6―27

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 あれから、僕は娼婦候補者や使い魔たちの母乳を一晩中吸い続けた――。


 裸の美女達に洗い場に押し倒されて、代わる代わる乳房を差し出されてそれを吸うという乱交に近い状態だったが、何とか貞操を守り抜くことができた。というのも、授乳という行為は、どちらかと言えば、性欲よりも幸福感のようなものが刺激されるようで、僕のほうが【戦闘モード】で性欲を抑えていれば間違いは起きないようだ。


『現在時刻』


 現在の時刻は、【06:33】だった。


 今日は、5月4日(水)のはずだ。

 娼館の用地買収は、5月8日(火)頃に行える予定だ。

 今のうちにどんな娼館を建てるのか考えておいたほうがいいかもしれない。

 その前にユウコやユキなど『組合』で仕事をしている者や、料亭『涼香すずか』の女将スズカと女中のタカコも起こしてあげたほうがいいだろう。

 僕は、四肢にまとわりつく女性たちが驚かないようにゆっくりと身体を起こす。


「ああんっ」


 左腕に抱きついていた料亭『涼香』の女将スズカが声を上げた。


「んっ、主殿あるじどのぉ……」


 その声を聞いて、右腕に抱きついていた『組合』の刻印魔術師ユウコが目覚めたようだ。

 長い黒髪を揺らして美魔女のような年齢不詳のユウコが身体を起こした。小振りな乳房が慎ましく揺れる。


「おはようございます、ユウコさん」

「ああ、主殿。おはよう。まさか、このような秘策だとは予想していなかったぞ。これならば、刻印を刻んだ女ならば誰でも使い魔にできるじゃろうな」

「誰でも同じことができると思いますけどね」

「そんなことはない。主殿以外の男に乳を吸われてもこんな気分にはならぬよ」

「それは、単に僕のレベルが高いからじゃないでしょうか?」

「ふっふっふっ……。それがどれだけ困難なことか分かっておらぬようじゃのぅ……。よほど天稟てんぴんに恵まれておるようじゃ」


 既に彼女たちは、僕の使い魔となっていた。正確には、ユウコとスズカは、レイコの使い魔だ。

 料亭『涼香』の女中タカコは、カオリの使い魔で、『組合』の長身の受付嬢ユキは、ミナの使い魔だ。これでミナの使い魔は、どちらも長身の女性となってしまった。

 ヨウコは、アザミに任せた。派手な印象のアザミと気が合うかもしれないと思ったからだ。

 ミスズとサヤカは、イズミの使い魔にした。カオリ、イズミという上品な二人に合うだろう。

 ケイコとのんびりとした性格のランコは、サクラコの使い魔にする。おっとりとしたサクラコなら、あのペースにも合うだろう。

 ミチコと無口なサツキは、無口な娘を持つショウコに任せた。スミレと一緒に面倒を見てもらえばいいだろう。


 レイコの使い魔の系譜は、以下のようになった。


―――――――――――――――――――――――――――――


■レイコ

 ●イリーナ

  ◆アザミ

   ・ヨウコ

  ◆マドカ

 ●カオリ

  ◆イズミ

   ・ミスズ

   ・サヤカ

  ◆タカコ

 ●サユリ

  ◆サクラコ

   ・ケイコ

   ・ランコ

  ◆ユリ

 ●ミナ

  ◆アヤメ

  ◆ユキ

 ●アズサ

  ◆ショウコ

   ・ミチコ

   ・サツキ

  ◆スミレ

 ●ユウコ

 ●スズカ


―――――――――――――――――――――――――――――


「ユーイチさまぁ?」


 スズカが身体を起こした。美乳が揺れる。

 他の使い魔たちもそうだが、寝ているわけではない。

 刻印を刻んだ身体は、睡眠を必要としない。

 僕の周囲に寝ている使い魔たちは、余韻を楽しんでいるか精神的にグロッキーな状態だと思われる。


「んっ……ぬしさまぁ……」

「あっ……あるじどのぉ……。もっとでござるぅ……」

「ご主人さまぁ……」

「ユーイチさまぁ……」

「ユーイチぃ……」


 使い魔たちが次々と目を開けて身体を起こしている。


「そろそろ起きよう、もうすぐ7時だ」


 スズカが僕に抱きついて答える。


「んんっ……わかりましたわぁ……。それにしても、あんなに凄いなんて……。わたくし、参ってしまいました……」

「おっぱい吸われただけで?」

「はい。とても幸福な時間でしたわ……」


 僕は、『ハーレム』の扉を一瞬戻して、自動洗浄機能を作動させた。

 僕たちの身体や洗い場に付着していた水滴や体液が消え去った。


 そして、僕は立ち上がり、湯船へ入った。

 少し移動して腰を下ろす。

 振り返ると使い魔たちが、次々と湯船に入ってきた。


 目を閉じてお湯を堪能する。

 湯船の中を移動する音が聞こえなくなり、周囲に人の気配を感じるので目を開けた。

 使い魔たちが、僕のほうを向いて僕の周囲に立っていた。


「座ったら?」

「「はいっ」」


 ――ザバーッ!


「ユーイチ様」

「ユーイチッ!」


 フェアリーとピクシーが僕の前に飛んできた。

 どうやら、皆が座るのを待っていたようだ。


「ああ、おはよう」

「ふふっ、おはようございます」

「オッハヨーッ!」


 フェアリーとピクシーが僕の肩に掴まった。


「主殿、これからどうするおつもりじゃ?」


 ユウコが今後のプランについて聞いてきた。

 大まかなところは、既に話したので、具体的なことを聞きたいのだろう。


「まず、『組合』から土地を購入する件が一週間後になるので、それに合わせて行動するべきでしょう」

「ふむ、わしがもっと早くなるよう段取りしてやろう」

「いいのですか?」

「構わんよ。『組合』の連中もそこまで忙しいわけではないしな」


春夢亭しゅんむてい』の買収には失敗したので、前倒しで娼館を作れるのは、嬉しい誤算だった。

 別に急ぐ必要もないのだが、いつまでも『エドの街』で過ごすのも問題に感じる。というより、もっとこの世界のいろいろな場所に行ってみたい。


「次に娼婦希望者の件だけど、これはレイコを責任者に任命する」

「ハッ!」

「最終的にレイコの配下の使い魔になるわけだしね」


『トレード』


 レイコに1万ゴールドを渡す。


「このお金は?」

「とりあえずの軍資金だよ。カナコさんが娼婦希望者を連れてきたら、1人につき1000ゴールドを渡してあげて」

「畏まりました」

「娼婦希望者たちは、『密談部屋』へ送ってくれ」

「了解です」

「娼館が完成するまで、ミナは夕方『ユミコの酒場』へ行って娼婦希望者を待つこと」

「分かったわ」

「『ロッジ』は、このままこの路地裏に扉を消した状態で置いておくから、出入りはレイコの『密談部屋』から行うように。『ロッジ』の中に『密談部屋5』の扉を召喚しておくから」

「では、我々は外で行動すればいいのですか?」

「レイコは、ヤマモト家に『春夢亭』の件を照会してくれ」

「分かりました。実家に戻り、使者を送って問い合わせます」

「頼んだ」


 僕は、ユウコを見る。


「ユウコさんとユキさんは、『組合』へ行かれたほうがいいですよね?」

「そうじゃな。儂は昼前くらいでいいが」

「私は、9時前にここを出ますが、よろしいですか? ご主人様?」

「勿論、言ってくれれば、いつでも扉を召喚するよ」

「では、儂も一緒に出ようかのぅ。土地の件もあるしな」

「私もその時に出るとしよう」


 レイコも9時前に出るつもりのようだ。


「あたしは、夕方でいいわよね?」


 ミナが聞いてくる。


「ああ、他の人たちも一緒に行って食事をしてくればいい」

「ユーイチは、行かないの?」

「僕は、今日は、『ロッジ』で娼館の設計を行おうと思う。それに女性冒険者御用達じょせいぼうけんしゃごようたしの店だから、あまり頻繁に出入りするのは気が引けるからね」

「そんなの気にしなくてもいいのに……」

「【エルフの刻印】は、あまりお腹が空かないっていうのもあるんだよね。だから、食べなくても問題ないし」

「そうなんだ」


 料亭『涼香』の女将スズカが話に割り込んできた。


「ユーイチ様? わたくしたちは、8時前には、ここを出てもよろしいでしょうか?」

「ええ、いつでも扉を開けますよ」

「ここに戻ってくるには、どうしたらいいでしょう?」

「レイコに頼めば戻れます。レイコとは、『ユミコの酒場』に夜行けば会えると思うので」

「何時ぐらいまでに行けばよろしいでしょうか?」


 僕は、ミナに聞いてみる。


「昨日みたいに遅くまで居座るのは、店に迷惑だよね?」

「そんなことはないと思うけど、毎日はやめておいたほうがいいかもね」

「カナコさんたちは、何時頃来るかな?」

「昨日は、6時前には来たわよ」

「昨日は、僕を待っていてくれたから、カナコさんたちもあんなに遅くまで居たんだよね?」

「ええ、そうだと思うわ」

「でも、娼婦希望者が何時に来るか分からないからなぁ……」

「あたしだけ、遅くまで残っていようか?」

「いいのか?」

「ええ、娼館が建つまでの間だし、前に『組合』に依頼を出したときも毎日遅くまでカウンターで飲んでたから」

「分かった。じゃあ、『ユミコの酒場』の支払いは、ミナに任せるね」


『トレード』


 1万ゴールドをミナに渡す。


「わっ、こんなに要らないわよ」

「何に要るか分からないから、取っておいて」

「分かったわ」


 僕はスズカに向き直った。


「10時頃までミナが居ますので、それまでに行けば戻れます」

「分かりましたわ」


 ヨウコが小さく手を挙げて発言した。


「あのっ、あたしも外に出たいんですけど、いいですか?」

「勿論、いいですよ」

「友達を誘ってきます」

「強引な勧誘は禁止ね」

「分かりました。ご主人様っ!」


『所持金』


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金 …………… 1032953.59ゴールド


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金を確認してみると、100万ゴールドほどになっている。

 娼館を建てる前に一度、トロールを狩りに行ったほうが良さそうだ。

 新しく使い魔になった者も鍛えることができるので一石二鳥だ。


「ユウコさんは、休みは取れないのですか?」

「儂の仕事は、あまりないからのぅ。『組合』に言えば、一日くらい休めるぞぇ」

「夜は、ずっと空いてるんですか?」

「そうじゃ」

「娼館を作る前に一度、トロール討伐に行こうと思っているのですが」

「なんじゃと!? しかし、儂らがついていっても役にたたぬじゃろう?」

「いえ、後ろで見ていてもらうだけで結構です」

「それが何になるのじゃ?」

「僕たちが戦闘をすると戦わなくても強くなります」

「まさか!? そんなことが……」

「召喚魔法の刻印を通じて僕が得た経験が使い魔たちにも入るようです」

「距離が離れていても効果があるのか試したことはないので、成長するのが確実な近くで見てもらう方法を採ります」

「なるほどのぅ」

「あと、そのうち新しい【魔術刻印】を刻みますが、『組合』では今まで通りの魔法しか売らないでください」

「勿論じゃ。それにどうせ使いこなせる者なぞおらぬじゃろうて」


 確かに僕が作った魔法は、消費MPが高いものが多いので、並の術者では刻印したところで発動しないだろう。


「では、近いうちに夜に城壁を越えて富士のふもとまで行って、トロールを討伐します」

「城壁を越えて街を抜け出すのかぇ? 本来なら見過ごせぬが、あるじのやることに口は出せぬからのぅ」

「そういえば、いつまで西門を閉鎖しておくつもりなんでしょうね」

「うむ。ゾンビの脅威が完全になくなったと確認されないことにはのぅ……」

「娼館の件が一段落ついたら、『ナゴヤの街』やそれより向こうまでゾンビを討伐しに行こうかと思っているのですが」


 思いついたことを言ってみる。


「なるほどのぅ、主殿が討伐にかれるのなら安心じゃのぅ」

「その後、安全が確認されるまでは、冒険者が西方面の街道沿いを調査すればいいのではないかと」

「狩り残しがあると、一般人には脅威じゃからのぅ」

「広域レーダーを使って数百人で空から探索しますので、狩り残しは出ないと思いますけどね」

「なに? 主殿はそんなに使い魔をお持ちなのかぇ?」

「ええ、総勢500人を超えています」

「なんと!? もしかして、全員が主殿のように高レベルなのかぇ?」

「ええ、僕とフェリアは、他の使い魔よりも少しレベルが高いと思いますが、大きくは違わないと思いますよ」


 先日、レイコたちがオークと戦ったときのことを考えても、結局のところトロール約4千体の経験値というのが物凄いのだ。その戦闘を経験しているかいないかでレベルは大きく違う。

 僕とフェリア、それからフェリスやドライアード、ニンフとの差は、トロール約4~8千体の差といってもいいだろう。

 それに、何度も戦っているうちに、レベル差は縮まるのではないかと思う。レベルの低い者は、レベルの低いモンスターを倒してもレベルアップしやすいが、高レベルな者は、低レベルなモンスターを倒してもレベルアップしないだろう。RPGでスライムだけを倒して、どこまでも強くなるのは難しいということだ。そう考えると、僕とフェリアとフェリスやドライアード、ニンフの間には、強さに差はないかもしれない。

 ちなみにスライムは、ゲームによってはそれなりに強い。TRPGなどでは、中級レベルの冒険者に相応しい相手だったりする。


「じゃあ、そろそろ上がって、行動を開始しよう」


 僕は、立ち上がった。


「あんっ」

「わっ」


 僕が立ち上がったので、フェアリーとピクシーが驚いたようだ。

 僕の肩から離れて空中へ飛んだ。


 ザバァーッ!


 使い魔たちも立ち上がる。


 使い魔たちの包囲の薄いところを抜けて洗い場に上がる。


【エアプロテクション】『装備6換装』


 今日は、『ロッジ』に引き籠もるつもりなので、部屋着の『装備6』を装備することにした。

 振り返ると、フェリアとルート・ドライアードが全裸のまま、僕の後ろをついてきている。


「フェリアとルート・ドライアードは、今日は外に出ないからメイド服で過ごして」

「ハッ!」

「御意!」


 二人が白い光に包まれてメイド服姿になった。

 暑苦しい甲冑姿よりも楽でいいだろう。


「フェリア、フェアリーとピクシーを戻して」

「畏まりました」

「ユーイチ様、さようなら」

「またね! ユーイチ!」

「ああ、またね」


 フェアリーとピクシーが白い光に包まれて消え去った。


 僕は、引き戸を開けて廊下に出る。


 そのまま廊下を進み、突き当たりの扉を開けて『ハーレム』から『ロッジ』へ戻った――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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