシアが先頭集団のオークと交戦を開始した。
盾でカトラスらしき曲刀を受け止めている。
「アリシア、私の後ろへ!」
「ええ」
上からレリアとアリシアの声が聞こえてくる。
見ると、何本もの矢が空中を後方へ飛んで行った。
おそらく、レリアの【ウインドバリア】により軌道を逸らされた矢だろう。
クリスティーナとレティシアは、2メートルくらいの間を空けて戦っている。
それぞれ2体のオークを相手にしていて、真ん中の空いた空間には、二人よりも少し下がり気味の位置でカーラが1体のオークと戦っていた。
カーラの動きは、オークを圧倒していた。
ホブゴブリンとの戦いから予想していたが、彼女たちはノーマルオークに余裕で勝てるくらいまで成長しているのだ。
カーラは、オークの攻撃を余裕をもって回避し、ロングスピアをオークの顔面に突き込む。
そして、オークが頭を振って後退したところに【フレイムアロー】を撃ち込んだ。
――シュボッーーーー!
オークの胸の辺りに炎の矢が当たった。
――ウォーッ!
怒りの叫び声を上げてオークが突撃してくる。
カーラは、リーチを生かして冷静にオークの腹をロングスピアで突いた。
その一撃でオークのHPがゼロになったようで、オークは白い光に包まれて消え去った。
オークは、割と防御力の高い装備を身に着けているが、アダマンタイト製の武器の前では紙装甲なのだ。
僕は、パーティメンバーたちの戦いを
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